デイヴ・フィローニ×ジョン・ファヴロー＝ジョージ・ルーカス

――『マンダロリアン』がファンに支持されているのは、何が良かったと思いますか？

サッシャ『マンダロリアン』の製作総指揮をデイヴ・フィローニとジョン・ファヴローが務めたことが大成功だと思っています。私はジョージ・ルーカスの代わりになる人はいないと思っていたのですが、ジョン・ファヴローとデイヴ・フィローニを掛け合わせると、ジョージ・ルーカスになるんだ、ということに気づきました。『マンダロリアン』の裏側に迫るドキュメンタリーシリーズ『ディズニー・ギャラリー／スター・ウォーズ：マンダロリアン』を観ると、それがよくわかると思います。

　デイヴ・フィローニは、『クローン・ウォーズ』などのアニメ作品を手がけてきて、「スター・ウォーズ」オタクをもうならせるほどのオタクなんです。たぶん師匠のジョージ・ルーカスより「スター・ウォーズ」のことを知っていると思います。

　ジョン・ファヴローは、もちろんジョージ・ルーカスと「スター・ウォーズ」のことが大好きだけど、オタクではないんですよね。彼は、『ライオン・キング』（2019年）や『ジャングル・ブック』（16年）の監督を務めていて、その時々の最新テクノロジーを推進するという点で、ジョージ・ルーカスと同じ信念を持ってる人だと思うんです。ジョージ・ルーカスは、「スター・ウォーズ」で映画表現に革命を起こした人。それをやらなければ映画を作る意味はないと思ってる人。彼と同じ信念を持ってるジョン・ファヴローと、「スター・ウォーズ」をジョージ・ルーカスより知るデイヴ・フィローニが組むと、ジョージ・ルーカスになるんだと思います。

よしひろ私もほぼ同じ意見です。ジョン・ファヴローに関してはテクノロジー面もそうですが、ストーリーテリングが異様にうまい人でもあると思うんですよね。『アイアンマン』（08年）もだし、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』（14年）みたいなドラマチックなものも撮れるし、それが「スター・ウォーズ」の世界でどう生かされるのかなと思ったら、やっぱり、物語の構築がめちゃくちゃうまい！　それを『マンダロリアン』で証明してくれたおかげで、彼の仕事の幅もすごく広がっているようです。

サッシャあと、3人に共通してるところが、「日本好き」というところだと思います。『ライオン・キング』のプロモーションでジョン・ファヴローが来日した時、インタビューさせていただいたのですが、「今回、日本のラーメンを食べさせたくて、娘を連れて来たんだ」とおっしゃっていました。ジョージ・ルーカスが黒澤明の映画が好きだから「日本が好き」、といった表面的な「好き」ではないと感じたんですよね。彼はアメリカ人ですが、日本人に近いマインドを持っていると思いました。派手じゃなくて、何かちょっと…

よしひろ奥ゆかしい。

サッシャそうそう！　それはデイヴ・フィローニにも言えることだと思うんです。オタク気質なところも含めて、アメリカ人の中では日本人寄りな人。そこもジョージ・ルーカスと一致しているのかな？

よしひろジョージ・ルーカスは、謙虚にもの作りをすることにかけてはハリウッドで一番の人だと思います。似ているところがあったからこそ引き継げたんじゃないかな。

サッシャ（前出のドキュメンタリーシリーズによると）『マンダロリアン』のシーズン1は、映画に比べてはるかにバジェット（予算）が少なかったんです。限られた予算とスケジュールでどう作るか、というところから、背景をLEDスクリーンに映し出して撮影する「LEDボリューム」を生み出されました。それって「スター・ウォーズ」そのものですよね。

よしひろ1作目の時はCGも発展途上の時代で、予算も少なかったからミニチュアや着ぐるみを駆使して作ったんですよね。

サッシャジョージ・ルーカスが自己資金で作っていたりしたので、限られた予算の中で映像表現の進化に挑んでいたのが「スター・ウォーズ」でした。『マンダロリアン』は原点に戻ったとも言えますね。

よしひろ本当にその通りで、LEDボリュームの技術は、いまや世界中で標準化してますからね。最初の『スター・ウォーズ』でジョージ・ルーカスがやったことと同じようなことが起きた。そういうサイドストーリーも『マンダロリアン』に力を与えているんじゃないかと思います。

『マンダロリアン』シーズン3
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