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コンビニPBが加速度を増す理由、ニーズは“利便性”から“高品質”へ「一番近いだけではもう選ばれない」

 各社コンビニによるプライベートブランド(PB)への注力が、年々加速度を増している。一般的な周知においては、ファミリーマートによるPB総菜「お母さん食堂」の大ヒットがその流れに拍車をかけた。特にこの頃、同社ではオリジナルベーカリーブランドに力を入れており、パン分野におけるPB売上比率は95%に及ぶ。昨今、コンビニ各社のPB競争が激化する中、ファミマが“パン”に勝機を賭ける理由を聞いた。

“横並びの品添え”からの脱却… PB誕生から35年、消費者の店の選び方にも変化

 同社のPBが初登場したのは、1987年。「ファミリーマート・ブランド」として、牛乳、食パン、豆腐、缶コーヒー、トイレットペーパーなどからスタートし、現在は終了しているブランドも含め、徐々にラインナップを拡大。2012年には、惣菜や冷凍食品、ちょっとリッチな菓子なども取り揃えた「ファミリーマートコレクション」が誕生。2013年「ファミマカフェ」、2017年「ファミマベーカリー」、2017年「お母さん食堂」(2021年に「ファミリーマート・ブランド」と共に「ファミマル」に統合)といった歴史をたどっている。

 他にも、スイーツブランド「ファミマスイーツ」や衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」も存在。現在の全体におけるPB売上比率30%程度だが、同社担当者は「NB(市販メーカーブランド)でも良い商品が発売されれば取り上げさせていただきますし、全商品PBで揃えたいとは考えておりません。ですが、重要度という意味ではPBの価値は年々増しているのではないかと考えます」と話す。

「以前は『コンビニに行こう』と言う感覚で一番近い店に足を運んでいたお客様も、最近は目的や用途によって、コンビニチェーンを使い分けていると思うんです。『あれを買いにセブン−イレブンに行こう』とか、『これはローソンが美味しい』とか。NBの素晴らしい商品はたくさんありますが、それだけではどのコンビニも同じ品揃えになってしまう。差別化が激化してきた中で、いまやPB商品は欠かせないものとなり、自社の店に来ていただきたいという目的から、各社、そこでは絶対に負けたくないという想いがあるはずです」(ファミリーマート商品本部・鈴木崇義さん/以下同)

コンビニPBが売れればNBシェアがひっ迫… 協力するメーカーの利点とは

 そもそもコンビニは日常使いの店だ。専門店のような“晴れの日の商品”を買う場所ではなく、いわば贅沢をするために訪れる場ではない。そんな中、ファミマがいち早く目をつけたのがパン。現在のPB売上比率は95%だが、オリジナルパンを開発し始めた1995年当時はほとんどNBであり、当初は「コンビニのオリジナルなんてやらない」という製パンメーカーも多かった。NBのロングセラー商品も多かった中、コンビニオリジナルのPBの売上は着実に伸びていった。そうなると、否定的だったメーカーも「一緒に開発するメリットはあるのではないか」と考えが変わってきた。鈴木さんは「売れる、というのは業界そのものを変えるきっかけになるので、やはり大事なんだと思い知らされた次第です」と振り返る。

 PBの売上が伸びれば、それだけNBのシェアがひっ迫されかねない。それでもメーカーがコンビニと組むことによって得られる最大のメリットは、コンビニが物を売る“大規模マーケット”であることだ。つまり、購買者に最も近く、購買者の反応を最も身近に感じられるという点。次に“門外漢”だということ。メーカーの職人が追求して得たノウハウも大切だが、ある意味そこは閉ざされた世界になってしまう。コンビニという場所はパンに限らず多くの商品を販売しているわけであり、お客様のことだけを考え、ある意味製造ラインの都合等には疎い。ここにコンビニならではの市場調査、ニーズ分析が加わることでイノベーションが起こり、“殻が破ける”。その経験は、その後のメーカーの製法にも刺激を与える。

高級志向が落ち着き、高まるPB需要 止まらぬ物価高騰で求められる“日常食”の進化

 また昨今では物価の高騰により、様々な商品の値上がりが止まらない。コンビニで一般的なおにぎりにしても、すでにパンの値段より高くなっているものは多い。そんな中でも、パンに関してはそれほど大きく値段が変化していないという特徴がある。

「この4月から小麦が値上がりするので簡単には言えませんが、そもそもお客様自体、高級食パン専門店のように、もうちょっと出してでも高いパンを“コンビニで”買いたいとはならないのが実情でしょう。専門店では400円のパンが売れても、やはりコンビニでは難しい。ですが最近は、パンの高級志向も落ち着いてきた感があります。そんな中で、コンビニのパンという“日常食”でしっかりトレンドを掴み、バターの風味がもうちょっと強いほうが喜んでいただけるんじゃないかなど、日常のパンに一段上の美味しさを求める流れが今後来るのではないかと踏んでいます」
 今月22日には、昨年リニューアルし4,300万食を売り上げた定番商品・カレーパンとメロンパンを再リニューアルし、これまでラインナップになかったクリームパンも新開発した。開発チームがクリームパン市場を徹底的にリサーチし、素材からとことんこだわった『ファミマ・ザ・クリームパン』は、昔ながらのグローブ型で、“ふんわり×しっとり”ブリオッシュ生地と“コク×なめらか”クリームの絶妙な塩梅を極めた。

 また、先にクリームがなくなり口の中にパンだけ残るのを避けるため、ブリオッシュ生地の水分量は多めに。カスタードクリームも、卵黄やミルクの配合を多くすることでコク深く、パンとクリームの双方合わせて、なめらかなくちどけを目指したのだという。同商品は、すでに市場にありふれた定番メニューながら、発売8日で累計販売数は220万個突破。売切れ店舗が続出するなど、SNSでも「絶品」「コンビニの菓子パンもこのレベルまで来たか」「何日も通ってるのにずっと売切れ」などと、早速話題を呼んでいる。

「テレビで紹介された話題のパン屋さんでも、都内に一軒では通うのは難しい。そんな中、コンビニという日常的な場所で、日常食のベーカリー分野で固定ファンをつけるというのは、他店との差別化につながると思うんです。時折、NBとのコラボで期間限定商品も出していますが、販売が終わるとお客様がストップしてしまう。リピーターをつけるためにも、定番&日常がいかに重要か、深く考え追求したわけです」

「パンといえば、ファミマ」となるか? “PB同士のタッグ”で更なる差別化へ

 パン、スイーツ、ホットスナックなどと、いまやファミリーマート1つにしてもPBの展開は多岐に渡る。これまで各ブランドが個々に成長してきたが、3月の社内組織改編により、同じ部署でタッグを組んでいくこととなった。

「昨年には、ファミチキを挟むだけで手軽に“ファミチキバーガー”が作れる『ファミチキバンズ』を発売し、約1年で2,100万食を突破しました。今後はこういったPBブランド同士のコラボ、またその相乗効果で独自性、差別化をさらに図っていきたい」と鈴木さんは語る。

 かつては“安かろう、悪かろう”といった認知があったPBの品質向上によって、「どこも同じ」ではなくなったコンビニ業界。どのコンビニがどんなPB商品でヒットを出すか、流行を作っていくのか。そしてそれがコンビニのみならず、コンビニのニーズ情報を得て、メーカー自体の活性化にもつながっていく未来に期待したい。


(文/衣輪晋一)

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