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(更新: ORICON NEWS

バラエティで“攻め”の姿勢を貫くTBS〜BPOに媚びない藤井Pの手法

  • 前番組に引き続き『クイズ☆スター名鑑』に出演するロンドンブーツ1号2号 (C)ORICON NewS inc.

    前番組に引き続き『クイズ☆スター名鑑』に出演するロンドンブーツ1号2号 (C)ORICON NewS inc.

 2012年3月に惜しまれつつ終了した『クイズ☆タレント名鑑』(TBS系)が『クイズ☆スター名鑑』と改題し、10月より毎週日曜の夜にレギュラー放送される。4年半ぶりになる人気バラエティの“異例の復活”にと歓喜の声も続々。同番組は、『水曜日のダウンタウン』や『芸人キャノンボール』なども手掛けるTBS・藤井健太郎プロデューサーが担当。藤井Pといえば、何かと息苦しいテレビの現状でも“攻めた”番組を世に送り出し、同局だけでなく現在のバラエティ番組全体をけん引する存在だ。大御所か若手まで多くの芸人からの信頼も厚い、彼の“掟破りだらけ”の手法とは?

ゴールデンで“ピー音”連呼 ダウンタウン・松本も認めた藤井Pのチャレンジ精神

 『クイズ☆タレント名鑑』と言えば、「日本一下世話なクイズ&バラエティ」を標榜し、“狂気”さえ感じさせる芸人たちの暴走ぶりから、“業界注目率No.1”(司会者MCのロンドンブーツ1号2号・田村淳の発言)を誇る番組であったが、番組の演出・プロデュースを手掛けたのがTBSの藤井健太郎氏。藤井氏は『水曜日のダウンタウン』や『芸人キャノンボール』などのプロデューサーも務め、8月には著書『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)も刊行した若手プロデューサーのなかでも業界最注目株。ダウンタウン・松本人志をして、「TBSってクレイジーな局になってきたよね」「(『水曜日のダウンタウン』は)唯一、チャレンジしている番組」と言わしめた。

 藤井Pの出世作でもある『クイズ☆タレント名鑑』の内容はと言えば、“暴走”のひと言。一応、クイズ番組だけにタレントの名前を当てるのが趣旨だが、お笑い芸人の有吉弘行やFUJIWARA、おぎやはぎといったレギュラー陣が、ボケなのか日頃のうっぷん晴らしなのか、やたら“問題・前歴”ありの芸能人の名前を連呼しては、“ピー音”が入ったり、テロップで口元を隠されたりする(意外だが、特におぎやはぎ・矢作兼が暴走)。その他、「芸能人!してる?してない?クイズ」で「刺青が入っている芸能人」を○×で答えさせたり、「芸能人!このオファー引き受けた?引き受けなかった?クイズ」では、引き受けなかった理由まで丁寧に説明したりする。「USC〜史上最大ガチ相撲トーナメント〜」でちょっとだけ感動する場面もあったりするが、基本的には視聴者に“コレ、ゴールデンタイムで放送していいのかよ…”と心配させるようなシーンだらけだったのである。

 「それは、藤井Pが演出を担当する『水曜日のダウンタウン』でも変わりません。番組は、各芸人がいかにも“あるある”系のネタを“○○は○○なんじゃないか説”といった“説”の形で持ち込み、それを検証するという流れなのですが、“面白さ”を追究するあまり、結果的に行き過ぎた演出を連発して、BPO(放送倫理・番組向上機構)からのクレームと謝罪を繰り返しています。それでも番組の方向転換や打ち切りはないんですから、TBSさんもキモが据わってるというか、テレビマンとしてはうらやましい限りですね」(バラエティ番組制作会社スタッフ)

“芸人第一主義”の藤井Pを後押しする“攻め”のTBS

 同様に、『芸人キャノンボール〜公道最速借り物レース〜』も各方面から批判が殺到しているようだ。この番組も『タレント名鑑』とほぼ同じ芸人が登場し、出された“お題”の人物をチームで競い合って探し出すという内容で、最近のバラエティ番組によくある“素人いじり”を過激にしたようなもの。しかし、「素人の容姿までバカにするのはタブー」との“掟”を破ったため、「さすがに笑えない」「不愉快すぎる」として視聴者からの反感を買ったのだ。その一方で、「めまぐるしく場面が切り替わるのにストレス無く観てられる」「開始30分なのに最強に面白い」「めちゃくちゃ面白かった!3時間ひたすら笑えた」と視聴者の心を捉え、熱烈的なファンが多いのも確か。また、「なにより芸人さんが終始笑顔で楽しんでいるところが素晴らしい」と視聴者にも制作者の意図がしっかりと伝わっている。深夜枠ではなく、あえてゴールデンタイムに3時間の特番として放送したTBSは、ある種の覚悟を持って挑んだに違いない。

 「藤井Pは、最初から芸人さんたちには番組の意図をしっかりと伝えるなどして、“芸人第一主義”を貫いているので、芸人さんからの信頼は非常に厚いんです。藤井Pが手掛る番組に出演する芸人さんたちは、みなさん表情が生き生きとしてますよね。藤井Pは素人さんのみならず、大物芸能人までも巻き込んで、企画やテロップでイジりまくります。どこまでも面白くしようとする姿勢が、結果的に“攻め”になってるんですね。個人的には藤井Pにも、TBSさんにもこのまま貫いてほしいと思います」(前出のスタッフ)

 そもそもTBSは、“報道のTBS”“ドラマのTBS”として上質・上品なイメージを打ち出しながら、『8時だョ!全員集合』といったある種行き過ぎた伝説の“高視聴率”番組を放送し続けてきた局でもある。その“伝統”がいまだに、藤井Pが手掛ける番組を通して受け継がれているとも言えるのではないだろうか。そうした“攻め”の姿勢は、TBSの他プロデューサー陣が手掛ける『クレイジージャーニー』や『万年B組ヒムケン先生』からもみられる。何かと言えば“規制、規制”とうるさく、バラエティ番組が息苦しくなっている現在だが、SNSの普及によって情報の交換・拡散のスピードが速まるなか、テレビ媒体の原点・本分に還ったような番組作りをする貴重な存在と言えるだろう。

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