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“イクメン”は役目を終えた? 育児に「参加する」という思考は過去のものに?
“育児参加”の意識を一気に浸透させた、厚生労働大臣による“イクメン”プロジェクト
“子育ては女性がするもの”という意識が強かった昭和の時代から、男性は育児の“当事者”という意識が低いのが普通であった。参加するにしても”手伝う”、“やってあげている”という当事者意識。それを厚生労働省が『イクメン・プロジェクト』と打ち出し、積極的に”参加”させるための施策を打ち出したのだった。
この施策は、働く女性が増え、社会での生き方が変化している中、女性の出産後の離職率を下げる意味でも一役買った。同省の調査で、共働き世帯は1980年で600万世帯ほどだったのが、右肩上がりで増え続け、2014年には1,114万世帯にまで増加。出産後の女性の育児休暇の取得や職場復帰自体も、もう何年も前から当たり前となっている。厚生労働省のデータで女性の育休取得の割合は1996年で49.1%だったのが、次第に増え、2008年に90.6%を記録以降、80%台を推移していることからも、女性は“子どもができたら仕事を辞める”が当たり前ではない時代になっていることがわかる。
りゅうちぇるなど芸能人も参加ではなく“当たり前に育児を行う”に “イクメン”は次の段階へ
今年子どもが生まれたりゅうちぇるは、イクメンと呼ばれることについて、「僕自身まだ何がイクメンなのかよく分かってない」と発言。さらに、「ぺこりんがママだからできるのは、おっぱいをあげることで、それ以外のオムツを替えることとかは全然僕でもできます」と続け、女性にしかできなことはあれど、育てることは夫婦2人でできることを強調した。
また、5児の父親であり、これまでに2度の育児休暇を取るなど元祖イクメンとして育児に積極的に参加しているタレント・つるの剛士はイクメンと呼ばれることを「大嫌い」と発言(昨年放送の『おかべろ』/関西テレビにて)。さらに「イクメンになりたくて育児しているわけじゃない。父親として当たり前」としている。
つるのは元祖イクメンとして知られるが、彼は“父親”として当たり前のことをやっただけというスタンス。2017年11月27日に「1日家族ピクニック大使」に就任したイベントでは、「イクメンがなくなればいいかな、と。(イクメンが)普通になればいいですね」とコメント。イクメンはもはや“当然”のものであると話している。
育児は夫婦が2人でするものという“意識”は根付き、地盤が整った。“育児参加”を促すための”イクメン・プロジェクト“は、すでに成功したといえるのではないだろうか。
あくまで“参加”を促す目的だったはずの“イクメン”が、父親を追い詰めている?
“働き方改革”も世の中では叫ばれているが、長時間拘束や疲労度の高い仕事を余儀なくされている男性もまだまだ多い。そんな男性は「頑張ってもちょっとしかできない」と仕事と育児の間で、葛藤を抱えているはずだろう。あくまで“参加”を促すためだった「イクメン」という言葉が独り歩きし、“参加の度合い”にまで発展。そんな状況が父親たちの肩身を狭くし、慣れない育児のストレスに追い込まれ、孤立してしまうパパたちも増えているという。
そんな悩みを誰にも相談できず ”男性の産後うつ”を発症する人もおり、現在では楽しく育児に参加していくことを提案するパパによるパパのための集まり”スーパーダディ協会(SDA)”というNPO法人も存在。『サンデー・ジャポン』などを手がけるTBSテレビ制作プロデューサーの高橋一晃氏 が代表となり、20代〜50代まで約70人のメンバーが在籍。高橋氏は「僕は”子育ては趣味、家事は特技”とあえて言っています(笑)。妻や子供が寝た後に、ヘッドフォンで好きな音楽をかけてワインやビールを飲みながら洗濯物を畳んだり、家族全員分の靴を磨いたり」と発言。あくまで”楽しみながら”育児に取り組むことの大切さを訴えている。
「イクメン=良い父」は似て非なるもの。子育ては各夫婦の間で意見をすり合わせて、家族全員にとってベストな育児法を考えるのが最適解なのではないだろうか。男性も育児をすることが普通ではなかったからこそ”イクメン”という言葉は生まれた。男性の育児参加を促すための功績は大きいが、「父親も育児をすることができる」という意識が浸透した今、 “イクメン”は、すでに役目を終えているのかもしれない。