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(更新: ORICON NEWS

世界一個人を大切にする会社、UUUM代表取締役CEO・鎌田和樹氏

今の時代は過渡期、そして展望

――変化が著しい今の時代をどう捉えていますか?
 やっぱり過渡期だと思います。副業禁止と言われていたものが、副業という概念自体が見直されてきているし、何が個人で何が企業なのか。僕らが言っているのは、一つはネットが出てきたこと、もう一つはスマホ、そして今は技術革新で個人がどんどん成功しやすくなっている時代になってきています。どんどん隠されていた数字というのが、例えば視聴率といっても良く分からないシステム。でもYouTubeの再生回数は誰が何しようといじることができない。そうなったときにどちらの方がインプレッション(広告表示・再生の回数・時間)はありますか? というような絶対的な答えが可視化され、そしてそれが増えてきている。従来の常識というのは見直しされていて、そういうなかで「メルカリ」(フリマアプリ)という新しいサービスが出てきたり「kurashiru」(料理動画レシピ)とかもそうです。ここ何年間で移行している期間だと思います。

 情報を受け取れるようになって皆、多面的に物事を考えるようになった。昔は「これが正解だ」と言えば正解でした。でも今は「それ正解ですかね?」「こういう観点で見たらそれは黒ですか?」「こうやってみたら黒ではなくてグレーだと思うんですけど」という見方もできるようになりました。それこそ芸人さんでも「この人面白いですか?」と思っていた人が急に売れたりとか、何が当たるか分からない感じなってきて、言い方を変えればそれはダイバーシティということにもなるだろうし、悪い言い方をすると一貫性というのが難しくなってきた。そういうことを全部含めたうえでの過渡期だと思います。

――個人がメディアになる時代にもなってきましたね。
 それこそエンタメ界で言ったら、アーティストさんがCDを売れたら入ってくる印税自体も変わってくると思いますよ。企業だからということではなくて個人でも近いと思うんです。そう考えると、継続していけていることは凄いことだと思うんです。出られていることが大切だと思います、いかに過渡期、転換期のなかで出られているかが大事だと。継続することは難しいと思いますし、継続できているというのはそれだけ応用力があると思うし、世間もそこは認めていると思います。

――こういう過渡期だからこそチャンスもあればリスクもあります。かじ取りは大変ですね。

UUUM代表取締役CEO・鎌田和樹氏(C)MusicVoice

UUUM代表取締役CEO・鎌田和樹氏(C)MusicVoice

 そうですね。でも会社を作った時からしたら、何もないところから始まっているので、まだましというか。もちろん、安定ということではないですし、不安定なままだと思いますけど、やっぱり先ほども話にありましたが、個人がメディアになる時代だ、というのが当たり前になってきた。当社は比較的、新しい事だったり、新しい考え方を踏襲した会社だと思うので、世の中がさっき言ったようなことがもっと進めば僕たちにとってはポジティブな未来なんじゃないかなと思います。景気が悪くなるということよりもより効率的となったときに、アメリカではネットのなかでのインフルエンサーマーケティングが大半なので、そういうのを見ていると次に日本に来るんだなと思います。

――UUUMとしての今後の展望はどうですか?
 このご時世ですが、「世界で一番個人をサポートする会社」でありたいと思っています。個人というのはクリエイターだけでなく社員もそうですし、それに付随してクライアントさんや視聴者も。僕らは経営理念に「セカイにコドモゴコロを」と掲げていますが、そういう気持ちの上で「もっとアソビナカマを」というのを経営戦略にしています。ですので、そういう人たちを増やしていくことです。僕らで言うと、クライアント数、クリエイター数、社員数、視聴者数、僕らにとっての仲間が増えれば増えるほど、必然的に事業は大きくなっていくと思っています。直近のことを言えば映像に対してもう少し勝負していきたいというのはあります。

――鎌田さんの、行動のベースとなっている、マインドは何ですか?
 責任感ですかね。もちろん自分が面白い事をやりたくて起業していますし、ただ、正直、金銭欲や物欲があるタイプでもないので、やっぱりやりかけて進めていったことに、色んな人に携わって頂いているので、それに対しての責任感です。社員も守らなくてはならない存在ですし、クリエイターもそうです。停滞することと後退することは難しくて、やっぱり進むことしかできない。僕は朝起きることが苦手な人間だったんですけど、そういうのも社長で寝坊はないじゃんみたいな。そういう一つひとつの責任感ですね。

――起業したことに関して、今はどのように感じていますか?
 僕の場合は、起業することしかやりたいことができない、次の人生がなかったので、学生の人達が起業を目指しているという方もいるけど、やっぱりタイミングだと思うんです。学生はやっぱり社会に出たことがない。社会経験はある程度必要だと思うんです。名刺の渡し方もそうですし、作法というのがビジネス界にもあるから、若さだけで突っ走れるというのはやっぱりそんなになくて、僕もこの会社の前の10年間の下積みがあって、その経験を活かしてというのができたので、あのタイミングで僕自身は起業して良かったんだと思いますね。ただ、全ての人に起業を促すのは僕自身としては考えるところですね。

――YouTubeが六本木ヒルズにYouTube Studioを設けるなどクリエイター育成に力を入れている背景などもあって、UUUMが時代の流れに乗っているようにもみえます。
 そんなことはないと思います。ただただがむしゃらです。乗れているなということを自分で振り返る余裕もないですし、結果的には右肩上がりに売上が上がっているのは、全体的な時代背景という見方もあるかもしれませんが、ただ変な話、波が立っていたとしても、パドリングを必死にやっているような感じです。例え波に乗っているとしても、僕らからすると日々そのなかでしっかり前を見てもがき苦しみながら進んでいますという感じです。

滲み出る人間性

 「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざがある。その時は辛くてもその経験はいずれ役に立つときがあるというものだ。鎌田氏の場合、会社員時代での10年間はそれに近いだろう。輝かしい成績の裏にはきっと様々な悔しさやそれをはねのけるだけの努力があったはずだ。人間は経験の数だけ優しくなれる、という話も聞くが「世界一個人をサポートする会社」という言葉にそれが見える。媒体相手のインタビュー。真剣に向き合う表情には時折、険しさもあった。しかし、ひとたび終えれば口調は柔らかく。帰り間際、30メートル先にたまたま見かけたクリエイターにわざわざ「調子はどう?」と声を掛ける。その表情からは親心がのぞいた。

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