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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

ジオニストはなぜ、ザクを“輝かせたい”と思うのか?「泥臭く主人公達に立ち向かう姿に哀愁を感じる」

2017年『第20回全日本オラザク選手権』ジオラマ部門で金賞を獲得したひろたん氏(C)創通・サンライズ

2017年『第20回全日本オラザク選手権』ジオラマ部門で金賞を獲得したひろたん氏(C)創通・サンライズ

 トップモデラーが創造するガンプラジオラマには、その1枚絵の中に思わぬストーリーが隠されている。今回紹介するモデラー・ひろたん(@hirotan0712)氏は、“やられ役”のザクを“畏怖の対象”として表現し『第20回全日本オラザク選手権』のジオラマ部門で金賞を獲得。本作を制作するに至った経緯や、ザクがモビルスーツの中で“1番カッコイイ”と語る理由とは。

表現したかったのは、連邦軍兵士から見た「“巨人”ザクの恐怖」

  • 2018年『GBWC』ファイナル「金色の機体に愛を込めて」百式

    2018年『GBWC』ファイナル「金色の機体に愛を込めて」百式

――ガンダムシリーズの中で一番好きな作品を教えてください。

【ひろたん】どの作品も思い入れがあるのですが、『0080ポケットの中の戦争』も好きだし、『Zガンダム』『逆襲のシャア』や『ターンエーガンダム』も捨てがたいですね…。青春時代にドハマリした『Zガンダム』にします(笑)!

――好きなキャラは?

【ひろたん】好きなキャラはゼータに登場するクワトロ・バジーナ大尉です。戦闘シーンだけではなく、出撃前後にボソッと名言を残す、あのニヒルさ。「人の心の中に踏み込むには、それ相応の資格がいる」「いくつになっても、そういう事に気付かずに、人を傷付けるものさ」といった言葉は、仕事をするうえでの教訓として、常に気をつけるようにしています。

――では、モビルスーツ(MS)に関してはいかがですか?

【ひろたん】ザクはガンダムシリーズの中で“1番カッコイイ機体”じゃないかと思うくらい、素晴らしいMSだと思います。量産機は、プロトタイプの技術的な問題点を解決し、一番精度が高い状態となってはじめて量産化されるもので、言わば“洗練”された完成度の高い機体だと解釈しています。それに、“やられ役”を押し付けられてる量産型ザクが、泥臭く主人公達に立ち向かっていく姿に哀愁を感じます。
  • 夕陽で“映える”ザク

    夕陽で“映える”ザク

  • 作り込まれた背景

    作り込まれた背景

  • 見えない場所にも連邦軍の兵士を配置

    見えない場所にも連邦軍の兵士を配置

――本作からは、普段はやられ役のザクを“畏怖”する連邦兵士の心情を感じます。このジオラマを制作した経緯は何でしょうか。

【ひろたん】この作品は、第20回オラザク選手権大会(2017年)「ジオラマ部門」で金賞を頂いた『一つ目の巨人』です。生身の連邦軍兵士にとって、約18mのMSがいかに「脅威の存在」であったかのか。連邦軍目線の“ザクの威圧感”を表現することが1つのテーマでした。これも一種の「ザク愛」ですかね(笑)。

――では、こだわった部分は「畏怖の対象」としての存在感でしょうか。

【ひろたん】一兵士から見た時、相手が量産機1機でも絶望を感じるほどの恐怖だったと思います。なので、襲い掛かってくるザクの恐怖感が伝わるよう、色々と工夫を凝らしてみました。

――その工夫というのは?

【ひろたん】実は、この作品は“遠近法”を駆使したベース(建物)と機体を使用しています。ザクが手を伸ばして襲いかかってくるシーンを作るために、ボディーそのものを歪ませて、ポージング重視の制作を心がけました。また、左右アシンメトリーで、遠位になるにしたがって少しずつ大きく作成しています。でも、どの角度からも見てほしかったので、余り不自然な大きさにならないよう、微調整し違和感を取り除くようにしました。

――なるほど、廃墟ビルやモビルスーツの“巨大さ”表現するため、様々な技法が使われているんですね。

【ひろたん】はい。他にも、ベースとなる建物や道路(坂道)も奥に行くにしたがって狭く、配置物は小さく作り、遠近感が強調されるように制作しています。

■嫁の目を盗みながら、こっそり模型部屋に行くのが毎日の日課

  • 素組み(左)との比較

    素組み(左)との比較

――先日、『第22回全日本オラザク選手権』の審査結果発表が「月刊ホビージャパン」に掲載されSNSでも話題となりました。モデラーにとって『オラザク選手権』の存在とは?

【ひろたん】私は1つの作品を完成させるのにかなり時間がかかってしまいますが、手をかけたぶん、愛情を込めて作っているつもりです。私も含め、その唯一無二の作品が完成した時、「自信作を誰かに見てもらいたい!」と思うのではないでしょうか。そのお披露目の場が『オラザク選手権』だと考えています。

――モデラーたちにとって、1つの“目標”なんですね。

【ひろたん】その通りですね。ただ、『オラザク選手権』にどんなモチベーションを見出すかは人それぞれです。「大賞が欲しい!」「入賞したい!」という方もいれば、「せっかく作ったのでお祭りに参加します!」という方もいます。そこはもうガンプラと一緒で「自由」でいいと思います。私の場合、やはり賞を頂いたことで、次作のモチベーションUPにはなりました。もちろん、プレッシャーにもなりますが(苦笑)。

――ガンプラのジオラマを制作する際、意識している点は何でしょうか。

【ひろたん】ジオラマは一種の「1コマ漫画」だと思っています。とはいえ、漫画のようにセリフは入れられませんから、MSと背景のみで情景を説明し、見ている相手を楽しませたり、感動させなければいけません。そこは強く意識しています。でも、1コマ漫画って難しいんですよね…(苦笑)。小学4年の時、なぜか先生に描かされていた記憶があります。まさかその経験が今に結びつくとは思いませんでしたが、当時の先生に感謝です。
  • 第22回「オラザク選手権大会」ビルドダイバーズ部門金賞 カプル

    第22回「オラザク選手権大会」ビルドダイバーズ部門金賞:ターンKカプル

  • ひろたん氏が楽しんで作った「カプール」

    このカプルはひろたん氏が楽しんで作った作品

――では、ジオラマ制作でカタルシスを感じる瞬間というのは?
 
【ひろたん】カタルシスを感じる瞬間は、ジオラマのベース完成後に、機体や兵士を並べた瞬間ですね。もう、子どもの頃に帰ったように、そのジオラマの風景を頭の中で映像化し、ブンドド(フィギュアやプラモを戦わせて遊ぶこと)が始まってしまいます(笑)。

――最後に、ひろたんさんにとってガンプラとは?

【ひろたん】私にとってのガンプラは“日常の一部”です。なんだかんだ言って玩具なんだし、好きなものを作っているんだから「楽しまなくちゃ!」というスタンスです。もう早く作りたくて、作りたくて、1日の限られた時間の中でいかに模型時間を捻出しようか悩んでばかりいます。そして、嫁の目を盗みながら、こっそり模型部屋に行くのが毎日の日課です(笑)。

(C)創通・サンライズ

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