• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • 繊細過ぎる“立体切り絵”に反響 紙の厚みでグラデーションを実現する超絶技巧
ORICON NEWS

繊細過ぎる“立体切り絵”に反響 紙の厚みでグラデーションを実現する超絶技巧

 昨年『カルティエ 伊勢丹新宿店』の大型壁面とオブジェが美しいとSNSで話題になった。壮大な立体作品だが、実は紙で出来た“切り絵”。“切り絵”というと子どもの遊びというイメージがあるが、まさかこれが切り絵だとは誰も思わないだろうというほどの繊細な作品だ。作者は島根在住のSouMaさんで、現在は国内外を問わずアーティスト活動をしているという。制作のこだわりや、今後の展望を聞いた。

子どものころから手遊びの延長で創作「特技とも思わないほど自然に生活の中にあった」

――小学生のころから切り絵を作っていたそうですが、切り絵をやってみようと思ったきっかけは覚えていますか?

【SouMaさん】小さい頃から自然な手遊びの延長で創作し始めて、現在の独自の創作方法に至ります。なので“切り絵”という言葉を知る前から遊んでいました。切り絵という絵画の手法があることを初めて知ったのは中学生の頃で、その頃から自分の作風を切り絵と呼ぶようになったと思います。

――小さいころから生活の中にあったのですね。趣味で終わらずに続けた理由をどう分析しますか?

【SouMaさん】趣味や特技とも思っていなかったほど生活に溶け込んでいたからかもしれません。作品を作ることが当たり前でした。遊びの延長として楽しんだり、息抜き方法でもあり…社会人になってからも自宅で作ることを続けていました。そして気付けば本職となっていて長く続いている感じです。

――切り絵が、独自の“立体切り絵”に成長を遂げた理由は?

【SouMaさん】折り紙などの立体造形に切り込みを入れたりするところから始まっているので、私の切り絵作品は初めからずっと立体です。今では平面の作品にもチャレンジしているので、順番が逆ですね。最初から“切り絵”として挑んでいたら、この順番にはならなかったかもしれないなと思います。
――『カルティエ 伊勢丹新宿店』の大型壁面やオブジェの作品が話題になっていましたね。

【SouMaさん】はい、カルティエ様からお声がけいただきまして。性別、年齢問わず、本当に幅広いお客さまにご覧いただけました。想像していた以上の多くの反響をいただき、とてもやりがいのあるお仕事でした。

――ものにもよるとは思うのですが…立体作品は制作にどのくらい時間がかかるものなのでしょうか?

【SouMaさん】常に何作品も同時に作っているので、一作品にどのくらいの創作期間をかけているのかはっきり把握していませんが、数日で作るものもありますし、長いものだと一年かけてやっと完成するものもあります。

“一枚の紙で作る”という手法が特徴「固執しているわけではないが、その方が慣れているだけ」

――すべての作品がつながった1枚の紙でできているとのことですが、作りたい形が物理的にどうしても作れない場合、どのように乗り越えていますか?

【SouMaさん】一枚の紙で作るという手法は、子どもの頃からの癖で一番作りやすく自然であるためにそうしているだけで、強くこだわってそうしているわけではありません。むしろパーツに分けて作ることに慣れていないんです。仕事内容によってはパーツで作って現地で大型作品を組みたてないといけない場合もあり、そのときは躊躇なくニーズに合った方法で分解して作っています。

――そうだったんですね。

【SouMaさん】自然とやってきた“一枚の紙で作る”という手法がSouMaの特徴としてアピールできることや多くの方に認知していただけることはとても嬉しいです。ですがプロとして仕事をする上で、さまざまなジャンルの作品にチャレンジしたいですし、表現の幅も広げていきたいと考えていますので、自分の作りやすい方法だけでなく、たくさんの手法を勉強していきたいなと思っています。

――特に苦労する工程は?

【SouMaさん】SouMa 独自の技法『剥がし切り』が一番労力を要します。通常は刃を突き刺して切って紙をくり抜きますが、剥がし切りは刃の刺す深さを何段階にも分けて水墨画のようなグラデーションをつけることができる技法なんです。
――紙の厚さでグラデーションを作っているんですね?

