(更新:)
ORICON NEWS
Keynoteの限界突破?資料作成ソフトで作る”元号ネタ”アニメにSNS騒然
Keynoteの限界に挑み、休日返上も「後悔はない」
――なぜKeynoteでアニメーションを作ろうと思ったのですか?
栗林和明さんずっとアニメを作ってみたい、物語を作ってみたいという思いはあったのですが、なかなか専門的な技術を磨く時間が取れなくて、諦めていました。しかしある日、使い慣れているKeynoteでもゆるいものなら作れるんじゃないか?と思いついたんです。やればやるほどハマっていって、限界にチャレンジしたくなりました。
――GW中に制作に挑戦され、貴重なお休みをスライド作成に費やしたとか。完成までにどのぐらい時間がかかりましたか?
栗林和明さん「元号に選ばれなかった候補たちが令和に復讐する話」は12時間、「紙幣戦争」は16時間くらいですね。GWじゃないとまとまった時間が取れなかったのですが、やりきってみて分かることがたくさんあったので、後悔はありません(笑)。
――アイデアやストーリーは、どのように思いついたのでしょうか?
栗林和明さん元号の話は、アニメの『化物語』のような演出をKeynoteで作れるかやってみようという思いで始めて、「だとしたら敵が必要だ、元号落ちした候補と戦わせよう」という発想で生まれました。紙幣戦争は、中学時代に帰り道でよくしていた妄想がもとになっています。紙幣デザイン変更のニュースがあったときにちょうどいいなと思って作りました。
アイデアの源はSNS、「何がおもしろいのか、とことん分析しまくる」
栗林和明さん元号の話は、パロディ元のアニメ(『化物語』)から、いかに重要な要素を抽出して、デフォルメした上で状況や動作を伝えることが大変でした。基本的には全てKeynoteに初期搭載されているアイコンデザインだけを使うと決め、それを駆使してトンネルや道、教室、学校を作りました。紙幣戦争はオリジナルストーリーへの挑戦でもあったのですが、デザインや映像のトーン&マナーを作るのにかなり時間がかかりました。ストーリー、セリフ作り、音楽探し、演出など、何から何までゼロからやっていたので、作業自体は苦戦しましたね。どうしても物語の説明文字が多くなってしまうので、どれだけテンポよく文字を視認させられるかが大きな挑戦でした。何度も実験を繰り返してギリギリの調整をしました。
――Twitterで印象に残っているコメントは? その理由も教えてください。
栗林和明さん「どうやって作るかじゃなくて、何を作るかが大事なんだな」「Keynoteでできるんだったら、自分でもできるかもしれない」といったコメントをたくさんいただいたのですが、それが一番嬉しかったです。この映像の裏目的が、「制限された中での表現の可能性を証明する」ということだったので、それができたかもな、と。
――栗林さんのアイデアの源となっているものは何ですか?
栗林和明さん主にSNSです。面白い情報を発信してくれる人をどんどんフォローするようにしています。タイムラインから面白いと思ったものをバンバン保存して、それを一気に閲覧し、それぞれ“何が面白いのか”を分析しまくるんです。きちんと分析した上で、自分が根っこから表現してみたいことを重ね合わせ、自分が一番テンションが上がりそうなものを作っています。
――今後の展望をお聞かせください。
栗林和明さんまずはKeynoteの限界に挑んでみようかなぁと(笑)。実際に作るのは、あと2、3作品かもしれません。次はちゃんとアニメーションソフトを学んで、頭の中にある世界を表現したいです。次は「ひらがなの天下一武闘会」を作りたいと思っています。
(文:高橋七重)
1987年生まれ。10万本を超える映像の分析を基にして、番組や空間、商品、レーベル、ボードゲームなどを企画。JAAAクリエイターオブザイヤー最年少メダリスト。米誌Ad Age「40 under 40(世界で活躍する40歳以下の40人)」で、アジアから唯一の選出。Twitter :@kri1226(外部サイト)