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感情移入を拒否? 新しいオーディション番組の形を確立させた『ラストアイドル』

  • 1stシングル「バンドワゴン」リリースイベントを開催したラストアイドル(左から)古賀哉子、長月翠、大石夏摘、阿部菜々実、吉崎綾、安田愛里、鈴木遥夏 (C)ORICON NewS inc.

    1stシングル「バンドワゴン」リリースイベントを開催したラストアイドル(左から)古賀哉子、長月翠、大石夏摘、阿部菜々実、吉崎綾、安田愛里、鈴木遥夏 (C)ORICON NewS inc.

 テレビ朝日系で毎週土曜の深夜0時5分から放送されている『ラストアイドル』が話題になっている。タイトルにあるようにアイドルのオーディション番組で、総合プロデュースは現代グループアイドルの創始者ともいうべき秋元康氏。となれば、一連の “感情移入型”のアイドル育成番組かと思いきや、「プロアマ問わず兼任可」「バトルに負けたら即メンバー解雇」等々、「アイドル中のアイドル7人を選び抜くため、プロが結集した」というスタンスの番組なのだ。

挑戦者が好きな立ち位置の暫定メンバーを指名 前代未聞のサバイバルバトル

 『ラストアイドル』は番組の放送開始時、8月13日には暫定メンバー7名が一応決定しており、さらにデビュー曲の曲名は「バンドワゴン」、ミュージックビデオは堤幸彦監督、ジャケット写真は蜷川実花氏が撮影、テレビ朝日系列での冠レギュラー番組、週刊誌の表紙などもすでに決定「済」だ。

 番組スタートの翌週から、オーディションで選ばれた挑戦者が、暫定メンバーの中から指定したひとりと歌唱パフォーマンスを競っていく。暫定メンバーが敗北した場合は即解雇、翌週からいなくなり、挑戦者は去った暫定メンバーの“立ち位置”をそのまま引き継ぎ、新たな暫定メンバーとなる。そんな超過酷なサバイバルバトルをくぐり抜け、ついに今月の17日に最終メンバーが決定した。そして、これも予定通りに12月20日、ラストアイドルはめでたくメジャーデビューを飾ったのだ。

視聴者の感情移入を“拒否”? メンバーの友情やアイドルの成長物語は一切なし

 番組の内容としては、敗れ去ったメンバーを残ったメンバーが涙で送る、新メンバーとの間に感情的なしこり生じる…などの定番の盛り上がり場面があるかと思えば、確かに残ったメンバーは号泣することはするのだが、極度の緊張感からの解放や(明日は我が身…)的な涙とも映る。一方、笑顔の新メンバーとは困惑しながらも、すぐさま「よろしくお願いします!」と挨拶を交わすあたりは、さすが“プロのアイドル”を目指しているだけはあると言いたくなるようなメンタルの強さも見せる。

 ただ、敗北した暫定メンバーや挑戦者も、別に始動するセカンドユニットへの参加の可能性が残されており、実際すでに4つのグループが結成されている。となれば、1997年に『ASAYAN』(テレビ東京系)で行なわれた「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」で落選したメンバー5人によるモーニング娘。を思い起こす人も多いだろうが、当時は視聴者が敗者復活という“物語”に感情移入し、後の大ブレイクにつながったのだ。

 秋元氏本人の手による一連のAKB48グループにしても、“会いに行けるアイドル”を標榜し、ファンたちが“推しメン”と一体となって応援するというスタイルが絶大な支持を得たわけだが、『ラストアイドル』の場合は選考方法があまりにも“ガチ”であるため、ファンがメンバーに感情移入する暇がないというか、感情移入自体を“拒否”しているかのようにすら見え、ひたすら波乱万丈な展開に最終ゴールまで目が離せなくなるのだ。

“個”を重視した審査 狙うは本物の“アイドル・オブ・アイドル”か?

 こうしたガチンコ体制は審査方式にも現れており、審査員はミュージシャンなど著名人4名で構成されているが、最終決定権を持つのは指名された1名だけ。指名された審査員が支持すれば、他の3名が反対でも通らないのである。実際、10月22日の放送では、指名された審査員の書評家・吉田豪氏がこのパターン(1対3)になり、その後、吉田氏のTwitterが炎上する事態にまでなった。

 しかしこの方式も、「審査は多数決にしたらどうか」という演出家・田中経一氏の提案に対し、秋元氏が自ら「(多数決では)指原莉乃は生まれない」と否定したことからはじまる。おニャン子クラブやAKB48など、“素人っぽさ”や“親しみやすさ”をコンセプトに入れてきたはずの秋元氏が、これまでの“民意”に信をおいた手法から、アイドル候補者にも審査員にも、徹底的に“個”であることを要請した手法に変えたと言うこともできるだろう。それも長年、芸能界を見てきた氏に思うところのある“壮大な仕掛け”なのかもしれないし、本物の“アイドル・オブ・アイドル”を作りたいという本気度なのかもしれない。

 そして先日の17日、最後の7人目のメンバーが確定する回にも、吉田氏がまさかの審査員指名。スタジオのみならず視聴者にも緊張が走る中、吉田氏は暫定メンバーに軍配を上げ、チャレンジャーはセカントユニットへと拾われていくのだが、この吉田氏のジャッジに関しても、ネットでは「空気を読んだ」、「守りに入った」などと揶揄される反面、「(番組としては)いいスパイスになった」という見方もあり、いずれにしろ番組を盛り上げる効果としてはたしかに絶大なものがあったのは事実なのだ。

 『ラストアイドル』は、これまでのアイドルのオーディション番組とは一線を画した、まったく新しいオーディション番組の姿であることはたしかだろう。そしてそこには、新しい“アイドルの形”が誕生する可能性も秘められているのかもしれない。

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