アニメ&ゲーム カテゴリ
(更新: ORICON NEWS

ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

この機体知ってる? 幻の白いガンダム『アムロの遺産』を作ったワケ

ガンダム30周年記念ショートフィルム『リング・オブ・ガンダム』に登場したガンダム/制作:エグチヒロカズ(C)創通・サンライズ

ガンダム30周年記念ショートフィルム『リング・オブ・ガンダム』に登場したガンダム/制作:エグチヒロカズ(C)創通・サンライズ

 『機動戦士ガンダム』シリーズの“生みの親”富野由悠季監督は、これまでに多くのガンダム作品を手掛けてきた。どの作品も多くのファンを持ち、とりわけ主役機の人気は絶大だ。一方で、実はその存在があまり認知されていない機体がある。そこで今回、ガンダム30周年記念時に制作されたショートフィルム『リング・オブ・ガンダム』に登場する“純白のガンダム”を立体化したエグチヒロカズさんを取材。制作時の想いや富野ガンダムの魅力について聞いた。

知名度の低い『リング・オブ・ガンダム』を知ってほしかった

――今回、全身白ボディのガンダム『アムロの遺産』を制作された理由は?

【エグチヒロカズ】富野由悠季監督が手掛けたガンダム30周年記念ショートフィルム『リング・オブ・ガンダム』に登場したガンダムなのに、一向にキット化される雰囲気が感じられなかった事と(苦笑)、富野ガンダムは作らねば!という謎の使命感です(笑)。
――作品名はありますか?

【エグチヒロカズ】作品内で呼称されているそのままの『アムロの遺産』です。この機体はアムロが搭乗していた「RX-78-2」と同一機という設定らしいです。

――制作に使用したキットを教えてください。

【エグチヒロカズ】MG RX-78-3 G3ガンダム ver.2.0です。他にも候補はあったのですが、手足のバランスが映像のイメージに近かったのと、成形色がグレー中心なので完成形を想像し易いかなと思い、敢えてG3ガンダムをチョイスしました。

――白いガンダムが登場するショートフィルム『リング・オブ・ガンダム』の感想は?

【エグチヒロカズ】ゆうに1クール分はあるであろうストーリーを僅か5分に纏めたような作品なので、とにかく超速超圧縮で初見では何がなんだかサッパリでしたが(笑)、何故か面白く何度も見てしまう不思議な作品です。『機動戦士ガンダム30周年ドキュメンタリーメモリアルボックス』に付属している設定資料に目を通すと、背景やストーリーラインが分かるのでより楽しめると思います。

――ガンダムの生みの親である富野監督は、ファーストガンダムの構想の段階で当初真っ白のガンダムを想定していたとも聞きます。白いガンダムへのイメージは?

【エグチヒロカズ】『リング・オブ・ガンダム』がフルCG作品という事もあり、映像で見る『アムロの遺産』は少し金属っぽいテクスチャだったのですが、「立体として表現するなら白一色だと陰影が引き立って良いかな」と思いこのカラーにしました。RX-78-1の設定にも出てきますが、真っ白なガンダムはプロトタイプな感じがしてカッコいいなと感じます。

――真っ白な主役機といえば、富野監督作品の『重戦機エルガイム』が有名です。そのイメージや感想があれば教えてください。

【エグチヒロカズ】つい先日、35年ぶりくらいに『エルガイム』を見たのですが、ヘビーメタル(登場するロボットの呼称)のデザインが全く古びてない事に驚きました。エルガイムMk-IIは初見から今なお最も好きなメカデザインなのですが、エルガイムも今改めて見ると凄くキレイなデザインで、今度発売になるHI-METAL Rのエルガイムを予約しちゃいました(笑)。

――本作で表現したかったものは?

