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芸能界で相次ぐ自死、芸能人のメンタルケアと「自らを守る」当事者団体の必要性

レディー・ガガも薬服用を告白するアメリカ、「病院へ行くことを敬遠してしまう」日本

 実際、海外では俳優やアーティスト、著名人に対して定期的なメンタルケアが行われている。アメリカの芸能業界では、ボディケアとビューティーケアの基本にメンタルケアが挙げられており、それが受け入れられる土壌がある。

 例えばレディー・ガガも、インタビューで抗精神病薬を服用していることを告白。彼女の場合は、10代で受けた暴行に端を発するPTSDもあって特殊な例だが、重要なのは、メンタルの問題が重要視され、寛容に受け止められる社会や体制が整っているかどうかだ。

 一方、日本では、9月28日に放送された『とくダネ!』(フジテレビ系)で、竹内さんとの共演が多かった石黒賢が、「知られているがゆえに、病院へ行くことを敬遠してしまう」という現状について発言していた。心療内科へ通うこと自体が報道ネタになり、一般の目も気になる。それが、今の日本の芸能界であり、社会の問題点でもあるのだろう。

 「業界全体として、芸能従事者に対するメンタルケアは制度としていまだ導入されておらず、上手くケアできていない方々は一定数いらっしゃる。これまでも、芸能人のメンタルケアをしてきた事務所もあるかと思いますが、総じて不十分であると感じています。また、芸能人は種々の権利を生む出す職業でもあるにもかかわらず、芸能人の法的地位は曖昧であり、またその権利は法律で十分に守られていません。安定した職業であるとは言えないため、将来に対する強い不安も抱きやすい職業でもあります」

 生涯、生活していけるだけの収入を得られるかわからない。いつ仕事がなくなってもおかしくない。どんな仕事でも同じとはいえ、こと芸能界は浮き沈みの激しい世界だ。たとえ一線で活躍していても不安は拭いきれず、それだけストレスを抱え込んでしまうことは想像に難くない。

垣根を超えた体制作りの動き、芸能人による当事者団体の必要性も

 佐藤弁護士は「これから必要なこと」として、メンタルケアの対策をしつつ、芸能人のストレスや不安を軽減又は除去する動きが大切だと提案している。「芸能人の法的地位を明確にし、将来が不安にならないよう権利を適切に保護。そのうえで誹謗中傷から守りつつ、芸能人の名誉やプライバシー(私生活)を守る動きが必要だと思っています」。

 「事務所側が、芸能人の精神的なケアをするため『いのちの窓口』の開設に対する動きがあると伺いました。これは大変良い動きです。今後、芸能業界全体として、事務所や会社の垣根を超えて、そういった体制作りを進め、充実させていくことが大事だと思います」。

 さらに、佐藤弁護士は当事者である芸能人による動きも望まれると語る。

 「日本では、現状、俳優など実演家らによる団体がまだまだ少なく、団体を作りにくい環境でもあります。ですが、健全な業界を作るためには、今後は芸能人らがユニオンを含んだ当事者団体等を作り、その団体等を通して、自らの権利を守るために問題提起をしたり、相互にケアをする仕組み作りをしたりしていくことが、強く求められると思っています」

 相次ぐ自死の報道。ここから浮かび上がってくるのは、芸能界はもちろん、一般社会にも通じる様々な問題点だ。報道のされ方、そしてメンタルケアの必要について、いま一度立ち止まり、向き合わなければいけないだろう。

(文:衣輪晋一/メディア研究家)

<プロフィール>
佐藤大和(さとう・やまと)。レイ法律事務所代表弁護士。2017年に、芸能人の権利を守る団体である「日本エンターテイナーライツ協会」を立ち上げ、共同代表理事を務める。エンタテインメント、芸能人法務、スポーツ法務、マスコミ対応、企業法務、週刊誌等による誹謗中傷問題などが得意分野。これまで、『バイキング』(フジテレビ系)、『モーニングCROSS』(TOKYO MX)など、メディアにも多数出演。

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