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「東西アイドル戦線」異状あり “本格派”求められる関西アイドルの音楽事情

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 現在、日本には地下アイドルを含めアイドルグループの数は4000組以上とも言われる。“会いに行けるアイドル”のコンセプトでブレイクしたAKB48グループを筆頭に、乃木坂46、欅坂46、ももいろクローバーZなどが鎬を削りあっている。また、昨今は“非接触商法”の『在宅アイドル』が話題になるなど、ファンがアイドルに求める“偶像性”の変化も顕著。さらに、ここ数年は西日本と東日本で“アイドルの音楽性”について明確な違いが表れているという。そこで、元週刊誌の芸能記者でアイドルのマネジメントに携わる豊沢朱門氏に、“東西アイドル戦線”の変化について聞いた。

“量産型アイドル”に拒否反応? 関西ファンが持つ“アーティスト志向”へのプライド

 関西アイドルと関東アイドルとの明確な違いについて、「関東の場合、パフォーマンス重視で音楽性をあまり意識していないプロデューサーが多い」と語る豊沢氏。続けて「一方、関西ではサウンドプロデューサーをつけて本格志向の運営をするユニットが目立ちます」と指摘する。そのため、アイドルソングの定番であるケチャ(楽曲に合わせて踊るヲタ芸)やMIX(楽曲中に叫ぶ魔法の言葉)を意識しない楽曲も増えているのだという。

 その要因について「関西には元々バンド系サウンドの素地があるため」と解説。今、メジャーやインディーズの枠を問わず、関西方面から飛躍するバンドが増えているが、特に2010年代から活動を始めたバンドグループが「関西イチゼロ世代」と呼ばれ人気を博している。

 さらに、いま関西アイドルを仕掛けているプロデューサーたちはT-BOLANといった90年代のビーイングブームで育った30代後半から40代が主流で、バンド活動でメジャーを経験してきた人たちがサウンドプロデューサーとして活躍している。彼らには音楽性への強いこだわりがあるのだという。

 また、関西地方は長らく“アイドル不毛の地”とも呼ばれてきた。それも、アイドルが本格志向に走る理由の1つだと豊沢氏は強調する。

 「関西は、京都を中心に“アーティスト”に対するプライドとこだわりがある。そのため、関東で乱立する“量産型アイドル”に対して拒否反応を示す人が多かった。そんな中で、音楽性を重視した本格派の路線が確立されたことで、『これなら応援したい』と、アイドルファンだけでなく、音楽ファンやフェス好きの一般層を取り込み、アイドル文化への理解が進んだようです」

「応援するけど金は出さない」関西気質を変えた“本格派”の魅力

 では、“本格派”とは具体的にはどんなものなのか。「楽曲も王道のアイドルソングから外れたバンドサウンドだったり、生バンドを使ったライブが人気です。それは、本物の生サウンドの方が“関西ファンにウケる”、という実績に基づいている点も重要です」と同氏。関東でも最近は生バンド志向のアイドルが増えているが、生サウンドが目的であるケースはそれほどなく、あくまで派手さや見栄え、そして“顕示欲”がメイン。このように、東西で音楽性へのアプローチは大きく異なっていることが見て取れる。

 ただし、“本格志向”の関西勢アイドルが売れるかどうかは全く別の話だと豊沢氏はいう。「大阪、名古屋、福岡など西日本は“派手”なものが好き。名古屋のド派手な結婚式文化が良い例ですよね。その点で言えば見栄えのする生バンドと共演するアイドルはウケが良い。けれど、応援するけど“金は出さない”という気質もある。AKB総選挙でNMBが伸び悩む理由の一つはそこにもあると思います」と、関西アイドルの難しい現状を指摘する。

 「関東の場合、タレント数も多いから、とりあえずやってみて売れたらラッキーというプロデューサーもいる。そにれ比べ、限られた予算の中で、方向性をギリギリまで考え抜いてやっているのが関西なんです」(豊沢氏)

 そんな状況で着実に成果をあげているグループもあると言う。豊沢氏は「NMB48を除くと、関西アイドルの人気上位はPassCode、大阪☆春夏秋冬、KissBeeWEST」と名前をあげる。中でもKissBeeWESTは、清楚な見た目からは想像できないライブパフォーマンスで圧倒的な支持を獲得。4thシングルがオリコンデイリーランキングで2位。関西アイドルリーグの初代チャンピンオンに輝き、さらにサマソニ出演や上海公演を実施するなど着実にステップアップを重ねている。

一方、関西で“王道アイドル路線”が受け入れられる逆転現象も?

 前述のように、今の関西アイドルに求められているのは、本格派のサウンドや硬派な世界観、そして高いパフォーマンス力。しかし、「ヤンチャン学園KANSAIのようにパフォーマンス力はまだまだでも、関西にアイドル文化が根付いてきたからか、いわゆる普通の“王道アイドル路線”も受け入れられるという逆転現象も起きています」と豊沢氏は語る。

 とは言え、関西アイドルの人気上位はどれも本格志向のグループばかり。実力がないものは這い上がれないというシビアで分かりやすい構図になっているようだ。事実、前出のPassCode、大阪☆春夏秋冬、KissBeeWESTはすでに関東進出を果たしている。さらに、PassCodeのMVはYouTubeで126万再生するなど、確かな実力を持っているのだ。

 「どのユニットも独自路線を目指すなか、KissBeeWESTはロックとアイドルの調和を目指しているという点で関西アイドルの“本格志向”を体現する存在。“アイドルであること”を保ちつつ、関西アイドルシーンの中で最前線を走っているのは凄いと思います」(豊沢氏)

 乱立するアイドルシーンの中で、個性を出さんとアイデアを絞る東西のアイドルたち。そして、“アイドル不毛の地”という逆境の中でもがく関西勢アイドル。前を走るNMB48を追い抜くような、個性派関西アイドルの出現に期待したい。

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