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設立から変わらぬ理念で60年余、『ベルマーク』の今 PTA主体から生徒主体…運用法に変化も

 学生の頃、多くの人が経験しているだろう『ベルマーク』収集。だが、学校に集められた後、それがどのような仕組みで何に使われたか、正確に説明できる人はほぼいないだろう。「すべての子どもに等しく、豊かな環境の中で教育を受けさせたい」という思いから活動がスタートして今年で62年。「仕分けが面倒」などの声が上がりながらも、近年、その活用法が変化しているという『ベルマーク』について、その理念と現状、功績と課題に迫っていく。

学校の備品を購入することが、へき地や被災校などを支援することに

『ベルマーク』の仕組みを説明できるか、といわれれば、ほとんどの人が「集めると、学校の備品がもらえる」と回答するのではないだろうか? その通り、食品や文房具など、48社(スタート時は38社)の「協賛会社」の2000種類以上にも及ぶ商品パッケージに付いている『ベルマーク』を集め、学校のPTAらが中心となって収集し、仕分け・整理。ベルマーク教育助成財団(以下/ベルマーク財団)へ送ると、マーク1点が1円で換算され、協賛会社からその分のお金を、学校ごとの「ベルマーク口座」に預金。貯まった金額に応じて、学校に必要な備品などを「協力会社」から購入できるというもの。1960年10月よりスタートした「ベルマーク運動」の基本的な仕組みは、60年以上経過した今も変わっていない。ベルマーク教育助成財団広報部長の斎藤健一氏によると、この運動にはもう一つ、大きな意義があるという。

「運動が始まった当初は、今ほど学校設備が整っていませんから、それらを少しでも助けるという意味もありました。それに加えて、『すべての子どもに等しく、豊かな環境の中で教育を受けさせたい』という願いを実現するための大きな仕組みでもあります」(斎藤氏)

 運動に登録参加している学校がベルマーク預金で商品を購入すると、その金額の1割が自動的にベルマーク財団に寄付。それらがへき地の学校や特別支援学校、災害で被災した学校、発展途上国の子どもたちを助けるNPOなどへの支援として活用されるのだ。

 例えば、2011年の東日本大震災直後には、福島、岩手、宮城、茨城の被災校にノートや鉛筆など計800万円相当の緊急支援を実施。被害の大きかった東北3県への支援は現在も継続中だ。直近では、熊本豪雨の被災校への援助をはじめ、へき地学校や養護学校へ希望教材や図書を贈呈、盲学校へは卓上型拡大読書器、聾学校へは短焦点プロジェクター、病院内学級へタブレット等贈呈のほか、途上国の子どもたちへの援助も継続。これまでに支援した額は累計で50億円を超える。
『ベルマーク』がなぜベルの形をしているかというと、「国内外のお友達に“愛の鐘”を鳴り響かせよう」という助け合いの気持ちを示しているから。意外と知られていないが、その理念は60年以上変わっておらず、自分たちの学校のために『ベルマーク』を集めることで、自動的に、厳しい教育環境にある子どもたちを支援することにつながっているのだ。

「仕分けが面倒」は課題も、PTAに頼らず生徒自身が運用する学校も増加

 この運動に登録参加している学校は年々ゆるやかに減少し、現在およそ2万6000校。少子化による廃校・合併が減少の一番の理由だが、中には、PTAの意見によって廃止する学校も出てきているのも事実。

 その大きな要因になっているのが、仕分けの面倒さ。集めるだけでなく、会社ごとに仕分けして、点数を集計することが必要なのだが、その作業についてネット上に「仕分けが面倒くさい」「仕分けのために仕事を休んで参加した」という保護者の声があがるなど、共働きが増える中、かかる手間への不満が出ているのがその理由だ。「デジタル化しろ」といった声も上がるが、財団サイドもそういった声はもちろん届いているといい、現在重要課題として取り組んでいるという。

