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元芸人が農業に転身、話題のパクチー自販機で活路「最愛の夫の他界が転機に」
パクチーは女性農家が扱いやすい重量が軽い野菜であり、流通価値も高い
立川あゆみさん 千葉県八千代市の農家の長女として生まれ、高齢の両親が懸命に土地を守ろうとしている姿を目の当たりにし、私がこの土地を守っていかなければならないと思い立ち、2016年2月に新規就農しました。実家は多品目少品量の農家で、その土地を借りて始めたことがきっかけです。
――パクチー栽培をはじめた理由は好きだったから?
立川あゆみさん 嫌いではなかったのですが、特別好きということでもなくて(笑)。知識もないパクチー栽培をやろうと思ったのは、その地域が人参やほうれん草、ねきなどを栽培しているので、同じ野菜を作っても42歳で就農した私がほかより秀でることは簡単ではない。そんなときに、パクチーは重量が軽い野菜なので、女性でも高齢になってからでも扱いやすい。さらに、ほかの野菜に比べて金額的にも高価で扱われます。東京都内での流通価値が高いこともあってパクチーを選びました。
――パクチーのお菓子やペーストなど、幅広く販売されています。
立川あゆみさん 農業を始めて規格外の野菜が多いことを知りました。でも、それを処分してしまうのがもったいないのでパクチーペーストを作ったんです。昨年は新型コロナウィルス感染症拡大で飲食店の営業時間短縮や営業自粛などを受けて取引量が激減しました。その影響で廃棄が増えていたので、年末から年明けにかけて200キロほどをドライパクチーにしました。それを使ったお菓子のラインナップを増やし、自動販売機で販売しています。パクチーを使った食品は10種類。ほかにエコバッグやTシャツなどアパレル商品もあります。
――「パクチーシスターズ」というネーミングはどこから?
立川あゆみさん 「1人で作っているのにシスターズ?」とよく聞かれます(笑)。パクチー商品の兄弟姉妹を増やしていきたいので「パクチーシスターズ」なんです。ブラザーズでもよかったんですけど(笑)。
――1人でこれだけの農家を経営しているのですか?
立川あゆみさん 週末は成人した娘と息子が手伝いに来てくれます。平日はアルバイトやパートの方が栽培を入ってくれますが、基本的に1人農家です。パクチーのお菓子は、お菓子屋さんやパン屋さんにご協力いただいてOEM(ブランド委託生産)しています。ゆくゆくは自社で加工までできたらと考えています。
自販機人気に気持ちが追いつかない…パクチーを売りたいだけではない
立川あゆみさん 昨年5月に1回目の緊急事態宣言が発令されてから、売上が激減しました。取引がなくなった飲食店もありますし、続いていても7割減ほどがほとんど。そんななか、ECサイトを立ち上げて個人向けの販売も始めましたが、知名度がなく伸び悩んでいました。
――その時期に直販を始める農家は増えました。
立川あゆみさん そんななかテレビ番組で紹介される機会があり、9月から直売所を始めました。でも、1人で生産から販売までやっているなか、直売所を毎日開けるのは難しい。そこでどう売上を伸ばしていくか考えたときに、自動販売機の導入に至りました。パクチーの大きさなどサイズや保存方法を熟考し、開発に半年ほどかかり、ようやく今年3月に設置できました。
――自動販売機にもこだわりがあって試行錯誤されていたんですね。
立川あゆみさん おもしろいものにしたかったのと、Instagramの“映え”を意識して見た目のインパクトを大事にしました。お客さまが、ワクワクしながら写真を撮ってSNSにアップしてもらうような、八千代市にこんなおもしろいところがあるんだっていう名所にしたくて。その1つ目が直売所で2つ目が自動販売機。次をいま考えているところです。
――話題のパクチー自販機ですが、売上も好調ですか?
立川あゆみさん 1日に3回ほど補充していますが、すぐ欠品してしまいます。生産や商品を入れるタイミングがなかなか追いついていない状況です。自販機の1日の平均売上は1万円前後くらい。ただ、パクチーペーストの単価(税込1300円)が高いこともあります。
――自販機が話題になるようになって状況が一変したのでは?
立川あゆみさん テレビとかメディアの問い合わせも多いのですが、遠方で買いに来られない方のECサイトからの購入も増えています。あと、一番は自分の気持ちがまだついていかないこと(笑)。
――気持ちがついていかないとは?
立川あゆみさん 「売りたい」というより、おもしろさを打ち出すためにやっているところが大きいんですね。こうしたら皆がワクワクする、楽しいと思ってくれるというのを目指して直売所や自動販売機をやっているなか、想像以上に大きな反響をいただいているので。
12年間一緒に過ごした最愛の夫の他界から迎えた新たな人生のチャンス
立川あゆみさん 『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)世代で、子どもの頃からお笑い芸人になりたいと思っていました。いまのようなお笑い養成所がない時代で、服飾系の学校を卒業してアパレル会社に就職しましたが、夢を諦めきれずにいました。アパレル会社に勤務しながら、吉本興業の銀座7丁目劇場『お笑い虎の穴TOKYO』のオーディションを受けて、コンビを組んで芸人としても活動していました。
――夢を叶えて芸人になったのに辞める決断をしたのは?
立川あゆみさん 同じアパレル会社に勤務していた13歳年上の夫と出会い、早く結婚して子どもを授かりたいと思うようになりました。それで芸人を続けるよりも結婚を選びました。亡くなるまで12年間一緒に過ごしましたが、毎日好きがあふれるくらいすごく大好きな人だったんです。
――芸人をはじめ、さまざまな職業を経て行き着いたパクチー農家まで、「人をワクワクさせたい」という思いがつながっています。一貫して芯の通った人生を歩まれているように感じます。
立川あゆみさん 飲食店を経営していなかったらパクチーのペーストやお菓子を作る発想はなかったかもしれませんし、デザイナーをしていなかったら人を楽しませるパッケージデザインのアイデアは出てこなかったと思います。農業を始めたのは遅かったかもしれませんが、これまでのすべての仕事の経験が糧になり、たくさんの出会いと悲しい別れもあったからこそ、人生のこのタイミングでパクチーシスターズが皆さんに知っていただけたんだと思います。
――そう思える立川さんの強さを感じます。
立川あゆみさん 夫はすごく大事な人でしたが、もしいま健在だったら私がパクチー関連の仕事をしていたかはわかりません。すごくつらい別れではありましたが、そこから新たな人生のチャンスをいただいたと切り替えてがんばろうと思えました。
――立川さんの取り組みは多くの農家に勇気を与えています。
立川あゆみさん いま農家の皆さんが苦しい状況でいるときに、立ち止まらないことがなにより大事。私が夫を亡くしたときもそうでしたが、どんなにつらい状況であっても、いつまでもずっと続くわけではない。どうしようもないつらさがあるのであれば、それをどうにかできる力を誰もが心の根底には持っていると思います。
――こういう厳しい時代であり、苦しい時期であってもできることはあると。
立川あゆみさん 負けない気持ちといいますか、強い心を持ち続けることが大事。それがたまたま私はパクチー自動販売機にたどり着いただけです。大変なことがあるからこそ楽しいことがある。人生は表裏一体です。パクチーを通して私自身も成長し、皆さんと笑顔を共有できることをありがたく思っています。
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【PAKUCISISTERSのパクチー直売所/パクチー専門自動販売機】
【住所】千葉県八千代市大和田新田885-5
【直売所営業時間】毎週日曜日 10時〜12時