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「うつ病で猫を手放す」飼い主と猫の涙の別れ、大切だからこそ違う道を作る

 家族である飼い猫と、別れざるを得なくなるケースは意外と多い。飼い主の高齢化、経済的事情、病気などさまざまな理由が挙げられるだろう。「人間の身勝手だ」「ならば飼うべきではなかった」と非難する人もいるかもしれない。だが、やむを得ない事情があり、猫を愛するがゆえの選択だったとしたら…。NPO法人『ねこけん』に相談に訪れた、ある男性と猫の話を代表理事の溝上奈緒子氏に聞いた。

一人きりの闘病、「このまま徘徊が続けば、猫を傷つけてしまうかもしれない」

  • 飼い主の男性との別れ(写真:ねこけんブログより)

    飼い主の男性との別れ(写真:ねこけんブログより)

 ある男性が『ねこけん』に持ち込んだ猫の名前は、“ミルク”。5年前にペットショップで購入された長毛種の猫で、とても大事に育てられてきた。しっかりとブラッシングされた毛、爪もキレイに切られており、ワクチンも毎年打たれている。見る人が見れば、猫が飼い主にどれほど愛されてきたかが伝わる、そんな猫だった。

 それほど大事にしてきた家族を、どうして『ねこけん』に引き取ってもらわなければならなかったのか? 飼い主だった男性は、溝上氏に自身の健康上の問題を告白した。

 「とてもかわいそうな飼い主さんでした。もともとうつ病で精神科に通っており、今では夜中に徘徊してしまうことがあるとおっしゃっていました。経済的にも厳しく、一人暮らしで頼れる人もいない。そうなると猫の安全面を維持することができず、手放すしかなくなってしまったと…。本当につらそうでした」。

 自分の抱える病と正面から向き合い、愛猫を心の支えに頑張ってきた。しかし、このまま徘徊が続いてしまえば、気付かないうちに猫が外へ出てしまうかもしれない。傷つけてしまうかもしれない。購入してから5年もの間、一緒に過ごしてきた家族。平和で穏やかな日々が続くはずだったのに…。そんな家族を手放そうと決断するには、どれほど悩み、考え、勇気が必要だっただろうか。それが伝わってきたからこそ、溝上氏もボランティアメンバーも、話を聞いた際には号泣したという。

 「大切だからこそ、愛猫に違う道を作る」

 猫の安全と、幸せを守るための決断。どんなに寂しくても、飼い主にとっては猫が健やかに暮らせることが一番大事だった。この男性から猫を引き取ったとき、溝上氏は「この子を幸せにできる」と断言している。それが男性にとって、もっとも大切な言葉だからだ。

「健康に戻っても、もう猫は飼わない」、男性の無念と猫の未来

  • 愛されて育ったミルク(写真:ねこけんブログより)

    愛されて育ったミルク(写真:ねこけんブログより)

 『ねこけん』に連れてこられたミルクは、鳴きもせず、じっとしていたという。きょとんとした表情はしているが、もしかしたら飼い主の気持ちが伝わっていたのかもしれない。何度も頭を下げる飼い主は、「健康に戻っても、もう猫は飼わない」と言った。溝上氏が「あなたら飼えますよ」と伝えたが、「今回とてもつらいから…もう飼いません」と。それだけ、ミルクを愛していたということだ。

 猫のため、飼い主のため、『ねこけん』は新たな家族を見つけて送り出すことを目標に、ミルクをケアしていく。だが、中には「そうやって引き取るから、勝手な飼い主が減らない」という意見が寄せられることもあるそうだ。

 「命にかかわることなので、熱くなってくださる方も多く、そういうご意見は少なからず寄せられます。もちろん、身勝手な飼い主はもってのほかですが、どうにもならない事情の方もいます。賛否両論の声はありますが、正解があるわけではない。各団体で考え方やルールは違いますが、考えを押し付けることなく、猫を守ること、幸せになる道筋を考えることをしていきたいと思います」。

 これまでも数多くの猫を保護してきたが、依頼のあったすべての猫を受け入れられるわけではない。それでも『ねこけん』は、命を最優先に何とか受け入れ、猫の再出発の手助けをしていく。愛情をいっぱいに注がれ、その愛情ゆえに飼い主と別れることとなったミルクもまた、そうして新たな旅立ちを迎えるだろう。飼い主とミルクの、今後の幸せを願うばかりである。

(文:今 泉)
■NPO法人『ねこけん』(外部サイト)

■『ねこけん』オフィシャルブログ(外部サイト)

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