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「100円商品は守る」続く値上げラッシュにダイソーが出した答えとは? 50年間“制約” の中で培ったノウハウ

 値上げラッシュが続く2022年も折り返しに入ったが、この夏以降はさらに多くの企業が「価格の見直しをする」と回答している(帝国データバンク調べ)。家計の味方、100円ショップでも「100円以上の商品」を見かける機会が増えた。原材料やエネルギー、輸送費などの高騰に加え、24年ぶりの円安といった要因を鑑みると、やはり「100円の縛り」は限界に来ているのだろうか。創業50周年を迎えるDAISO(以下、ダイソー)に話を聞いた。

円安、原材料、原油価格高騰…続く値上げラッシュでダイソーも“脱100円”加速?

 100円ショップ業界大手の大創産業が、高級ブランドが立ち並ぶ商業地・銀座にオープンしたグローバル旗艦店が盛況だ。主要ブランドの「DAISO」「Standard Products」「THREEPPY」がワンフロアに集う幅広い品揃えで、週末はカップルや家族連れ、平日は銀座で働く人たちが昼休みや仕事帰りに買い物をする姿が多く見られる。
「近隣に日用品を買えるお店が少なかったため、便利になったと喜んでくださる方は多いですね」(大創産業 広報課係長・岩橋理恵さん)

 “100円ショップ”としておなじみのダイソーだが、100円以上の商品も扱っている。2つの新ブランド「Standard Products」「THREEPPY」の価格帯は300円が中心だ。
 2022年は「値上げの年」と言われるが、原材料や原油価格、輸送費などの高騰や円安の進行は100円ショップなど廉価商品を扱う業態には特に影響が大きいはず。ダイソーもこの事態を見越して、“脱100円”の流れを加速させているのだろうか?

「実は、ダイソーが100円以上の商品を扱うようになったのは20年前からなので、今に始まったことではないんです。今は24年ぶりの円安更新と言われていますが、その時もダイソーは100円を中心とした価格を維持していました。値段の制約があったからこそ、様々な企業努力を重ね、危機を乗り越えてこられたのかもしれません。現在では、取扱商品を広げたことで、一層多様なお客様のニーズに対応できるようになりました。50年間蓄積してきたノウハウを生かしながら、私たちは社会の生活インフラとなることを目指しているので、これからも“100円商品”は守り続けます」(大創産業 広報課課長・後藤晃一さん)

幅広いニーズ、品質にこだわり50年間“価格を維持”するノウハウとは?

 50年間蓄積してきたノウハウとは何か? それは、商品開発に加えスケールメリットを生かした生産のほか、物流における積載効率の向上などがあげられるという。

  現在、国内4042店舗、海外では25の国・地域で2296店舗(2022年2月現在/全ブランド)を展開。価格を維持する上で、「日本発グローバル小売店」としてのスケールメリットは大きい。積極的に海外展開を進めてきたことも、昨今の円安の煽りを受けづらかった要因だろう。

 そして、今とくに問題になっている原材料や輸送費の高騰には、さまざま企業努力がなされている。

「輸送費を抑えるために、パッケージデザインの簡素化はもちろん、船で運搬する際の積載効率を向上させるため、緩衝材一つにも工夫をしています。それによってより多くの商品を運ぶことができ、輸送費を抑えることができる。結果的に、販売価格も維持できています」(後藤さん)
 一方で、100円という制約の中で“価格以上の品質”にこだわった自社開発をしてきたノウハウは、100円以上の商品開発にも生かされているという。そもそも同社は20年前から「100均」ではなく「100円を中心とするバラエティショップ」として商品展開をしてきた。その約90%の7万6000点が自社開発のオリジナル商品だ。

「過去には8000円のホワイトボードや、5000円のビリヤード台なども扱ってきました。現在の最高額の商品は1000円です。1200円で販売した日本人形は、主に海外のお客さまに好評でした。100円均一という括りを外したことで、より幅広いニーズにお応えできるように商品開発を進めています」(後藤さん)

 取扱商品の7割が300円の「Standard Products」では、新潟県燕市のカトラリーや広島の熊野筆メイクブラシ、岐阜県関市の包丁といった日本の匠の技が光る伝統工芸品も扱う。
「品質の高さで海外からも評価の高い商品です。一般には高額とされるこれらの商品ですが、職人技と弊社の開発ノウハウをコラボさせることで『ダイソーらしい価格』としてご提供できました」(後藤さん)

時代と消費者のニーズに合わせて…身近な企業だからこその強み

 日本人の暮らしに根ざし、なくてはならない存在となった100円ショップ。それだけに、社会の趨勢、消費者の嗜好や考えの変化にも敏感だ。たとえば、昨今多くの人にもおなじみとなったSDGs、環境への配慮。廉価な商品の場合、どうしても大量生産・大量消費でエコには程遠いようにも感じられるが、それは違うという。

「環境に配慮した商品の展開にも力を入れております。大量生産する商品だからこそ、小さなエコが大きなインパクトに繋がる側面もあります。最近は環境に配慮した商品を選びたいというお客さまも増えています。バラエティに富んだ商品をお届けすることで、環境にも寄与したいですね」(岩橋さん)

 一方で、「生活インフラ」としての自負から自然災害への対応も素早い。

「地震や水害などの被災地では、お茶碗がすべて割れてしまった、着替えの肌着がないなど生活のお困りごとがたくさん起きます。とはいえ、現地では店舗スタッフも被災者ですからお店の再開も難しい。そこで全国ネットワークを活かし、被災していない地域から、社員が駆けつけ早期開店できるように努力しています」(後藤さん)

 値上がりが続く世の中でも廉価で買い物をしたい、環境に配慮した商品を選びたい、災害時に必要なものをすぐに手に入れたい。これらはすべて、消費者のニーズだ。

「多くが自社開発のため、ニーズを感じてから商品として展開までのスピードが速い。そして、大量生産だからこそ少しの変化の影響が大きい。消費者に身近な企業だからこそ、使いやすい商品の提供で社会に役立っていきたいと思います」(後藤さん)

 ニーズの多様化で、日用品を超えて暮らしを彩る「Standard Products」や「THREEPPY」が脚光を浴びることも増えた。

「ブランド展開によってお客さまの裾野は広がりました。生活ニーズへの対応と価格維持を両立させることで、より多くのお客さまのお声に答えていきたいと思います」(後藤さん)

 多くの企業で値上げラッシュが止まらない中、それと逆行するように創業50周年記念として「日用品増量キャンペーン」も展開されている。日々の暮らしに欠かせない日用品の増量は、家計が圧迫される昨今の大きな助けになるはずだ。これからも生活者に寄り添う「生活インフラ」として、感動価格・感動品質に期待したい。

(取材・文/児玉澄子)

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