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マニアックすぎ?「フォントかるた」誕生のワケ、根底には“書体”への深い愛

 お正月の風物詩であるカルタだが、その中でも変り種の「フォントかるた」が昨年から注目を浴びている。通常のカルタとは違い、取り札に書かれている文章は全部同じで、フォント(書体)だけが異なっている。フォント名を読み上げて、そのフォントの札を取るという遊び方ができるのだ。昭和の時代によく使われていた写植文字からビジネスシーンでよく使われるフォントまで幅広く網羅された、この「フォントかるた」はどのようにして生まれたのか。

「狂気…www」という感想も、かるたはデザイナー仲間の新年会で爆誕

 「フォントかるた」制作チームは、フリーランスのグラフィックデザイナーである4人の女性で構成。せきねめぐみさんは企画・デザイン、伊達千代さんは書体解説・フォント選定、星わにこさんはWebサイト・店舗販売、横田良子さんは印刷仕様・ゲーム・Amazonと、それぞれ役割分担をして活動している。「フォントかるた」は、そんな彼女たちの”ちょっとした“遊び心”から生まれたものだった。

――なぜフォントかるたを作ろうと思ったのですか? 商品化までの経緯は?
伊達さん2017年のお正月にデザイナー仲間で新年会をする際に、せきねが「デザイナーならいつも使っているフォントの違いがわかるはず! マニアックで笑えるし、きっと楽しいだろう」と考え、自宅のプリンターでフォントかるたを作って持ってきたのが始まりでした。そのときの様子を伊達がツイッターに投稿したところ、たくさんの反響があったので「ちゃんと作ったら、ほしい人がいるかもしれない」と思ったんです。そのときは、作ったとしてもどこでどうやって売ったらいいのかまったくわからない状態でしたが、とにかく「商品化しよう」「印刷しよう」と。箱やかるた札などの特殊な印刷にも詳しい横田がフォントかるたを作れる会社を手配し、仕様を決めて500部を作りました。イベントやショップなどで売って販売先を徐々に増やし、Amazonなどの通販体制も整え、増刷を重ねて現在に至ります。

――発売当初はSNSで「狂気…」「無理ゲー」などと言われながらも、一般の人々の間でも盛り上がりを見せていました。反響を受けていかがですか?
伊達さん私たちが作ったものに驚いたり、笑ってくださったことが嬉しいです。一般の方には「フォントってこんなに種類があるの?」という驚きがあったようです。今日本語の書体は2000書体以上。フォントかるたの48書体は和文書体のごく一部ですが、一般の方にもたくさんの書体があることを知ってもらえたこと、そしてそれらのフォントが持つ表現力の違いに気づいてもらえたことが嬉しかったです。購入した方からは「無理ゲーwww」「やってみたけどマニアックすぎるwww」「絶対無理でしょwww」とよく草が生えた感想をいただきますが(笑)、「楽しいだけでなく、解説が勉強になる」「推しフォントができた」というご意見もいただけたことがうれしかったですね。フォントかるたを通じて、書体のユニークで豊かな世界を共有できたような気がします。

「フォントは声優。フォント選びは、文章に合った声優を選ぶような気持ち」

――通常版では48種のフォントが選ばれていますが、その選定基準は?
伊達さん「ゴシック体、明朝体などの書体の分類を網羅すること」「街やテレビなどでよく見かける身近な書体を取り入れること」などいくつかの基準があり、複合的に検討して選んでいます。ただゲームを楽しめればよい、というのではなく、フォントを作る方々へのリスペクトも忘れないよう整備したつもりです。

――フォントかるたでは、それぞれの書体の特徴や歴史、作った人のことについて簡単に解説されています。その解説をつけようと思った理由は?
伊達さん1つはフォント名だけで札を取れない人のために、解説の特徴から推理して取ることができるようにと。2つ目は、フォントに興味を持ってくれた人に多少の知識を得てもらって、フォントの見方や楽しみ方が多角的になってくれたらいいな、という思いからです。

――フォントかるたのサイトなどを拝見すると、フォントに対する愛を感じます。フォントの魅力とは、どのようなところにあるのでしょうか?
伊達さん同じ文章でも、違うフォントで組むと印象が大きく変化します。たとえるならフォントは声優さんのようなもので、デザイナーはその文章に適した声優さんを選ぶような気持ちでフォントを選びます。面白いのは、ひとつの声だけではドラマが作れないことで、さまざまな声色のフォントを取り揃えて場面に応じて使い分ける必要があること。そして同じフォントなら同じ声のはずなのに、文章が変わるとまた違って感じられることもあります。それがフォントの面白いところです。そうやって日々フォントを眺めていると、その書体を作った人のことや細部の工夫にも目がいくようになり、愛はどんどん深まりますよ(笑)。

「小・中学生向けに教養としてフォントを学べる“教育用かるた”も検討」

――基本のかるたとは別に、ゴシック体、明朝体をもっとより楽しんでいただける拡張版も作っていらっしゃいますね。拡張版を作った経緯やポイントは?
伊達さん日本語のフォントは2000種類以上です。通常版に収録しきれなかった、いいフォントがまだまだたくさんあり、それらを紹介したいという気持ちがありました。また、通常版をお持ちの方が何度か遊んでいるうちに、すっかり慣れて難易度が下がったという声が聞こえてきたため、遊ぶ人によって難易度をコントロールできる拡張パックが必要だと考えました。拡張パック第一弾の「白」と「黒」は明朝体のみ、第二弾の「風」と「雷」はゴシック体のみで構成されています。いずれも同一の分類になっていることで、一般の方には難易度が爆上がりして”無理ゲー感”が増すことが面白さにつながると思います。

――今後はどういうものを作りたいですか?
伊達さんご要望もよくいただくのですが、「欧文版フォントかるた」は実現させたいものの1つです。欧文フォントには和文とは全く違う成り立ちや特徴があり、面白いと思います。また小・中学生向けに、フォントの分類を教養として学べるような教育用かるたも検討しています。現在は使われていない写植の書体や、新たに生まれ続けているフォントも何かの形で紹介していければと思います。

 今後「欧文版〜」も発売されれば、さらにマニアックな世界が広がりそうだ。しかし、マニアックな層だけでなく、一般の人たちからのニーズが増えれば、昔ながらのいろはがるたや百人一首などと並んで「フォントかるた」も正月の風物詩として定着するかも? 今後の動向に注目したい。

(文:水野幸則)

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