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安藤サクラ×永山瑛太、映画『怪物』は「“人間”というタイトルでもよかったんじゃないか」

 フランスで開催された「第76回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門の公式上映後には9分半ものスタンディングオベーションで称えられ、坂元裕二が脚本賞の栄誉に輝き、独立部門「クィア・パルム賞」と合わせて2冠を獲得した是枝裕和監督の映画『怪物』(公開中)。本作で、一人息子の湊を愛するシングルマザー・麦野早織を演じた安藤サクラ、湊の担任・保利道敏を演じた永山瑛太のインタビュー。この映画に、私たちはどんな“怪物”を見るのか。

安藤サクラ、永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

安藤サクラ、永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

“怪物”級の才能が集結

 『万引き家族』(2018年)でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝監督の最新作。脚本は、映画『花束みたいな恋をした』、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などで人気の脚本家・坂元裕二。そして、音楽は、『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、『レヴェナント:蘇えりし者』や『怒り』など国内外を問わず活躍してきた坂本龍一(本作が最後の映画劇伴となった)。

 出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子、二人の少年を演じた黒川想矢と柊木陽太。さらに、高畑充希、角田晃広、中村獅童など。スタッフ、キャストがそろいもそろって“怪物”級の才能の持ち主ばかりだ。

楽しい気持ちと集中力のピークがぴたりと重なる現場

安藤サクラ(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

安藤サクラ(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

――まず、安藤さんに。『万引き家族』(2018年)に続いての是枝監督作品への出演はいかがでしたか?

安藤『万引き家族』から時間が経たないうちにお声がけいただけると思ってなかったので、うれしかったです。監督の現場は、スタッフ・キャストみんなが同じ目線で意見を交わし合って、尊重し合って、プレッシャーを感じることなく、志を持って、作品に関わっていくことを心から楽しめる。そういう環境を作って下さる。それがパワーアップしてたというか、監督の特別なところなんだと改めて思いました。

――永山さんは是枝組は初めてですが、坂元さんが脚本を手がけたドラマ『それでも、生きてゆく』や『最高の離婚』では主演を務め、その印象が強く残っている方も多いと思います。

永山坂元さんの脚本では、世間と折り合いがつかなくて生きづらさを感じている人物を演じることが多く、今回も…というところで、うれしくもありました。是枝監督の作品にキャスティングされた時点で「幸せ者だな」と思いつつも、自分に何が求められているか完全に理解していたわけではないので、撮影初日の夜、監督から「保利先生のキャラクター像が見えました。あとはよろしくお願いします」といった内容のメールをいただいて、ちょっと安心できたことを覚えています。

 撮影中は、当たり前の準備をして、健康に気をつけて、あとは監督の演出を受けながら、肌で感じていくことを大事にして現場に挑みました。雑念みたいなものはなかったですね。サクラとちゃんと目を見てお芝居をするのも初めてだったので、現場のサクラを見ているだけで楽しかったです。カットがかかった途端、急に走り出して、何をするかと思えばストレッチや発声練習をし始めて(笑)。底知れない女優さんだと思います。

永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

安藤(笑)(撮影は)めっちゃ楽しかった! 校長室のシーンもすごく面白くて、段取りの時は腹がちぎれそうになるぐらい笑いころげていました。

永山坂元さんの脚本は、例えば校長室のシーン一つをとっても、悲劇にもとれるし、喜劇にもとれる。保利が急に飴玉舐め出すとか(笑)。あまり言わない方がいいのかもしれないですけど、笑いこらえるのに必死でした。

安藤楽しい気持ちと集中力のピークがぴたりと重なる現場を作ってくれるのが是枝組。監督が「もう1回」「もう1回」と言ってテイクを重ねれば重ねるほどどんどん楽しくなっていく。こういう芝居もありかも、というトライを何度もさせていただける、最高の現場です。

永山僕もテイクを重ねることに対して喜びを感じたのは、今回が初めてかもしれないです。「もう1回」と言われると、俳優は「今の芝居は監督が求めていたものとは違っていたんだな」と受け取ってしまうものですが、是枝監督から「違うパターンも見せてください」と言われると、「もう1回やらせてもらえる」という気持ちになるんです。スタッフの方々も穏やかに対応されていて、嫌な緊張感もなかったですし、監督とスタッフがお互いに信頼し合っていることが伝わってきました。

安藤そう、信頼だと思う。誰かを否定して「もう1回」と言っているわけではないとみんなわかっている。ほんの少しの動きの違いで印象が変わることもあるから、みんな研ぎ澄まされた集中力で「もう1回」を繰り返す。監督との信頼関係がしっかりできているからこそ、新しいものが必ず生まれていくんだと思います。

生きとし生けるものすべてが美しく感じられた

――本作は、「羅生門(※)」形式とも呼ばれる、一つの出来事を立場が違う複数の視点で描いた複数部構成になっています。“怪物”はどこにいるのか、と探そうとしていたり、実際にそこには存在しない“怪物”を見てしまったり、観客も巻き込まれていく面白いストーリーテリング。撮影中、“怪物”の存在を感じたことはありましたか?
※橋本忍脚本・黒澤明監督による映画『羅生門』(1950年)に由来する。

安藤完成した映画を観ても、撮影をしている時も、どこにも“怪物”を感じなかったです。最終的に生きとし生けるものすべてが美しいと感じられる境地にまで持っていかれました。自分が“怪物級の〜”と形容されることもピンとこないです(笑)。でも、きっといい意味で言っていただいていると思うので、そのお気持ちはうれしいです。

永山最初に脚本を読んだ時は、いつ、どんな“怪物”が出てくるのだろうか、と探すように読み始めました。『怪物』というタイトルは素晴らしいと思いますが、同時に“人間”というタイトルでもよかったんじゃないか、そんなことを考えました。人間とは、実に多面的な存在だなって。観ていただく方一人ひとりに正解がある映画だと思います。

安藤サクラ、永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

安藤サクラ、永山瑛太(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

映画『怪物』2023年6月2日公開

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたち。それは、よくある子ども同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子どもたちは忽然と姿を消した――。

出演:
安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 高畑充希 角田晃広 中村獅童 / 田中裕子
監督・編集:是枝裕和(『万引き家族』)
脚本:坂元裕二(『花束みたいな恋をした』)
音楽:坂本龍一(『レヴェナント:蘇えりし者』)
企画・プロデュース:川村元気 山田兼司
製作:東宝、フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.、分福
配給:東宝 ギャガ 
(C)2023「怪物」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
公式twitter:@KaibutsuMovie
公式instagram:@kaibutsumovie

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