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ネットやSNSでもネタ化、“ミキプルーンの顔”が23年間も中井貴一であり続ける理由
今やテンプレに? ミキプルーンといえば中井貴一と定着
過去に巨大掲示板で流行し、現在はSNSでもときおり見かけるこのフレーズ。もはやテンプレと化したネット伝承のネタだが、元になっているのは、俳優の中井貴一が出演する2000年放送のCM『ミキプルーンの苗木』篇だ。本作は決してウケを狙ったようなCMではなく、ミキプルーンを扱っている三基商事株式会社が、商品の原料をカリフォルニアの自社農園で栽培していることを伝えるために制作された。それがいつの間にか、関係のない文脈で使われ、クスッと笑わせるテンプレとして広まったのだ。
ミキプルーンと言えば、中井貴一。中井貴一と言えば、ミキプルーン。1997年の『カフェ』篇、『市場』篇以来、23年の長きにわたりミキプルーンのCMに出演し続けてきた、まさに商品を象徴する存在である。今年、武田鉄矢出演の『マルちゃん 赤いきつねうどん』CMが、「同じ俳優を起用したテレビCMを最も長い間放送し続けている商品」としてギネス認定されたことも記憶に新しく、ほかにも財津一郎の『タケモトピアノ』、松下由樹の『フジパン』などのロングランCMがあるが、20年以上出演している中井貴一もまた、“ミキプルーンの顔”として定着しきったと言えよう。
商品の安定感が、中井貴一という存在と重なった
「人としての温かさも感じられる中井さんは、いつの時代でも、老若男女に支持される唯一無二の存在です。伝えたいのは、本物の良さ。そこが中井貴一という俳優の存在と重なった。中井さんでなければ、昔も今もイメージキャラクターの起用はなかった」
97年〜2000年代初頭こそ、海外ロケでナチュラルなプルーンの魅力を伝えていたCMだったが、徐々に『プルーンクッキング』篇、『食育』篇といった日常的なシーンが加わっていく。関連商品のPRも含め、様々なシチュエーションで中井貴一がミキプルーンを紹介してきた。商品をより知ってもらうためのCMへと進化していく過程で、“芝居”の部分に焦点を当てた作風のものも登場。『リハーサル』篇(2016年)などは、中井の存在感と演技力でもって、不思議な余韻を残すCMに仕上がっている。
若者からの認知低下の危機乗り越え、最高ランクの好感度を獲得
「一時期は出稿量が減り、広告代理店からも『若い人からの認知度が低下している』との報告を受けました。当社の製品は、健康志向が高まる40代以降の女性がメインターゲット。ですが、購入には至らずとも、若い層にも製品の存在を知っていただきたいという思いはあります。そこで、2018年に女優の瀧本美織さんにも加わっていただき、大々的に記者会見も行いました」(マーケティング部主任 篠原玲氏)
CMは打ち合わせの段階から中井が参加しており、芝居を重視した作風も中井の提案だという。そこに瀧本美織が加わり、『ボトルの中へ』篇での掛け合いなど、表現の幅がさらに広がった。そして2019年、現在放送中の『宇宙でもミキプルーン』篇、『大気圏突入』篇で、見事に若年層にヒット。
「監督と中井さんはお互いに意見を交わしながら、画づくりから芝居まで、クオリティの高いものを作り上げてくれています。監督と俳優双方のコンビネーションで、“クスッ”とした、狙いすぎないユーモアを届けることができているのだと思います」(同氏)
ミキプルーンがいきなり宇宙をテーマにしたことにも、理由がある。ミキプルーンがJAXAの宇宙日本食に認証されており、あえて表には出していないが、「実は…」という豆知識だ。
このCMは、調査開始以来、シリーズ史上でも最高ランクの好感度という成果をあげた。アメリカのコメディドラマのような台詞の応酬や商品名のコールは、大人にウケただけでなく、子どもが真似をするなどの話題作に。最初はもっとシンプルなものだったが、中井が芝居の肉づけをし、コメディタッチなやりとりに発展したそうだ。
「会話がつながっているようで、つながっていないんですよね(笑)。撮影では、お二人の芝居の呼吸が本当に素晴らしかったです」(同氏)