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元乃木坂・堀未央奈、『サレブル』大胆ベッド演技に絶賛の声 先人の成功と失敗を糧に臨む“不退転の女優業”
乃木坂46のエースとして期待高まるなかでの卒業、覚悟を持って挑んだ不倫悪女役
初センターに選ばれた際、「未央奈はしっかりしていて落ち着いていますね」と松村沙友里に褒められるも、「よく言われるんですけど、本当の私は違うんですよ。そのギャップが結構悩みで。正直、今の私は他人なんです」と発言(2013年11月30日/ORICON NEWS)。自分のキャラクターを前面に押し出すことなく、「アイドルとしての自分」をしっかりと演じようとする意識の高さがメンバーを驚かせていた。
白石をはじめとする1期生が卒業していくなか、齋藤飛鳥と共にセンターポジションを担う中核的な存在だっただけに、想定外の卒業発表に「#堀未央奈」がツイッターのトレンド入りする現象も起きた。
卒業後初の主演ドラマ『サレタガワのブルー』は、愛妻家の夫・田川暢(犬飼貴丈)が可愛くて優しい理想的な妻・藍子(堀)の裏切りを知り、復讐するストーリー。堀は不倫の罪悪感が一切なく、息を吐くように嘘をつくサイコパスな悪女を熱演している。
SNSでは、「キラキラアイドルという印象だったから急に女優モードで演技もかなり攻めててビックリ」「演技がすごすぎて、観ていて感情が追いつかない」などと高評価を得ている。
アイドルを卒業したばかりの堀にとって、汚れ役は大きな賭けだったはずだ。ランジェリーでベッドに横たわる姿や男性俳優との濃厚な絡みは、これまでのファンにはショックが大きく、また“不倫”や“悪女”といった役どころは同性からの反感や嫌悪感を持たれるリスクもある。インパクトの強い役だけに下手を打てば「イメージに合わない」と叩かれ、逆にあまりにハマっていたら今後もオファーは悪女役ばかり…ということにもなりかねない。
しかし、卒業後すぐの一か八かの汚れ役での勝負からは、彼女の女優へのブレない覚悟が垣間見える。それまでの自分をリセットし、いかにして“アイドル然”を脱皮するかは、トップを極めたアイドルが女優として成功を掴めるか否かの分かれ道となるからだ。
女優として正しい評価がされ辛いトップアイドル…単なるデビューではなく、“女優に転身”できるかがカギ
また、AKB48でもう1人のエースを張っていた大島優子は、2014年6月に卒業。元子役としての地盤があっただけに現役時代から演技力への定評が高く、アイドル卒業後のロールモデルとしての期待値も高かった。事実、同年11月公開の映画『紙の月』では、主人公を破滅に追い込む“悪女”を演じて数々の映画賞に輝いている。その後、2017年8月から約1年の語学留学というブランクを経て、NHK連続テレビ小説『スカーレット』(2019年9月)で演技が高く評価され、女優としての認知を全国的なものにした。
アイドルとして天下を獲れば、卒業後も映画やドラマのメインといった好待遇を受けやすいものの、女優として正当な評価がされづらい傾向もある。清廉潔白なイメージを覆す“悪女”という役どころが、“アイドル然”を脱皮する起爆剤として有効に機能することは、この2人の事例からも明白だ。
一方、2015年8月にAKB48を卒業した川栄李奈は、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(2016年4月)や『僕たちがやりました』(2017年7月/フジテレビ系)などの脇役やゲスト出演といった実績を積み、2018年に映画『恋のしずく』で初主演。役の大小を問わず、着実に女優として歩みを進めてきたことが躍進に繋がった好例だ。何よりアイドルとしての世間的なイメージが固まる前に本格的に演技の道を進んだだけに、女優としてフラットに受け入れられたところは大きかった。
ひるがえって、堀と同じ乃木坂46出身では、白石麻衣が卒業後初となる連続ドラマとして秋元康が企画・原作の『漂着者』(テレビ朝日系)に出演中。主演・斎藤工が演じる地方の海岸に漂着した謎の男がSNSにアップされた動画から一躍時の人となり、人々を狂信させていく新感覚ドラマで、白石は正体不明の男の謎を追う新聞記者役を演じている。その美貌とは裏腹にバリバリと仕事をこなす女性という役どころは、現役アイドル時代の白石とそれほどギャップがないだけに、どれだけ力量を見せられるかが今後のカギとなるだろう。
アイドルとして強烈なイメージによって、女優として正しく評価をされづらいのもトップアイドルの宿命。それだけに転身タイミングの身の振り方は極めて難しいが、早々にアイドルの肩書きを捨て、ゼロから始める気概をもって活動していくことも成功を掴む秘訣の1つ。その手法に則った堀は、同じ乃木坂46出身では白石より一歩リードしている感もある。
女優としての不退転の決意とポジションをいち早く確立するための戦略
当時の彼女は今後のキャリアについて、「女優さんです。意地でもやります」と即答。「色んなお仕事にもやりがいを感じられますけど、自分には“これだ!”というのを見つけられるのは難しいと言うじゃないですか。自分は演じることや作品に向き合うことがすごく好きなんだと思いました。乃木坂で色んな経験をさせていただき、演じることや作ることが自分にはしっくりくるということを感じました」(2019年6月8日/ORICON NEWS)と女優という仕事に手応えを感じていたようだった。
卒業発表時には、「1からお芝居をしていきたいと思います」とブログで心境を綴り、卒業後のインタビューでは「どんな役でもなりきって、『どれが本当の堀未央奈かわからない』って言われるように振り回していきたい」(2021年4月15日/ORICON NEWS)と語っていた。
その言葉からも卒業とともにきっぱりと“アイドル然”を捨て、女優として覚悟を持って臨む強い意志が感じられる。卒業後の初作品にイメージが決して良いとは言えない“不倫悪女”役を選んだのも、先人たちの成功や失敗を見極めながら女優としてのポジションをいち早く確立するための戦略だったと言えそうだ。
大量生産され続けるアイドル業界で、後輩たちに卒業後の戦略を提示し、1つの成功例となった堀未央奈。アイドルには瞬発力が要求されるが、女優は長期戦。篠原涼子(元・東京パフォーマンスドール)や永作博美(元ribbon)、満島ひかり(元Folder)のように、もはやアイドル出身のイメージがない女優たちもいる。48グループや坂道グループの先輩たちとも異なる、女優としての堀未央奈の今後の飛躍に期待したい。
(文/児玉澄子)