【エグチヒロカズ】富野ガンダム作品なのに『リング・オブ・ガンダム』の知名度はおそらく圧倒的に低いので(苦笑)、「こういうガンダムが出てる作品があるんだぞ」と多少なりとも知名度アップに寄与できればという思い、そしてコンセプトデザインをされたイラストレーター・あきまん(安田朗)さんの描くイラストのような筋肉質な体型をメカデザイン的に立体に落とし込む、という2つの狙いがありました。

富野作品の魅力は、テンポの良さによる中毒性と、見た際の年齢で感想が変わること

  • RX-78-2最終決戦仕様『アムロのガンダム』/制作:エグチヒロカズ(C)創通・サンライズ

    RX-78-2最終決戦仕様『アムロのガンダム』/制作:エグチヒロカズ(C)創通・サンライズ

――エグチさんのもう一つの代表作、RX-78-2最終決戦仕様『アムロのガンダム』についてお聞きします。こちらは『アムロの遺産』の連作にあたるそうですね。

【エグチヒロカズ】同じMG ver.2.0スキームで、コツコツとした作業を積み上げて情報量をコントロールしながら『アムロの遺産』を作った事で、「今なら自分が想い描いていたTVや映画で見たガンダムを作る事ができるのでは?」と思ったのが制作の理由です。
――制作の際にこだわった部分は?

【エグチヒロカズ】アニメで見たカッコいいガンダム、いわゆる“安彦ガンダム”は末端へとパースが効いた動きのある画になっています。ただ画のままに立体化すると形状として破綻をきたしてしまうため、安彦ガンダムの印象をいかにして整合性をもたせて立体に落とし込むかに注力しました。昨今はver.Kaやマスターアーカイブ版、1/1ガンダムと、いろんなアレンジがなされたRX-78-2があるので、それらの要素も積極的に取り入れて、単なるアナクロニズムに陥らないよう、TVや映画で見た印象のままアレンジ的にもアップデートしたいなと思い制作しました。

――確かに、顔の印象が安彦ガンダムに近いですね。

【エグチヒロカズ】頭部は特にこだわりました。MG ver.2.0は割とアニメ寄りにまとめられてる方なので、安彦ガンダムの画を見ながらマスクの形状やヘルメットのバランスを調整してまとめました。『機動戦士ガンダム』第1話のガンダムが立ち上がった時、劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』のテキサスコロニーでシャアの乗ったゲルググと対峙している時、あと安彦良和さんの様々な画稿をイメージソースとしています。

――エグチさんが“執着している”という富野ガンダムの魅力とは?

【エグチヒロカズ】映像だけでなく小説も含めて幼少時からずっと触れてきた作品群なので、人生や価値観と切り離せないものになっていまして(苦笑)、ひと口で魅力を語るのが難しいです。敢えて言うならテンポの良さに起因する中毒性と、自身の年齢や社会的な立場の変化によって違った見方ができるので、何度見たり読んだりしても飽きがこないところです。

――富野ガンダムで次に作りたいガンダムは?

【エグチヒロカズ】今はMGクロスボーンガンダムX-1改、X-2改、X-3の3体同時制作に取り掛かっています。出自が漫画であっても『機動戦士クロスボーンガンダム』は立派な富野ガンダムです。でもMGでG-セルフが発売されたら何を差し置いてでも制作にかかりたいと思っています。一番好きなガンダムですので。『Gのレコンギスタ』劇場版5部作によってG-セルフの理想形をイメージできる頃までには、MGキット化されて欲しいなと思います。

――エグチさんにとってガンプラとは?

【エグチヒロカズ】ガンプラに限らずプラモデル全般に対してですが「作品に登場したモノを立体物として手元に置きたい」という衝動を実現するための最適な素材です。最近では再現度の高い完成品があり、それらで満たされる部分もあるのですが、富野ガンダムに対しては最大公約数より自分の想い描くイメージを大切にしたいので、プラモデルであれば自分で手を動かして突き詰める事ができます。とはいえ、できれば大改造やスクラッチなどせず、少ない手間で理想形に辿り着けると嬉しいですね(笑)。ガンプラに対しては、ラインナップを充実させるような展開や、あまり大袈裟にアレンジされてないプロダクツを出してもらいたいな、と思っています。

(C)創通・サンライズ

あなたにおすすめの記事

 を検索