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大河原邦男、モビルスーツの生みの親が語るザク誕生秘話「ガンダムへの反骨心」

『ガンダム』のモチーフは“侍”、ふくらはぎで表現した“色気”

  • モビルスーツの生みの親・大河原邦男 (C)oricon ME inc.

    モビルスーツの生みの親・大河原邦男 (C)oricon ME inc.

――先ほど“視聴者を錯覚させる”とおっしゃいましたが、その方法論はありますか?

大河原邦男どこかで見たことがあるようなディテールを入れるということです。

――具体的にはどのような部分でしょうか。

大河原邦男『ガンダム』の時は、それまでの円柱・角柱のロボットデザインから抜け出したい、そして本格的なSFをやりたい、ということを富野さんにメモとしてもらっていました。

――かの有名な「トミノメモ」(※初期シナリオ案やモビルスーツのコンセプトが記されたメモ)ですね。そこに記されていたコンセプトに、先ほど言った“ディテール”を組み込んだのでしょうか。

大河原邦男ガンダムのデザインですが、作画監督の安彦(良和)さんがまずロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に出てくるパワードスーツをモチーフにしたロボットを提案しました。私が考えたデザインは宇宙服を基本としたものでしたが、どちらも主役ロボット向きではなかった。そこで、安彦さん案をガンキャノンとし、私の方でガンダムの原案となる“侍モチーフ”のロボットを提案しました。それを安彦さんがクリンナップ(清書)したのが現在のガンダムです。

――先ほど、お決まりの円柱、角柱デザインから脱却したかったとの話がありました。その点、ガンダムの“ふくらはぎ”はそれまでのロボットデザインと一線を画しています。

大河原邦男私の場合、民族衣装やコスチューム、仏像などからヒントを得てロボットをデザインします。ガンダムも侍のチョンマゲや裃から着想を得ていますし、ふくらはぎに関しては工業的なデザインの範囲内で“色気”というものを表現しました。

――さまざまな人の案が盛り込まれてガンダムが生まれたんですね。

大河原邦男アニメなんて一人では作れないし、優秀な人を集めて良い作品ができるわけでもない。時代やタイミングも作用する。その点、富野さんと安彦さんは虫プロ出身。私と背景の中村光毅さんはタツノコといった具合に、いろんなエッセンスがガンダムには入った。こうした巡り合わせも含めて、ガンダムはラッキーな作品だったと言えるでしょうね。

『ガンダム』から感じられる“太平洋戦争の余韻”

  • 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」ストライクフリーダムガンダム(C) 創通・サンライズ

    「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」ストライクフリーダムガンダム(C) 創通・サンライズ

  • 「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」ストライクフリーダムガンダム(C) 創通・サンライズ

    「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」ストライクフリーダムガンダム(C) 創通・サンライズ

――『機動戦士ガンダム』の魅力のひとつとして、ジオン軍の魅力的なモビルスーツがあげられます。

大河原邦男あの頃は、メインのロボットさえ決まればスポンサーは何も言わなかった。それに“敵を売る・売れる”という時代でもないんですね。富野さんからは「モノアイだけは守ってくれ」という指示はありましたが、基本的にジオン軍は自由にやらせてもらいました。

――ザクは自分の思い通りのデザインができたと。

大河原邦男当たり前の話ですが、主役ロボットはスポンサーや会社の意向だったり、いろんな人の意見が入ってくるので、デザイナーとしては大変な面も多かった(笑)。だから、「もっとカッコイイものを作ってやる」っていう反骨精神から生まれたのがザクなんです。

――よく、ジオン軍のモチーフはドイツ軍と言われていますが。

大河原邦男僕は戦争が終わって2年後に生まれていて、太平洋戦争の余韻というのを感じている世代なんですね。だから、連邦軍は連合軍、ジオン軍はドイツ軍といったイメージに自然となるんです。それに、安彦さんが描いたジオン軍のキャラもドイツ軍ぽかった。やはり、富野さんや安彦さんも同年代ですから、戦争の余韻というものが作品に色濃く出るんだと思います。それは、当時のクリエイターみんなに当てはまることだと思います。

デザイナーが“死ぬ”のは同じ作品を作り続けた時

――これだけ多くの作品に携わってきたわけですが、大河原さんにとってデザインで“表現したいもの”は何でしょうか。

大河原邦男私はこれまで自分のことを「アーティスト」ではなく「職人」だと言ってきました。それは、自分の“表現したいもの”よりも、監督が求めるものを優先するからです。

――だからこそ、どんな監督の要望にも応えることができたわけですね。では、デザイナーとして注意している点はありますか?

大河原邦男デザイナーが死ぬのは、同じ作品を作り続けてきた時だと思っています。もし、あの頃ガンダムのデザイナーとしてその場に留まっていたら、“デザイナーとして消費”されてしまったと思います。同じ作品を3作も4作も続ければ、必ずどこかで挫折してしまいますから。私は幸いにして、これまで多くの作品に関わることができました。だから、別の作品を組み合わせ、また新たな発想が生まれる好循環にもなったわけです。今回、開催する『ラフ∞絵』展では、そうした“着想の変遷”を辿ってもらえたら嬉しいです。
【展覧会名: ラフ∞絵】
開催期間: 2019年4月2日(火)~4月16日(火)
開場時間: 11:00〜20:00(入館最終案内19:30まで、4月2日は14:00開場)
開催場所: 3331 Arts Chiyoda 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14
休 館 日: 無休

入場料金: 一般券(一般2,000円/大学生1,500円/高校生1,000円)
プレミアムチケット 3,000円
入場券購入者へは、会場で「特典」をお渡しします。
一般券はモノクロチケット4種のうち1種。プレミアムチケットはカラーチケット4種セットです。
中学生以下および障がい者手帳をお持ちの方は入場無料です。
介護が必要な場合、介護者1人まで無料です。
各種専門学校生は「大学生」のチケットをご購入ください。

お問い合わせ: 公式サイト 4rough.com/ 公式Twitter @4rough_official
TEL 03-3253-8558(「ラフ∞絵」実行委員会事務局)

『ラフ∞絵』展のプレミアムチケット

『ラフ∞絵』展のプレミアムチケット

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