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過去2度にわたる“減塩改革”により発売当初から4割減 高級品から“ご飯のお供”へ昇華した『のりたま』の軌跡

 ふりかけをはじめ、お茶漬けやレトルトカレーなど加工食品の製造、販売を行なっている丸美屋食品。看板商品である『のりたま』の発売は1960年だが、それ以前にもふりかけ商品を発売していたという。そこから95年がたった今でも、ふりかけを軸に商品を展開している。そんな同社のマーケティング部 ふりかけチーム・井原幸太郎さんに、『のりたま』誕生秘話や開発エピソード、“ふりかけにかける熱い思い”について話を聞いた。

戦時中は兵士の栄養補給のためにも活用「帰国後、それぞれの故郷に戻ってふりかけを広めた」

 “ご飯のお供”の代表的存在のふりかけだが、その始まりは大正時代にさかのぼる。当時の日本はカルシウム不足が深刻な問題となっており、熊本の薬剤師がカルシウムを補うことを目的に、煮干しを骨ごと砕いて醤油で味付けした『御飯の友』を開発。これが現在のふりかけの元祖だと言われている。

 そして1927年、丸美屋食品の前身である丸美屋食料品研究所がふりかけ『是はうまい』を発売。これは白身魚のイシモチや醤油、昆布、ごまをベースにした商品で、米一升(1.5kg)が30銭の時代に1瓶(45g)35銭もする高級品だったという。
「戦時中は、戦地にいる兵士の栄養補給のために『是はうまい』を含めたふりかけが慰問袋に入れられ、送られていました。この兵士たちが帰国後、それぞれの故郷に戻ってふりかけを広めたと言われています」(井原さん/以下同)

 高級品だった『是はうまい』に対して、「もっと多くの人たちが食べられる大衆的なふりかけを作りたい」と考えた同社は、新たなたんぱく源として“たまご”に着目する。当時のふりかけは、魚を主原料としたものが中心で、たまごを原料にしたものはなかった。そのため、たまごを顆粒にする造粒方法を一から開発したという。
「特に難しかったのは、“おいしい”と感じる味と食感のバランスをとること。たまごの風味を出そうとして、たまごを増量すると食感が固くなり、サクサク食感を重視すると、たまごのおいしさが実現できない、という問題点があり、双方がベストになるバランスを見つけるのに苦労しました」

 試行錯誤の末に完成した『のりたま』は、1960年に発売。以来、現在まで長く愛されるロングセラー商品となっているが、丸美屋ではその時代の味覚に合わせて、消費者に美味しく感じてもらえるよう、常に改良を続けている。
「たとえば、発売当時は肉体労働者が多かったために塩分が求められていましたが、その後、世の中がだんだんと薄味嗜好に変わってきました。そうした味覚の変化に合わせて『のりたま』も大きく2回減塩を行ない、現在は発売時から4割以上も塩分を減らしています」
 変化しているのは塩分だけではない。同商品の要ともいえるたまごの部分にも改良が加えられているという。発売時は1種類だった「たまごパーツ」は、現在までに3種類に増え、たまごの風味を感じてもらえるよう進化をしているという。

 発売当時から入っているのは、サクサクという食感の「たまご顆粒」。1996年頃より追加されたのは、「ふっくらたまごそぼろ」と呼ばれ、『のりたま』のなかで一番大きいパーツになっており、ふっくらとしているのが特長だ。そして、2020年の同商品60周年の際に追加されたのが「ホロっとたまご顆粒」。名前通り、口に入れるとホロっと崩れていく食感が味わえる。

 これらに海苔、ごま、さば削り節、抹茶塩といった素材を絶妙にブレンドしたものが現在の『のりたま』だ。開発チームのこだわりが詰まった、まさに“ふりかけ界のスタンダード”である。

今では定番の“キャラクターコラボ”の先駆け 一気に子ども人気を獲得

 発売当初から好調な売り上げを維持していた『のりたま』だが、「もっと多くの人に食べてもらいたい」との思いから発売2年後の1962年にテレビCMを実施。さらに1964年には、子どもに人気のアニメ『エイトマン』のシールを封入したことで、売上が14倍にも跳ね上がったという。さらに『のりたま』に続く定番商品の『すきやき』『チズハム』にも同アニメのシールを封入し販売。これは、キャラクターコラボ商品の先駆けとなったともいえる(同年代には、明治製菓が『鉄腕アトム』シール付きの『マーブルチョコレート』を発売している)。