【SouMaさん】そうです。細かく切るよりもとても繊細な技術が必要で、子どもの頃から挑戦はしていましたが一枚一枚微妙に厚みの異なる和紙に合わせて手の感覚を合わせていくことが難しく、もっともっと技術を向上させていきたいと思っています。

――逆に、楽しい工程は?

【SouMaさん】SouMa の技法では、水をかけながら切る工程も多いのですが、和紙は乾くと収縮し形が変わるので、収縮後の完成形を予想しながら作らなければならないところが難しいです。ですがその工程の中で起こるハプニングや発見で新しい表現に出会うことも多く、作品にびっくりさせてもらえるところが楽しいですね。

――途中で「もうやめたい!」など思うこともありますか? そのときの乗り越え方なども教えてください。

【SouMaさん】創作だけが私の人生と思わず、作る気分でないときはサクッと作業を止めます。軸にある“自分”という存在をさまざまな環境が成長させてくれ、それによって“自分”の中の一部である“SouMa”というアーティストへエネルギーを与えられると思っています。その効果でまた良い作品が作れるようになるので、一旦創作から離れたいときはすぐ休みます。作品作りは子どもの頃からの長い付き合いなので、離れていると創作が恋しくなり休みで得た経験や発想を連れてまた気持ちよく再開できます。

設計図を必要としないのは自然「子どもが絵の具で描くときに下絵を必要としないのと一緒」

――下絵や設計図が作品作りの要になりそうだと思ったのですが、使用しないのはなぜですか?

【SouMaさん】それもまた子どものころに始めた私にとって、とても自然なことでした。小さい子が絵の具で何かを描くときに、下絵や設計図を必要とするでしょうか。早く遊びたい方が勝つので、いきなり筆で描きますよね。下絵を必要とするのはある程度成長した大人の発想ではないかなと思います。なのでこちらも自然なかたちで必要としていませんが、そこにこだわっているわけじゃありません。作風によってはラフ画を下絵として描くこともありますし、ひとりのアーティストとして絵を描けるように努力をすべきだと思っています。

――作品は、どんなものを題材にすることが多いのでしょうか?

【SouMaさん】最近は抽象的なモチーフで、絵画の顔料のような凹凸を表現に取り入れることが多いです。立体で作って奥行を感じさせることは簡単ですが、物理的な作品の厚みを抑えつつ見ている人が奥行を錯覚するような作り方を探求しています。

――一般のお客さまからの依頼も受け付けているとのことですが、どんな作品を作ることが多いですか?

【SouMaさん】個人のお客さまからは新築祝いや結婚式などお祝い事の贈呈品としてオーダーをいただくことが多いです。デザインはお任せが多く、どんな方がどんな想いでどのような方に贈るのか、そのストーリーを重視し、創作するよう心がけています。

――個人のお客さまのお仕事はどれくらいのペースで受けることができるのでしょうか?

【SouMaさん】現在は月に一回くらいのペースでお受けしているように思います。オーダーによっては結婚式や誕生日など、納期がはっきりと決まっていることもあるので、それに合わせて調整可能な限りお受けさせていただいています。現在は法人からの依頼が多くなりましたが、誰かの特別な日に寄り添える“オーダー”という素晴らしい創作を、これからも続けていきたいと思っています。

――現在も地元・島根県で活動を続ける理由は? また、その価値とは?

【SouMaさん】近年は海外での活動も増えてきていますし、島根にいるというより日本に住んでいるという感覚です。現在は島根県の石州和紙工房でSouMa専用に漉いていただいた和紙を多く使用するなど、とてもお世話になっています。島根という自然豊かでのびのびとできる環境に創作拠点を置き、国内外問わずさまざまなジャンルの仕事をいただけていることにとても感謝しています。作品を制作するうえでベストな環境に身をゆだねるのがSouMaのベストだとも感じていますので、ご縁があれば違う地へ移ることになっても対応できるよう、身軽な気持ちでいつもいます。

――今後作ってみたいテーマは?

【SouMaさん】チャレンジしたいテーマやアイデアはたくさんありすぎてひとことでお伝えすることができませんが、予想だにしなかったジャンルの仕事をいただくことも多いので、新たな表現の挑戦を忘れず、その都度全力で行っていきたいです。

information

SouMaさん公式ホームページはコチラ
https://www.souma-wkh.com/

あなたにおすすめの記事

 を検索