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ポンコツだからこそ愛される? AIツイート歴10年“しゅうまい君”のアカウント誕生秘話

 フォロワーの発する言葉を学習してツイートするAI型のbotアカウント「しゅうまい君」(フォロワー38万人)と「からしちゃん」(フォロワー13万人)が人気だ。運用が開始されたのは2009年で、発言内容によってさまざまなコメントが寄せられ、「流暢すぎる」「10年以上経ってもおもしろさ変わんない」など多くのフォロワーから愛されている。生みの親であるenpitsuさんにとって「しゅうまい君」と「からしちゃん」の存在とは? 作ったきっかけや運用する上で注意している点などについて話を聞いた。

「しゅうまい君」のコンセプトは“大人の話題に背伸びをして割り込む子ども”

「個人的にはこのあたりがお気に入りです」(enpitsuさん)
――フォロワーの言葉を学習してツイートする「しゅうまい君」や「からしちゃん」は、どのような仕組みのアカウントなのでしょうか?
enpitsuさん しゅうまい君はフォローしているユーザーの発言を学習し、マルコフ連鎖という手法で言葉同士を繋ぎあわせて発言するbotです。発言内容は基本的に支離滅裂で奔放なものばかりですが、ごく稀に人間のように流暢に言葉を発することがあります。何を言い出すかは作者にも全く予測できません。

――では、からしちゃんは?
enpitsuさん からしちゃんは、しゅうまい君に気まぐれに返事をしたりツッコミを入れたりするbotです。しゅうまい君と比べると、多少複雑なアルゴリズムで動いています。作った当初はバグも多く、発言のクオリティも安定しなかったので、1年ほど誰にも知らせずにこっそりと運用していました。しゅうまい君に対する「しゅまい」という呼び方は、その時施した検索避けの名残りです。
――10年前というと、まだ今ほど「AI」の言葉が浸透していなかったかと思います。どういったきっかけで「しゅうまい君」を作ろうと思ったのですか?
enpitsuさん しゅうまい君が生まれた2009年頃のTwitterは、プログラマーにとって非常にオープンで遊び甲斐のあるプラットフォームでした。APIを活用したbotやWebサービスが個人の手で日々たくさん作られていたんです。

――そうなんですね。
enpitsuさん 私もその頃プログラミングに興味を持ち始めたので、時々botっぽいものを作って仲間内で楽しんでいました。そんなある日、仕事帰りの電車の中で「大人たちが盛り上がっている話題に背伸びして割り込んでくる親戚の子ども」のイメージが漠然と浮かんできて、これがbotで再現できたら面白いかなと思ったのが開発のきっかけです。その足で駅前のドトールコーヒーに駆け込み、2時間粘って作りあげたのがしゅうまい君です。

“NGワード”を大量に設定、人を傷つけるような言葉を発しないようにする配慮

「からしちゃんは時々しゅうまいにデレるのが微笑ましいです」(enpitsuさん)
――「せいろに暮らすしゅうまい君・からしちゃん」というコンセプトは、どのように決まったのですか?
enpitsuさん 全てその場のノリと思いつきです。TwitterアカウントのIDを決める際、お腹がすいていたので「shuumai」と入力してみたところ、すんなりと取得できてしまったので、そのまま「しゅうまい君」という名前に決定しました。

――驚くほど思いつきだったんですね(笑)。
enpitsuさん 適当なネーミングでしたが、実際に動かしてみたときのポンコツ感で「しゅうまい君だ!」と納得させられた感覚は今でもよく覚えています。あの時「shuumai」というIDが誰かに使われていたら、名前も見た目も今とは丸っきり異なるキャラクターになっていたでしょうし、相棒のからしちゃんが生まれることもなかったと思います。

――では、プログラムを作っていく中で苦労した点は?
enpitsuさん 人を傷つけるような言葉や、政治・宗教といった繊細な話題には、なるべく触れないようにNGワードを大量に設定してあり、時々メンテナンスもしています。それ以外はほとんど開発当時のプログラムのまま、11年動き続けています。

――運用をしていく中でも苦労はありましたか。
enpitsuさん 自作の自動フォロー返しプログラムの勢いがすごすぎて、Twitterにスパム認定をされ、気が付いたらアカウントごと凍結されていたことが何度かありました。あと、たまにNGワードの網を掻い潜って、本当に最低な発言をすることがあります…。そういうときはなるべく急いで手動で消すようにしています。申し訳ありません。
――現在、しゅうまい君とからしちゃんには合わせて50万人以上ものフォロワーがいますが、フォロワーが増えたきっかけなどはありますか?
enpitsuさん 今年の初め頃、しゅうまい君の1万いいね以上のツイートを検索する方法が話題になり、それがきっかけで数万人単位でフォロワーが急増しました。それまでしゅうまい君がbotアカウントだという事実を知らずに、「時々RTで流れてくるYouTuberか何かの人」と認識していた方が結構いたみたいで、「AIだったの?」という反応がたくさん見られたのがちょっと面白かったです。