 そして1968年、かつて日本の食卓に必ずと言っていいほど置いてあったであろう『3色パック』が登場する。それまで1つの味わいしか楽しめなかったのが、1商品で3つの楽しみが増えた画期的なアイデアだった。しかも、これを提案したのは、小学生の男の子だったというから驚きだ。
「当時、一般の人が発明品を発表するテレビ番組があり、そこで円筒の中に仕切りを入れて中が3つに分けられる容器が発表されました。弊社がその独創的なアイデアを採用し、3つの味のふりかけを楽しめる『3色パック』が誕生しました。当時から形は変わりましたが、この商品は現在も発売していてロングセラー商品となっています」

 キャラクターシール入りや『3色パック』の登場により、大人が食べるものとされていたふりかけが子どもにとっての“ご飯のお供”として定着し、より幅広い世代に認知拡大していった。

 1998年には『ソフトふりかけ』を発売する。それまでふりかけは、粉末状や海苔など乾燥させた食材で作られていたが、老舗の佃煮のように、ふりかけを「素材感が強く」「しっとりやわらか食感」で「ご飯になじみやすい」ものに進化させたいと開発することとなった。その後も「家族の団らんや楽しい食卓づくりのお手伝いができること」をモットーに、『のっけるふりかけ』『タレふりかけ』など、従来のふりかけのイメージを覆すようなユニークなふりかけを発売してきた。

 これまで丸美屋が世に送り出したふりかけは、少なくとも500種類以上あるという。2022年現在も100種類以上を発売している。『のりたま』は不動ではあるが、『混ぜ込みわかめ』シリーズや『すきやき』など、人気商品も多い。
「通常の乾燥したふりかけの他に、混ぜごはん用、しっとりソフトタイプ、しっとりソフトより水分のある瓶入りウェットタイプなどもあります。食卓でのご飯がより美味しく楽しい時間になるように、今後も市場にない新しいふりかけをお届けしていきたいと考えています」

時代の変化とともに需要も拡大 「ふりかけは食卓に『楽しさ』と『笑顔』を届けるツール」

 『是はうまい』が発売されて95年。初めは高級品だったふりかけも、長い年月をかけ食卓のスタンダードになり、多くのユーザーから愛されてきた。時代の変遷によって「(ユーザーの)意識の変化があった」と井原さんも話す。
「昔はふりかけを食べるのは子どもがメインで、“子どもの食べ物”という意識が強かったと思います。それが現在では、子どもの頃ふりかけを食べた世代がシニアとなり、子・親・祖父母の3世代の食べ物となっています。実際にお客様から『親子3代でふりかけを楽しんでいます』というお声もいただいています」

 また、働く女性の増加により、簡単におにぎりが作ることができる混ぜごはんの素の需要が拡大するなど、環境による変化も感じられるように。昨今は、新型コロナウィルスの影響により家庭で食事を摂る機会が増えていることからも、大人向けふりかけのニーズも見られるという。

 いまや老若男女から支持され続けているふりかけだが、その魅力はどこにあるのだろうか?
「ふりかけは、食卓に“彩り”や”美味しさ”だけでなく、“楽しさ”や“笑顔”もお届けする力を持っていると思います。新しいふりかけを食べる時にはワクワクしますし、食が細いお子さんがふりかけをかけると笑顔でご飯を食べてくれるようになります。また、冷めたお弁当やおにぎりも美味しく食べることができます」

 ふりかけは「そのおいしさと利便性、食の楽しさをすべて一度に叶えるものとして、食卓に欠かせないものになっている」と話す井原さん。これからも多くのユーザーからの期待に応えられるよう「新商品の提供と日々の改良を続けていきたい」と意欲を新たにしている。
「今後も『のりたま』をはじめ、多くの人に愛されているふりかけを10年後、20年後、さらにその先までお届けし続けられるように、さらなる美味しさの追求や新しいご提案を続けていこうと思っています」

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