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コロナ禍で再注目のゼラチン 震災復興から10年、困難を乗り越えたコラーゲンのパイオニア『ゼライス』の思い
見覚えのあるピンクとゴールドの箱 社名を背負った70年近いロングセラー商品
発売は1953年。手軽に洒落たデザートが作れる家庭向けゼラチンとあって、急速に普及しました。同時期に家庭用の冷蔵庫の普及も進み、おやつにゼリーを作るご家庭も増えたようです。
――今年はコロナ禍のステイホームで、ゼラチンが注目を集める機会も増えました。今回の再ブームについて感じていることがあれば、お聞かせください。
コロナ禍で当社も大きな影響を受けることを覚悟していましたが、実際には巣ごもり需要で多くのお客様にご購入いただきました。
――粉状の個包装の商品で、使いやすいのが特徴かと思います。発売から改良している点はありますか?
発売当初と比較すると、様々な改良が加えられています。現在は顆粒状のゼラチンで、溶解性は飛躍的に改良されて今に至ります。
お客様が安心してご使用頂けるように徹底した品質管理を行い、安全な商品としてお届けしています。また、発売当初からゼライスを使用したレシピが同梱され、ご家庭で手軽にデザートや料理にご使用いただけるよう心がけています。
――基本的な質問で恐縮ですが、そもそもゼラチンは何からできているのでしょうか?
動物由来のコラーゲンです。牛や豚、魚から取り出したコラーゲンから抽出するもので、主な成分はタンパク質になります。
看板商品を襲った3つの大きな困難 「復旧・復興は人の力なくては成し得ない」
最初は1980年代中盤の商業捕鯨中止です。創業以来続けていた鯨由来の製造法を大きく見直さなければなりませんでした。これを機に原料を一から見直し、牛由来と鯨由来と並行して製造してきた豚由来ゼラチンに切り替えていきました。
――2つ目の危機はいつ頃だったのでしょうか?
2004年にイギリスから始まったBSE(狂牛病)騒動です。これより牛由来ゼラチンは敬遠されるようになり、牛由来のコラーゲン製造を縮小せざるを得なくなりました。これ以降、豚由来のゼラチンが広く求められ、豚由来コラーゲンの開発に注力していきました。
――3つ目は、2011年3月の東日本大震災と伺いました。
そうですね。ちょうど創業70周年を迎え、自社の独自成分「コラーゲントリペプチド」が注目された時期でした。2009年に仙台市若林区若林から工場移転が完了し、同工場跡地の開発が順調に行われていた時期に震災が発生。1階床上2m30cmの津波に襲われ、工場は全壊・半壊・一部損壊に見舞れたため、全機能が停止しました。
――当時の様子やお気持などお聞かせいただけますか。
幸いにも従業員は全員無事でしたが、雪が舞う3月の寒さの中、翌朝自衛隊に救助されるまでは心細い思いをしました。被災した事務所や工場の瓦礫や泥・吸水したゼラチン等を掻き出す作業は、全社員交代制で行ないました。食料等の物資が不足している中、体力的にも厳しい作業でしたが、異なる階層・部署の従業員同士が共に作業をすることが絆を深めたと思っています。
――復興から10年。企業として立て直すまでに、さまざまな努力があったと思います。この10年間で御社が一番大切にしてきたことはなんですか?
震災後、最初に会社が打ち出した方針は「従業員の雇用を維持する」でした。その方針もあって、従業員は惨状を目の当たりにしてもくじけなかったのだと思います。様々な設備等ハード面はもちろん大事でしたが、やはり復旧・復興には人の力なくては決して成し得ません。
従業員とその家族とともに歩んできた80年 これからもパイオニアとして
創業から80周年を目前にした2020年、ブランドリニューアルの一環として弊社ロゴおよびロゴマークを変更しました。ゼライスが長年大切にしてきた想いを、そして宮城県発のグローバル企業として日々進化・成長していきたいという想いを込めたロゴを新たに策定しました。
――ロゴマークが変わり、表記も英字からカタカナになりましたね。
ゼライスが大切にしている4つの想いを4人のキャラクターに見立て、それぞれの個性が、独立しながら関わり合い、混ざり合い、新たな価値を創造する姿を表現しています。チップは、“人”であり、“和”を象徴する桜の花びらのようで、これから花開いていく会社像を想起させると共に、ゼラチンの一粒でもあります。社名は、皆様により身近に感じていただきたいとの想いから、英語表記の『JELLICE』から『ゼライス』に変更しました。
当社は社会的使命から出発しています。多くの先輩社員や社員がそのことに誇りを持ち、ブランドイメージを大切にしてきたことだと思います。
――ゼラチン・コラーゲンマーケットをリードする会社として、今後私たちの生活の中でどんな存在でありたいとお考えですか。
ゼラチンが水や空気と同じように、「人々の生活に欠かせない存在」となるよう、今後一層努力して参ります。
――現在も、ゼラチン、コラーゲンを軸に様々な研究に取り組み、ゼラチンは食以外にも医薬・医療用に使われたり、コラーゲンは膝関節ケア商品などにつなげてらっしゃいますが、御社の今後の展望をお聞かせください。
これからもゼラチン、コラーゲンのパイオニアとして、お客様に必要とされる商品を世に出して行きたいと思います。今後も一層、地域の発展に協力する会社であり続け、同時に私たち社員が働いて楽しくなるような環境を作って参りたいと思います。