(更新:)
ORICON NEWS
土村芳、『ライオンのおやつ』役作りでベリーショートに 作品ごとにまるで別人“薄い顔”だけじゃない“心幹”の強さ
同ドラマは、『ツバキ文具店』『食堂かたつむり』などの小川糸氏の同名小説が原作。医師から余命を告げられた29歳の海野雫(土村)は、最後の日々を過ごす場所として、美しい島のホスピス「ライオンの家」を選ぶ。そこに暮らす人たちとの出会いと別れ、静かに育まれる信頼と友情…優しく流れる時間の中で、雫は本当にしたかったことを考える。
「化学療法で病と闘った後、ライオンの家に行くという状況から、髪は短くカットしている方が自然だと思いました。その上で、ボブのウィッグを装着している時というのは、彼女にとって他人に“見せたい自分”の姿。一方、自室で一人、ウィッグを取った“自分”もいる。どちらも“自分”なんですけど、それを表現するためにも髪は切りたい、と。撮影が進むにつれて、切ってよかったと感じることが増えていった気がします。単に見た目の問題だけでなく、髪を切っていなかったらできなかったかもしれないお芝居があったように思います」。
「《死》という絶対的な存在がずっとある状態で物語は進んでいきます。これまでの人間関係をすべて断ち切って、人生を終わらせるためにライオンの家に来たのに、新たに出会った人たちや穏やかな島の景色に触れて、自分でも思っていなかった何が芽生えていく。扉を閉めようとしたら、別の扉が開いていくような主人公の心の変化が台本にも繊細に書かれていて、彼女の変化をどれだけ表現できるか、視聴者の方にどれだけ伝えることができるか、ずっと考えていました」。
ベリーショートの髪型を生かして、作家・一穂ミチ氏の直木賞候補作『スモールワールズ』収録の短編を映像化した「愛を適量」(You Tubeで公開中)では、FtM(トランスジェンダーの男性)をカミングアウトして、光石研演じる父親を困惑させる“娘”を演じた。
FtMの役を演じた「愛を適量」は1日で撮影。監督から『あんまり男らしく演じようとしなくて大丈夫です』と言っていただき、それよりも光石研さんが演じる父親との距離感、現場で光石さんを目の前にして生まれる空気、2人の間に漂う何かを大事にしてほしいという言葉を信じて演じました」。
作品によってしなやかにアプローチの仕方を変え、「私自身のバランスを取っているのかもしれません」という。作品ごとに別人に見えるのは、「化粧や髪型」によるものだけではないだろう。心の体幹がしっかりしているからこそ、高いパフォーマンスが発揮できる。
2013年に本格的に女優として活動をはじめて以来、NHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』(16年後期)でヒロインの親友役を演じて一躍注目を浴び、『恋がヘタでも生きてます』(17年)、『3年A組ー今から皆さんは人質ですー』(19年)、『本気のしるし』(19年)、映画『去年の冬、きみと別れて』(18年)など、出演作は必ずといっていいほど話題になり、同時に彼女の高い演技力も評価されてきた。
放送中のドラマ『ライオンのおやつ』は、いよいよ佳境に入る。「30歳にして初めて単独主演した連続ドラマとして、私の中に残り続ける作品。しかもすてきな物語で、共演者の方々も全員すばらしくて、なんて恵まれているんだろうという喜びとありがたみを感じています。だからこそ全身全霊で挑んだ作品でもありますし、いまの自分が持てるすべてを注ぎ込んだ作品でもあります。最後まで見届けていただきたいです」と、呼びかけている。
■『ライオンのおやつ』(全8回)
【放送】BSプレミアム/BS4K:毎週日曜 後10:00〜(8月1日は第6回)
【再放送】BSプレミアム:毎週日曜 後4:15〜(8月1日は第5回)