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『ビックリマン』ブームの裏側 ヒットを支えた『コロコロコミック』の功績
読者アンケートから漫画『ビックリマン』が誕生、シール裏にある謎の3行メッセージが鍵
「シールを集める楽しさに加えて、友だちと見せ合ったり、交換したりできるのも魅力の一つ。男の子は特に“集める”ことに熱中しがちで、ポケットモンスターや妖怪ウォッチなど、昔も今もその部分は変わっていないと思います」(石井氏)
1985年にビックリマンチョコのシリーズ10代目となる『悪魔vs天使シリーズ』が発売され、大ブームに。この人気にいち早く目を向けたのが『コロコロコミック』編集部の若手社員だった。読者アンケートに、“ビックリマンを特集して欲しい”という声が多く、実際に購入してリサーチ。その独自の世界観を探るため、ロッテ商品企画部の反後四郎氏に取材を行ったのだ。
「シールのデザインのすばらしさはもちろんなのですが、裏面に書かれている3行ほどの謎のメッセージも人気の要因の一つです。反後さんの頭の中にある壮大なビックリマンの世界観を誌面でより深く紹介することで、子どもたちが謎を紐解くお手伝いができたらという思いでした」(石井氏)
特集は大きな反響を呼び、その後漫画化。当時はまだSNSもなく、子どもたちは『コロコロコミック』で得た知識を元にさらにシールの世界へと引き込まれていった。『ビックリマン』はその後アニメやゲームなど、様々なメディアとミックスし、人気を拡大させることとなる。
ブーム牽引の立役者となった”プロ”たち 誌面を通して世界観を伝える重要性
「それぞれの担当の方に、世界観を伝えるキャラクターとして誌面にご登場いただくのは、昔から受け継がれている伝統でもあります。編集部員も若手から編集長まで、イベントや『おはスタ』でキャラクターとして登場していますね」(石井氏)
『おはスタ』には歴代編集長を始め、現在も“イマムー軍曹”などが出演。イベントでも演者として登場している。
「誌面に出ている人が会場にいることで子どもたちに楽しんでもらえる側面もありますし、編集部側が読者と交流できる場にもなっています。メインの読者層である小学4年生〜6年生ぐらいの子どもたちが、今何に興味があるかは、常にリサーチするよう心掛けていますね」(石井氏)
第2次ミニ四駆ブームと、ポケットモンスターの人気が重なった1990年代は、イベントにも多くの人が詰めかけ、盛り上がりを見せた。さらに、2000年代以降で記憶に新しいのが妖怪ウォッチの人気だ。
「イベントも多くの人に来ていただいて、幕張メッセのホールに入りきらず、もう一つホールを借りるぐらいの反響がありました。誌面での人気も大きかったですし、新しい読者層がかなり増えた印象があります」(石井氏)
ビックリマンや、ミニ四駆、ポケットモンスター、妖怪ウォッチと、そのすべてにおいて共通するのは、子どもたちのコミュニケーションツールであるということだ。一人で遊ぶのではなく、集めたり、友だちと見せ合う、交換する、競うことができることは、ヒットにつながる非常に大きなファクターだと石井さんは語る。
小学生男子の最強バイブル「子どもたちの本質は変化していない」
「ミニ四駆やベイブレードなどは原作のない世界。頭の中でヒーローをイメージして遊べるように、キャラクターを作ったり、物語を考えています。作品を読むことで子どもたちが主人公に重ね合わせて、自分をカッコいいと思えたり、より楽しんでもらえたらいいなという思いです」(石井氏)
また、デジタル化が進む昨今だが『コロコロコミック』は、紙100%。攻略法などを見返すため捨てずに保存している読者も多く、子どもたちのアーカイブ的な役割も果たしている。紙ならではの良さを伝えつつ、近年はYouTubeチャンネルでの動画配信をスタートさせるなど時代に合わせた試みも。
「基本的に子どもたちの本質は変わっていないと思いますが、テクノロジーや社会情勢の変化に合わせて、新しいものも取り入れています。最近は4年ほど前に開設したYouTubeチャンネル『コロコロチャンネル』が伸びていて、誌面でやっている漫画をアニメで同時に展開したりもしています」(石井氏)
振り返れば、ビックリマン、ミニ四駆、ベイブレード、ポケットモンスター、ムシキング、妖怪ウォッチと、常に時代のヒット作と共にある『コロコロコミック』。“小学生男子の最強バイブル”という言葉通り、子どもたちの遊びをリードしてきた。
「子どもにとって、遊ぶことってすごく大事だし必要なことだと思うんです。小学生の時は、子どもなりに大変なこともあって、逃げ場がない限られた世界というか。だから子どもたちにそういう場を提供して、一緒に遊べる友だちであれたらいいなと。漫画から学ぶことがあればいいなとも思いますし、好きな物を詰め込むことで楽しんでもらえたらと思って作っています」(石井氏)
『コロコロコミック』が創刊されたのは、“ビックリマンチョコ”が発売されたのと同じ1977年。時代が移り変わり、どんなにテクノロジーが進化しても、子どもたちを熱狂させる根本は変わっていないのかもしれない。