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引っ越しシーズンに急増する“おとり物件”、見極め方は? いまだアナログ抜けない不動産業界の悪習「鵜呑みにしないで」

 不動産サイトなどで一定数存在する“おとり物件”とは、入居者募集の広告が掲載されているものの、「存在しない物件」「存在するが、取引対象にならない、あるいは取引の意思がない物件」のことを指す。せっかく良い物件を見つけても、それが“おとり”だと、リサーチにかけた時間や不動産への来店などの手間が無駄になり、消費者に不利益を被らせてしまうことから、不動産業界の解決すべき課題の1つとなっている。積極的にその対策に取り組むライフルホームズに、“おとり物件”がなくならない理由や個人でできる見極め方を聞いた。

不動産には掘り出し物はない、「激安」「豪華景品」などの過剰表現には要注意

 “おとり物件”と言われるものには、大きく分けて3つある。(1)実際には存在しない架空の物件、(2)実在しているが、募集が終了していて契約できない物件、(3)実在しているが、実際に取引する意思がない物件だ。一般に“おとり物件”と聞くと、(1)、(3)をイメージしがちだが、現状では(2)が大多数を占めているという。

「いま多くの不動産会社がネットを活用されています。多数の物件を広告として載せられるようになった一方で、自社が掲載している広告の最新情報を管理しきれなくなっている会社さんも多くいらっしゃいます。そういった会社さんが物件情報を更新する際に漏れや遅れが生じてしまい、結果的に“おとり物件”になってしまっているパターンが多い印象です」(LIFULL HOME'S 情報審査グループ長・宮廻優子氏/以下同)
 昨今のようにネット広告が主流になる以前、物件情報は印刷物として提供されていた。その頃から“おとり物件”は存在していたという。

「当時は印刷物にはそれほど正しい情報を載せていなくて、もし問い合わせがあったら『一旦お店に来てください』という営業手法をとっていたこともあったと聞いています。今はそういった意図的な“おとり物件”は少なくなっていて、それよりも、情報更新の漏れや遅れといったヒューマンエラーが圧倒的に多くなっています」

 不動産では、広告の掲載にあたり、定期的にオーナーや管理会社へ物件の空室状況や条件の確認を行う必要がある。しかし、確認にあたっては電話、メールやFAX等アナログな手法を用いている会社もいまだ多く存在し、物件の情報取得をリアルタイムで行うことが困難な状況に置かれているのだという。“おとり物件”が急増する時期は、新生活に向けて物件が大きく動く2〜3月だ。消費者目線で、見極めるポイントはあるのだろうか?
「複数のサイトで情報を見比べて、家賃の適正相場を知っておくなど、ご自身でも学ぶ姿勢をお持ちになると良いと思います。たとえば、相場が10万円なのに6万円の物件があったら、なぜ安いのかという理由を確認しましょう。『不動産に掘り出し物はない』と言われますが、不動産会社が『とっておき』『激安物件』『100万円プレゼント』などと過剰な表現を謳っている際には、不動産会社が紹介したい物件に誘導されている可能性があります。それらを鵜呑みにするのではなく、ご自身の知識を持って担当者とお話することが必要かと思います」

 不動産サイトでは新しく更新された物件の方が募集中の可能性が高いため、情報更新日時にも留意し、新しいものから探して行くのが安全だ。また、住みたい部屋があったら、問合せの段階で「現地」での待ち合わせを希望することも“おとり対策”になる。

法律でも禁じられている“おとり物件”なぜなくならない? 日本特有の“表記の揺れ”問題

 “おとり物件”は、たとえヒューマンエラーであろうと、法律上では禁じられている。最悪の場合、宅建業の免許が取り消しの処分になるケースもあるというが、紙の時代から今も変わらず、根強い業界課題となっている。その解決の鍵となるのが、正しい情報取得の障壁となる“表記のゆれ”問題の解決である。

「『一丁目』と書くべきところを、単に『一』と書いてあったり、それが漢数字の『一』だったり、半角数字の『1』だったり。同じ物件を指していても、表記が揺れていると上手く照合できません。対策システムを構築する上で、これが非常に難しい点ですね。かねてより国交省が主導して行っている不動産ID(不動産それぞれに固有の番号を振る)という仕組みがありますが、それが実現できれば、表記の揺れ問題は一気に解消すると思います」
 ライフルホームズは、“おとり物件”対策として、管理会社が提供する募集終了物件情報を用いた「自動非掲載機能」を、5年前に業界初の試みとしてリリース。その有用性が認められ、昨年末には特許を取得している。

「不動産管理会社さんから募集終了となった情報をいただき、それをキーにして、成約済みの可能性がある物件と同一物件をライフルホームズ上から検出。私たちがその物件を自ら非掲載にして、不動産会社さんに『非掲載にしました』とメールで通知する機能です。これと同じようなシステムを稼働させている媒体がなかったことから、新規性があると認められ、特許取得に至りました」
 また、専属チームによる能動的な調査や、自社開発AIを使った取り組みも行っている。

「募集物件が1件出ると、仲介会社10〜20社が同じ物件を一気に載せますが、例えば、10社が載せていた物件が翌日1社になっていた場合、『その物件は成約済みになっている可能性が非常に高い』と判断します。AIによって違反物件を見つけ出す取り組みも検証中です。膨大な物件情報をAIにひたすら学習させ、まだ波がありますが、最近は約90%の精度まで向上しました」

特許取得機能で月10万件を非掲載に、賛同企業も増加で約90%の検知精度を確立

 サイト全体で約620万件(2024年2月2日時点)の内、手動・自動双方の仕組みにより、月10万件ほどを非掲載にしているという。中には少しでも物件掲載数を多く見せたいサイトも存在するだろうが、ライフルホームズでは、おとり物件を削減することで、サイト上に実際に募集中である物件の占める割合が高い、つまり「物件鮮度が高い」状態をキープすることにこだわっている。

「この取り組みにご賛同いただいている管理会社さんの中には『問い合わせは減ったけど、成約数は増えた』というご意見をいただくこともあり、それはまさに物件の鮮度が高い状態が生み出す効果です。私たちが本来やるべきことは、商談の確保ではなく成約数の確保です。お客様から『成約を生み出しやすいサイト』と認知していただけることが、私たちの目指す方向性だと考えています」

 同社が“おとり物件”の取り組みを行っていることで、「物件メンテナンスの手間が減った」など良い反響も届いているという。
「不動産会社が物件を非掲載にするのを漏らした場合でも、でも、ライフルホームズ側で非掲載システムが稼働しているので安心というお話はよく頂いています。当初、管理会社さんに当システム稼働にご協力をお願いしても、『いくつかの管理会社さんがやってから…』といった様子見の会社さんが多く、なかなか進まなかったこともありました。でも少しずつ増えて、今18社が適応対象となっています。今後も、社会的意義から賛同してくれる管理会社さんは増えてくると思います」

 本機能の適応対象となる管理会社が増えれば、“おとり物件”の検知精度はますます高まっていくだろう。情報の量だけではなく、物件の正確性と鮮度で、今後も各社との情報連携を強化し、“おとり物件ゼロ”を目指していく。


(取材・文=水野幸則)

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