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【プラモデル】戦艦、航空機、戦車など“神作”まとめ

廃れた大艦巨砲主義の象徴『大和』はなぜ、こうも美しいのか?「機械の美しさは、維持管理する人の情熱が生む」

 先日、ミッドウェー海戦で沈んだ日本海軍空母「加賀」「赤城」がミッドウェー沖の海底で発見され話題となった。そんな、哀愁と浪漫を掻き立てる日本海軍艦艇の中でもっとも人気なのが、九十四式46センチ砲を備え、当時世界最大最強と謳われた『戦艦大和』だ。時代に取り残された大艦巨砲主義の象徴に感じる“機械的な美しさ”について、艦船モデラー・渡辺真郎氏に話を聞いた。

山口隆司氏が教えてくれた、ミュージアムモデルとは正反対の「有機的な世界」

――プラモデルの魅力に目覚めた原体験を教えてください。

【渡辺真郎】私自身はプラモデルというよりはファミコン世代の初期にあたるのですが、6歳年上の兄がいつも楽しそうにプラモデルを作っているのを見て、興味を持つようになりました。生まれて初めて作ったプラモデルも兄から貰ったもので、バンダイのMSV「1/144 ザク強行偵察型」だったと記憶しています。まだ小学校入学直後で手先も不器用でしたが、兄から説明書の読み方やパーツの切り出し方などを丁寧に教えてもらった甲斐あって、一作目から無事に完成させることができました。色も塗らず、接着剤もあちこちはみ出しているような仕上がりでしたが、バラバラだったパーツが組み上がり、「ひとつのメカ」として成立したことに、とても感動したことを良く覚えています。

――では、「艦船モデラー」になったターニングポイントは?

【渡辺真郎】世の男子の多くがそうであるように、私も少年時代には「大きくて力強いもの」に憧れる心理が多分にありました。巨大な船体に強力な武装を搭載した「艦船」という存在は、まさしくそうした少年心理を刺激するには充分なもので、ある程度、プラモデルを作りなれた小学校3〜4年生の頃には、何の疑問もなく艦船のキットに手を付けるようになりました。当時、テレビで繰り返し放映されていた映画『ミッドウェー』や『連合艦隊』などを見た影響で、艦船の物理的なイメージを?んでいたことも要因です。

――「艦船」プラモを制作されるうえで、強く影響を受けたものはありますか?

【渡辺真郎】小学生の頃から模型雑誌なども時々眺めてはいたのですが、特に影響を受けたのは学研『歴史群像 太平洋戦史シリーズ』などに掲載されていた、1/100や1/200といった大スケールのフルスクラッチモデルです。これらの作品は、考証家としても高名な作家の方がいちから設計&制作されたもので、船体や構造物の形状はもちろん、艦上の細かな装備品の配置に至るまで、全て理にかなった説得力のあるものに仕上げられていました。見れば見るほど、実艦を間近に見ているような錯覚に陥って、衝撃を受けたことを覚えています。また、これらの作品はミュージアムモデル(実機の構造や機能を忠実に再現した模型)として、各地の海事博物館などに展示されていたので、実物を見るために現地を何度も訪れ、多くのインスピレーションを得るに至りました。

――モデラー作品から受けた影響は?

【渡辺真郎】プラモデルベースの作品としては『艦船模型スペシャル』などの模型雑誌の作例ライターとして活躍中の山口隆司氏の1/350艦船模型作例に大きな影響を受けました。山口氏の作例は、艦上で多数の乗組員が活発に活動している様子をジオラマ仕立てで再現しており、それまで自分の中で理想としていたミュージアムモデルとは正反対の「有機的な世界」を初めて教えてくれました。私は常々「機械の美しさは、それを維持管理する人の情熱から生まれる」という考えを持っているので、機械と人の関りを表現したその世界感には大きな感銘を受け、私自身もそうした作風を目指すに至る大きなきっかけになりました。

模型作家として目指すのは「艦船模型と建築模型を融合した作品」

――モデラーとしての“強み”を教えてください。

【渡辺真郎】艦船模型を単品作品として制作していた頃は、とにかく丁寧な作業とミスのない仕上げのみを目指していたのですが、それだけでは自分らしさや個性が演出できないことに気付き、模型作家として「自分が得意とする表現」を考える必要に迫られました。その時、思いついたのが「艦船模型と建築模型を融合した作品」です。私は以前、建築模型の制作会社に勤めていた時代がありまして、その時に身に着けた技術を取り入れ、港湾施設の情景模型の制作をはじめたことで、一般の艦船モデラーとは違った表現方法を得るに至りました。港湾施設の作品のモチーフは、戦前に撮影された写真や、旅行などで訪れた思い出深い情景をそのまま表現することもあります。もちろん、建物などの図面は手に入らないので、現地の写真や地図を参考に寸法を割り出し、自分で図面を書く必要があるのですが、「キットだけでは表現できない世界観を作り上げる喜び」が味わえるので、非常にやりがいを感じています。

――制作された中で一番の代表作を教えてください。

【渡辺真郎】今年2月に発売された『艦船模型スペシャル No.71』の掲載作例として制作した1/350戦艦「大和」です。当時、入手可能なディテールアップパーツのほぼ全てを投入し、艦上には380体ほどの乗組員フィギュアを配しました。「大和」は思い入れの深い船でしたので、これまでの制作経験の全てを注ぎ込むとともに、日本海軍最後の水上部隊の最期の姿に想いを馳せ、厳粛な気持ちで制作をさせていただきました。

――最後に、渡辺さんにとってスケールモデルとは?

【渡辺真郎】一番得意なことであり、私にとって、ひとつの生き方を示してくれた存在です。ただし、スケールモデルという分野だけを見ていると視野が狭くなってしまいがちですので、より幅広く、アートやモノづくりの世界を見て、自分自身の引き出しを多く持つことも大切にしたいと考えています。私は艦船模型制作記満載のブログ(HIGH-GEARedの模型と趣味の日常)を平日毎日更新しております。7年間にわたって制作してきた、数百隻の工程画像や完成写真を公開しておりますので、ぜひご覧ください。

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