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子どもはオニが好き?嫌い? 大阪弁の絵本『オニのサラリーマン』、異例ヒットの裏に“父親支持”

 『いないいないばあ』、『はらぺこあおむし』、『ぐりとぐら』など、ロングセラー作品が不動の人気を誇っている絵本業界。その中で、2015年に出版された『オニのサラリーマン』がじわじわと人気を伸ばしている。主人公は、地獄に勤める赤鬼オニガワラ・ケン。大阪弁で繰り広げられるユーモラスなストーリーに幅広い世代から反響が寄せられ、’19年にはNHK Eテレでアニメ化された。子どもが怖がる“オニ”を主人公にし、大阪弁を採用した理由と、その反響を出版元に聞いた。

園児も世界観に没入? 大阪弁が“地獄”や“オニ”の負のイメージをユーモラスに転換

 「わし、オニでんねん。すんまへん」という、インパクトある大阪弁から始まる『オニのサラリーマン』。主人公のオニガワラ・ケンは、一男一女の父。毎日愛妻弁当と金棒を片手に、スーツ姿で地獄へ出勤するサラリーマンだ。誕生のきっかけは、作者の富安陽子さんがお正月に見た初夢で、あまりにもよくできた夢に、目覚めて一気に絵本原稿を書き上げたという。

 本作の大きな特徴の一つが、物語を紡ぐ大阪弁のセリフ。富安さんは大阪在住だが、どの作品にも方言が登場するわけではない。なぜ本作では、大阪弁を採用したのだろうか。

「富安さんは、オモシロ・コワイ世界とあり得ない展開を文章にするに当たって、標準語のセリフだと、どうもしっくりこなかったそうです。でも、大阪弁にはこういった展開を笑って許せるようなニュアンスがあり、“地獄”や“オニ”から受けるちょっと怖いイメージを、明るくユーモラスな世界に転換する役割を担ってくれていると思います。そこに大島妙子さんの描く、画面の隅々まで行き届いた、遊び心満載の楽しい絵が合わさって、さらに親しみの持てる世界になったと思います」(福音館書店『オニのサラリーマン』編集担当・西裕子さん/以下同)
 出版前の想定読者は小学校低学年ぐらいからで、編集部では「未就学児には少し難しいのでは」という意見もあった。しかし刊行後、「4歳の娘は何回も読んでって言う」「読み聞かせで小学6年生の子も夢中になっていた」など、幅広い年代から支持を得ることとなった。

 中には「こども園で、関西出身の先生が読んだところ、3歳の男の子が、この本を読んでもらうときは必ずその先生のところに行くようになり、そのうちしっかり絵本の大阪弁をマスターしてしまった」という声も。ストーリー自体のテンポの良さに加え、大阪弁のリズムが上手くハマり、パワフルな絵と相まって、子ども達を“地獄界”に巧みに惹き込んでいるようだ。

「もちろん、ネイティブな関西弁である必要は全くありません。例えば、普段皆さんが使っている各地の言葉に変換して読んでいただくなど、自然体で楽しんでいただければ」

オニはもはや「怖くない」存在? 人気アニメ、若者言葉、絵本ヒット相次ぎ、身近に

 当初は単発の作品として、シリーズ化を想定して出版したわけではなかったそうだが、読者からの反響が大きく、2作目、3作目と続くことに。古くから伝説や『桃太郎』などの昔話に登場し、従来、敵役としてやっつけられることも多かった鬼。しかし近年では、大ヒットアニメ『鬼滅の刃』や、「鬼可愛い」といった若者言葉が浸透するなど、より身近に感じられている側面もあるのかもしれない。

 2019年には、NHKのEテレでアニメ化された。夜遅くの放送だったため視聴年齢は高めだったが、親世代の認知拡大により、結果的に絵本人気のさらなる高まりにも繋がった。

 また、主人公が“サラリーマン”の絵本は異色で、父親からの支持を集めているのも同作品の特徴だ。「自分も読んでいて楽しい」という大人からの声も多く、お父さんが積極的に読み聞かせしている傾向にある作品も珍しいようだ。
 大人が子どもに手渡す絵本は、評価の定まったロングセラーが支持される傾向が強く、福音館書店でも、『ぐりとぐら』『ねないこだれだ』『おおきなかぶ』など、1960年代に刊行された作品が今も売れ続けている。そんな中、『オニのサラリーマン』は多くの親子に楽しまれ、刊行10年足らずで愛されるシリーズに成長した。

 今月には、シリーズ5作目となる『オニのサラリーマン じごくのしんにゅうしゃいん』が発売された。今作では3匹の新オニが登場し、オニの一般常識テストに職場体験など、新オニたちのゆかいな研修の様子が描かれ、これまた人間の世とリンクしたストーリーが展開されていく。
 西さんは、シリーズを通して、絵本の世界の中でのルールやリアリティをないがしろにしないことを心がけながら、1冊1冊本づくりをしてきたという。

「例えば、出張に金棒を持参するのか?という疑問に、『警備の仕事だから、商売道具の金棒は持参した方がいい』とか、『いや、飛行機での移動では空港の手荷物検査で引っかからないか』とか、こういったことをみんなで真面目にディスカッションするわけです。ほかにも、地獄全体の位置関係など、細部に渡って、しっかり世界を構築していくよう努めました。読者の子どもたちが戸惑うことなく、安心してお話の世界に入っていけるよう、そして思う存分楽しめるよう、とても大事なことだと思っています」
 物語の中の“リアリティ”を追求することで、読み手を絵本の世界に引き込んでいく。『オニのサラリーマン』は、子どもに読む側の大人が、主人公のサラリーマンについ感情移入してしまう場面も多く、親子で一緒に楽しめる作品になっている。空想と現実世界の絶妙なバランスが、多くの読者の心を掴んだ一因と言えるだろう。


(取材・文=辻内史佳)

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