「集計の手間が省け、なるべく皆さまの負担を軽減できるような、より良い形になることが一番です。それに向けて、まだまだ克服しなければならない課題がたくさんあるのが実情。協賛会社の商品は実に多岐に及んでおり、『ベルマーク』を付けていただいているパッケージは紙だけでなく、ビニールなど素材も多岐にわたっており、またそれらが折れ曲がったりすると、正確に読み取ることが難しい。マークごとにサイズや、フォントなども異なっていたりもします。これらを解消できるようなデジタル化の実験も、現在さまざまな人たちのお力を借りて行っているというのが現状です」(斎藤氏)
 その一方で、これまで参加していなかった学校が新規で登録をしたり、一度は参加登録をやめたものの、復活する学校も存在。さらにPTAではなく、生徒会などが中心となり、生徒自らが自主的に収集から集計に至るまで実行し、SDGsやボランティアへの意識の高まりから、運動を活発化させている学校も増えてきているという。

「生徒が行っている学校の中には、集めた『ベルマーク』で車椅子を買って、近所の高齢者施設に寄付した例、近所の保育園に砂場で使うスコップやバケツなどがセットになった『お砂場セット』をプレゼントした例もあります。先にお話ししたように、活動当初は学校をよりよくするためにPTAを中心として保護者が生徒を思って行ってきました。ところが近年は、ベルマークをボランティアとしてとらえ、生徒が中心となって、その地域の社会貢献のための学びの場と考える学校も増えている。時代とともに変化を感じています」(斎藤氏)

購入品も希望に応え多様化…豪雪地の学校から除雪機の希望も

 先述のような現状の一方で、「子どもが学校を卒業してから、ベルマーク収集を止めた」や、「ベルマークを集めてもどこに持って行っていいのかわからない」という人もいることだろう。『ベルマーク』を個人で商品に変えてもらうことはできないが、近所や地元の学校に寄付したり、ある程度まとめて直接ベルマーク財団に送ることが可能。財団に寄贈されたものは、ベルマーク運動に参加しているへき地の学校や特別支援学校、災害被災校などへの支援として活用。また、自分の母校や孫たちの通う学校、被災を受けた学校やハンディに負けずに頑張っているところに寄贈すれば、その学校の預金となり、備品購入の助けとなる。

「東日本大震災の際は、被災した学校を応援しようとたくさんの寄贈がありました。また、コロナ禍の現在も困っている人を助けたいという意識の高まりがあってか、財団に送られてくる『寄贈マーク』が増え、昨年はひと月に500件以上届いたこともありました」(斎藤氏)

 ちなみに、学校が購入する備品のなかで、今も昔も変わらず人気なのは、ボールなどの運動用具。電化製品、記念品として時計なども人気も高いという。一方、時代の変化を感じるものもあり、近年はウォータークーラーなどの暑さ・熱中症対策品や、緊急時の食料や水など災害用備品も人気だという。購入できる商品は、冊子になっているが、掲載されていなくても、協力会社が扱っている商品は購入可能。こんな微笑ましいエピソードもある。

「書道大会で金賞を受賞した生徒に校歌の歌詞を書いてもらって飾りたいので、大きな額縁が欲しいというものや、豪雪地の学校から除雪機が欲しいという相談もありました。それらは、協力会社に相談したところ、調達してきてくれまして、希望通り、購入することができました。臨機応変に対応できるので、欲しい商品があったら一度ご相談ください」(斎藤氏)

 協賛会社、協力会社、学校、保護者、子どもたちと財団が一緒になって実現している「ベルマーク運動」。60年以上の歴史のなかで、課題を抱えながらも、今も多くの人々を支えている。役割が徐々に変化し、今は子どもたちにとって、社会の仕組みや助け合う心など、学ぶべきことを多数内包しているこの運動が、より良い形でさらに大きく広がっていくことを期待したい。

取材・文/河上いつ子
ベルマーク教育助成財団HP
https://www.bellmark.or.jp/(外部サイト)

ベルマーク教育助成財団ツイッター
@bellmarkcafe(外部サイト)

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