ドラマ&映画 カテゴリ
(更新: ORICON NEWS

リアルタイム視聴促すテレビ番組の「副音声」企画増加

 7月より放送されているフジテレビ系月9ドラマ『好きな人がいること』の第4話、6話で実施されたキャストたちによる“副音声”企画が注目を集めている。近年、『NHK紅白歌合戦』やスポーツ中継での趣向を凝らした副音声が話題になることが増えているが、なかには主音声を食ってしまうほどのバズを起こすことも多い。従来、二か国語対応や解説を目的に使用されてきた副音声だが、昨今、エンタテインメント化が目立っている理由は何なのだろうか? その狙いに迫っていきたい。

従来はあくまでも主音声の補完 『トリビアの泉』影ナレなどで注目

  • 桐谷美玲主演のフジテレビ系月9ドラマ『好きな人がいること』の副音声企画が話題を集めている (C)ORICON NewS inc.

    桐谷美玲主演のフジテレビ系月9ドラマ『好きな人がいること』の副音声企画が話題を集めている (C)ORICON NewS inc.

 桐谷美玲がヒロインを務めるフジテレビ系月9ドラマ『好きな人がいること』の副音声企画が話題だ。第4話では「真夏の激アツ副音声」と題し、柴崎三兄弟の三男・冬真役の野村周平と柴崎家の良き相談役・日村信之を演じる浜野謙太らが副音声企画に登場し、ドラマの展開に合わせて本音トークをさく裂させた。そんな「貴重な出演者のウラ話が聞ける」企画はファンからも好評を得たようで、第6話でも実施され、第5話でヒロインを思いっきり振ってしまった長男・千秋を演じる三浦翔平と再び野村周平が登場して、波乱の展開を迎えた第6話を盛り上げた。

 そもそも副音声とは、原則として主音声の日本語に対して、ニュースや海外ドラマを英語など外国語で聞きたい場合の二か国語対応用に使われているもので、他にも障害者向けのサービスとしてドラマの情景描写などを副音声で放送する場合がある。番組表や画面表示に〈副〉と表示されているものが対応し、放送中に〈音声切り替え〉ボタンを押すと聞くことが可能。NHKでは一部の番組で高齢者のためにBGMや効果音を抑えて、ナレーションの声を聴きやすくするといった副音声も提供している。

 ただ、用途は多々あれど、従来はあくまでも放送の補完サービスとして捉えられていた。副音声を敢えてエンタテインメント化して番組演出として使う発想は、ゴールデン帯の番組ではかつてフジテレビ系で放送されていた番組平均視聴率20%を超す人気雑学バラエティ『トリビアの泉』が先駆けだったと記憶する。副音声から番組とは関係のない『ドラえもん』で馴染みのあるスネ夫の声(番組内ではシルエットとともに登場)が聞こえるなど、タレントやアニメ声優が「影ナレーション」となって解説する「おもしろ副音声」は当時、斬新なアイディアだった。それが聞きたいがためにチャンネルを合わせる視聴者もいたことだろう。

SNSなどで“ざわざわ感”を起こすことでリアルタイム視聴に誘導

 そして昨今ではそんな副音声企画が話題を集めることが増えてきた。例えばドラマでは、昨年の月9『恋仲』でも副音声企画が評判を呼び、昨年はバナナマンやT.M.Revolutionらが出演した『NHK紅白歌合戦』の「紅白ウラトークチャンネル」が話題に。さらにスポーツ中継などの大型番組でも遊びのある副音声が演出されることもある。レギュラーのアニメやドラマで副音声にキャストや著名人を当てて放送する局も増えてきた。本来、テレビ番組を補完する存在である副音声が主音声を上回る存在になることもしばしばあるのだ。

 副音声の活用が増えた理由のひとつに、地デジ化が挙げられるだろう。デジタル化によって音声も技術的に仕様が広がり、二重音声でもモノラルとステレオが選択できるようになった。デジタル化のメリットをいろいろと活かそうと取り組む放送局が増えたこともあって、その一環で「おもしろ副音声」も生まれている。また、放送局各局が命題として掲げている「リアルタイム視聴」を促す策のひとつとして捉えることもできる。SNS上での盛り上げ役として「ここでしか聞けないエピソードやキャストの素顔が聞ける副音声」が一役を担い、ざわざわ感を起こすことで、リアルタイムで視聴するきっかけを作っている。副音声は録画にも対応しているが、設定にひと手間必要で、中にはリアルタイムで気軽に楽しめる副音声を選択し、録画でじっくり本来の放送を味わう副音声フリークの視聴者もいる。

 話題になっている副音声企画には共通項があるようにみえる。裏話や本音トークが聞けることももちろん思わず楽しめるものだが、視聴者の心理としてはそれ以上にその時間を出演者なり特別ゲストと共有できる“一緒にみている感”が最大の楽しみなのではないだろうか。今後、世界観にどっぷりハマりやすいドラマなどではスダンダードな手法になっていくのかもしれない。

(文/長谷川朋子)

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索