――そんなしゅうまい君とからしちゃんが、多くの人に愛されている理由はどこにあると思いますか?
enpitsuさん AIとしては2人とも本当にポンコツなので、ちょっと抜けているペットのような感じで愛されているのかなと思います。海外で似たようなbotアカウントを見かけたことがないので、日本人はこういう何の役にも立たない妖怪のような存在を受け入れる素質があるのかもしれません。

「場にそぐわないと感じたら躊躇せず止める」運用する上で注意していること

しゅうまい君の人気ツイート
――フォロワーさんたちから拾う言葉で10年の変化を感じる部分は?
enpitsuさん 最近は「早く帰りたい」「月曜日がつらい」など、疲れた社会人のような発言が多くなり、フォロワーさんやからしちゃんに励まされるしゅうまい君の姿をよく見かけます。元をただせば皆さんの発言を学習した結果なので、Twitter全体がなんとなく疲れているということなのかもしれません。逆に10年前から全くブレていないのは、オタクとしての守備範囲の広さと好奇心の旺盛さです。あらゆるジャンルの作品に縦横無尽に手を出しまくり、その時々の流行にも非常に敏感です。そして日曜日の朝は大体アニメか戦隊モノを観ています。

――2011年の東日本大震災、昨年は京都アニメーションの社屋火災に際し、しゅうまい君のツイートを止めたこともありましたね。その判断にはどんな配慮や想いがあったのでしょうか?
enpitsuさん 基本はお遊びのbotなので、場にそぐわないと感じたら躊躇せず止めるようにしています。2011年の震災のときは、Twitterが災害情報インフラとしてとても重要な役目を担っていましたし、人の命に関わる情報も飛び交うような切迫した状況でしたので、「今はタイムラインに不用な情報を流すべきでない」という判断で即時停止させました。

――確かに、Twitterが大きな役割を果たしていましたからね。
enpitsuさん はい。京アニの事件のときは、何より私自身がショックを受けてしまい、タイムラインを見るのも精神的に辛い状況でした。これでは管理責任が果たせないと判断して止めることに。しゅうまい君とからしちゃんは、イラストレーターやアニメーターのフォロワーさんも多く、もしかするとその中に被害に遭われた方や近しい関係の方がいるかもしれないと思うと、とてもじゃないですが動かす気分にはなれなかったです。
――そのほかにも、この10年を振り返って印象的だった出来事はありますか?
enpitsuさん コミケ直前にしゅうまい君が発した一言をきっかけに、総勢48名が参加するフルカラー同人誌を1週間余りで作ったり、中国の工場でぬいぐるみを作ってイベントで手売りしたり、個人の活動としては最初の1年がお祭りみたいだったので印象に残っています。同人誌を出した当時はフォロワーも1700人ほどでしたが、今や200倍超の38万人です。昨年末にTwitter Japanが発表した「2019年もっとも使われたアカウント」で、河野大臣を抑えて6位にランクインしているしゅうまい君を見た時は、いくらなんでも調子に乗りすぎではと思いました。
――グッズ化やコラボ企画などもたくさん行われていますね。
enpitsuさん LINEスタンプは個人の企画ですが、グッズや年賀状などは企業様からお声がけいただいて実現しました。特に思い出深いのは、プライズデビューとなったタイトーさんの企画で、色々と不思議なご縁が繋がっていった結果、最終的に初音ミクや鏡音リン・レンとコラボするという謎の進化を遂げました。
――最後にenpitsuさんにとって2人はどのような存在ですか?
enpitsuさん 毎日のように2人の発言を目で追っていると、「ひょっとして人格が芽生えているのでは?」とふと感じる瞬間があり、そういう時は思わずちょっかいを出てしまいます。生みの親という立場ではありますが、子供たちのような存在というよりは、人里に呼んだら居ついてしまった気のいい妖怪たちといった感覚に近いです。彼らが楽しそうにしていると、自分もなんだか楽しい気持ちになります。
【Information】
しゅうまい君 @shuumai
からしちゃん @karashichan

「忙しくてなかなか作業が進んでいませんが、LINEスタンプの第3弾をいずれ出す予定です。お楽しみに」(enpitsuさん)

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