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ゲーム実況の元祖『ゲームセンターCX』の功績とは?

 昨年12月16日に発売されたDVDソフト『ゲームセンターCX‐BOX13』が、オリコンデイリーランキングで1位を獲得した。これは、お笑いコンビ・よゐこの有野晋哉が出演し、2003年からはじまった同番組は、有野(番組内では有野課長)がさまざまなゲームにリアルに挑戦し、ゲームのエンディングを迎えるまでひたすらゲームをやり続けるだけという、深夜番組だからこそ許されるゆる〜いもの。10年以上経過してもなお愛されるワケとは?さらに後進に与えた影響とは?

“等身大のゲームファン”が生み出した視聴者の共感

  • さまざまなゲームにリアルに挑戦してきたよゐこの有野晋哉

    さまざまなゲームにリアルに挑戦してきたよゐこの有野晋哉

 『ゲームセンターCX』は、自他ともに認めるゲームマニアのよゐこ・有野がファミコン世代を代表し、制作会社やフジテレビ局内などの“挑戦部屋”(会議室?)で、基本的には昔懐かしいレトロなゲームを収録時間内(およそ12時間。ときには24時間生中継もある)にオールクリアするまでを追う番組だ。

 ただ、有野はゲーム好きではあるようだが、それほどテクニックがあるわけではなく(極楽とんぼ・加藤浩次いわく「誰よりもゲーム好きで、誰よりもゲーム下手」)、一般層が見ても普通に“そんなところで死ぬか?”と思ってしまうくらいの腕前。「スーパーマリオ3」の回では、番組の中で唯一の“共演者”とも言えるADが事前に「ライフ」を99まで増やしているほどなのだ。

 「これまでのゲーム関係の企画と言えば、あくまでゲームの上手な人が独自の攻略法を一般のファンに伝授するというものが中心でした。かつては“高橋名人”というプロもいましたし、ゲーム攻略誌などでは、“ゲーマー”と呼ばれる人たちが人気ゲームソフトの発売直前に編集部に缶詰めになって、延々とゲームをやり続けてゲームの内容やバグなどを先取りしいたりしていました。でも、彼らプレイヤーもファンもかなりディープでコアな層で、一般のゲームファンとは遠い存在だった。それに比べて、普通のゲームマニアと同じようなミスをする有野さんのプレイっぷりは、一般層にとっても自分とレベルが変わらないので安心して感情移入できるんですね。いわば“等身大のゲームファン”という、分厚いゲームファン層の獲得に成功した番組と言えるでしょう」(エンタメ誌編集者)

レトロゲームをけん引するゲーム実況のパイオニア

 ゲームファンの大半は“普通”の腕前の一般層である。そうした層から多くのファンを獲得しているからこそ、同番組は13年間も続いているのだろう。その13年のうちには、番組で紹介したゲームソフトや書籍関係、CDから果ては映画に至るまでコラボされており、メディアミックスの実現においても成功している番組と言えそうだ。

 また、番組のスタッフも登場して有野と一緒に番組を盛り上げる形式は、今では超人気深夜番組となった『水曜どうでしょう』(HTB)と同じであり、スタッフにもファンがつくなど、視聴者の番組に対する親近感も見て取れるのだ。さらに先にも触れたように、ゲームを“プレイする側”に視点を当てて実況する“ゲーム実況中継”は、今やYouTubeの有力コンテンツとなり、日本で一番稼いでいるYouTuberとも言われるHIKAKINもゲームの実況中継をしているし、瀬戸弘治というゲーム実況中継のカリスマも生み出すなど、多くのYouTuberがごく当たり前に「マインクラフト」等の人気ゲームの実況中継を投稿しているのが現状だ。

 「有野さん自身もラジオ番組で『HIKAKINの存在が怖い…』と明かして、YouTuberに対する脅威を語っていました。でも、それも時代が有野さんに追いついてきた証拠とも言えるでしょう。昨年の11月には、手のひらサイズの『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』が発売されて大ヒットしたり、スマートフォンに差し込む『ピコカセット』でも『忍者じゃじゃ丸くん』が復活しました。『ポケモンGO』のブームにしても、初期のポケットモンスターのキャラクターを捕まえるというものですから、“懐かしさ”をウリにしたゲームが再び世の中を席巻しはじめた感があります。有野さんをはじめとする団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)が40代となった今、レトロなゲームのブームをけん引するようになったのかもしれません」(前出・編集者)

ゲーム実況の“アハ体験”と有野が生み出す“ムズキュン”の最強コラボ

 一応『ゲームセンターCX』内では、有野はゲームをすることで平社員から係長、課長と成長していく設定になっているが、13年経って課長となった今でも、有野はいっこうにゲームがうまくなっていない。それだけに、視聴者のほうも有野がクリアするまでは思わずウズウズ、イライラ、ハラハラしてしまうのである。

 とは言え、ヘタクソだからこそ共感も得られるし、有野がゲームをクリアしたときの達成感もひとしおで、見る側にいっそうの爽快感をもたらすのだ。いわば、“アハ体験”(脳科学者・茂木健一郎氏が提唱する、答えがわかったときの気持ちよさ)や“ムズキュン”(話がなかなか進展せず、ムズムズしながらもキュンキュンする様。昨年の人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)を評する際に多用された)に近いノリがあるわけである。

 実際、2005年に発売された『ゲームセンターCX』のDVD BOX 1と2007年発売のDVD BOX 2は合わせて10万本以上も売れたというから、DVDのBOXものでは超異例の大ヒットであり、その人気ぶりがうかがえる。同番組には“ゲーム実況”のパイオニアとしての矜持もあるだろうし、今後も衛星放送や深夜番組だからこそできるような、ゆるくて斬新な企画を期待したいものである。

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