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ORICON NEWS
リアルタイム視聴促すテレビ番組の「副音声」企画増加
従来はあくまでも主音声の補完 『トリビアの泉』影ナレなどで注目
そもそも副音声とは、原則として主音声の日本語に対して、ニュースや海外ドラマを英語など外国語で聞きたい場合の二か国語対応用に使われているもので、他にも障害者向けのサービスとしてドラマの情景描写などを副音声で放送する場合がある。番組表や画面表示に〈副〉と表示されているものが対応し、放送中に〈音声切り替え〉ボタンを押すと聞くことが可能。NHKでは一部の番組で高齢者のためにBGMや効果音を抑えて、ナレーションの声を聴きやすくするといった副音声も提供している。
ただ、用途は多々あれど、従来はあくまでも放送の補完サービスとして捉えられていた。副音声を敢えてエンタテインメント化して番組演出として使う発想は、ゴールデン帯の番組ではかつてフジテレビ系で放送されていた番組平均視聴率20%を超す人気雑学バラエティ『トリビアの泉』が先駆けだったと記憶する。副音声から番組とは関係のない『ドラえもん』で馴染みのあるスネ夫の声(番組内ではシルエットとともに登場)が聞こえるなど、タレントやアニメ声優が「影ナレーション」となって解説する「おもしろ副音声」は当時、斬新なアイディアだった。それが聞きたいがためにチャンネルを合わせる視聴者もいたことだろう。
SNSなどで“ざわざわ感”を起こすことでリアルタイム視聴に誘導
副音声の活用が増えた理由のひとつに、地デジ化が挙げられるだろう。デジタル化によって音声も技術的に仕様が広がり、二重音声でもモノラルとステレオが選択できるようになった。デジタル化のメリットをいろいろと活かそうと取り組む放送局が増えたこともあって、その一環で「おもしろ副音声」も生まれている。また、放送局各局が命題として掲げている「リアルタイム視聴」を促す策のひとつとして捉えることもできる。SNS上での盛り上げ役として「ここでしか聞けないエピソードやキャストの素顔が聞ける副音声」が一役を担い、ざわざわ感を起こすことで、リアルタイムで視聴するきっかけを作っている。副音声は録画にも対応しているが、設定にひと手間必要で、中にはリアルタイムで気軽に楽しめる副音声を選択し、録画でじっくり本来の放送を味わう副音声フリークの視聴者もいる。
話題になっている副音声企画には共通項があるようにみえる。裏話や本音トークが聞けることももちろん思わず楽しめるものだが、視聴者の心理としてはそれ以上にその時間を出演者なり特別ゲストと共有できる“一緒にみている感”が最大の楽しみなのではないだろうか。今後、世界観にどっぷりハマりやすいドラマなどではスダンダードな手法になっていくのかもしれない。
(文/長谷川朋子)