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みうらじゅん×宮藤官九郎クリエイティブ対談『サブカル界2大スターのコンプレックス?』

イラストレーター、漫画家、エッセイストなど多彩な創作活動でおなじみのクリエイター・みうらじゅんと、脚本家であり俳優、映画監督としても活躍する宮藤官九郎。サブカル層から圧倒的な支持を受けるふたりに、どこか同じニオイを発するお互いのクリエイティブワークについて聞いた。大真面目に世の中の“難題”を語り合った共同著書『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』についても語る。

自分の過去を“守ろう”としていないところがいい(みうら)

――お互いをどんなクリエイターだと思っていますか?
みうらじゅんそんなこと聞かれるとめちゃくちゃはずかしいね(笑)。
宮藤官九郎広い意味で先輩……ですね。先輩はたくさんいるんですけど、迷ったときにみうらさんだったらこんなときどうするかなって考えることがよくあります。これやるかな、こういうことすんのかなとか。みうらさんは、僕にとっての“正しい判断”をしているような気がするから。そういう人はほかにあまりいないです。
みうらじゅんそれは俺も思います。宮藤さんがやっていることは、映画とか演劇とか、ジャンルはあるけれど、カテゴリはないんじゃないかな。がっちりどこかにハマれないコンプレックスを感じる。こういう自分と似たような人ってどうすんのかなってつい思うよね。
宮藤官九郎あと、お互いに週刊文春ですぐ隣のページで連載していて、自分の話がマジメ過ぎるかなって思ったときに「次はみうらさんのページだからいいか」って。
みうらじゅんコンビじゃないんだから(笑)。

――なんとなく同じニオイを感じるおふたりですが、ここは違うというところはありますか?
みうらじゅん宮藤さんはね、あとさきを考えない。それはすごいですよ、俺にはできない。考えちゃいけないなぁって思うんだけど、つい考えてしまっていたり……。だから宮藤さんの作品には勢いがありますよ。ギャグだって“連打”をするじゃないですか。俺はできないんですよ。例えば、俺はあることを掘り下げて、そのことと全然ちがう結論を出すっていう作戦なんですけど、宮藤さんは惜しみなく全部出す。それでちっとも枯れないんだよね。それがすごい。これはここに回してっていう配分なんて考えないでしょ?
宮藤官九郎 深くは考えないですね。
みうらじゅん宮藤さんは決して自分の過去を“守ろう”としていないところがいいな。
宮藤官九郎文春で、ちゃんと笑わそうとしているコラムがないじゃないですか。みうらさんの文を読むと、僕もやらなきゃなって思います。とくにマジメなことを書いているときに。いつもいろいろな話題から、まったく違うことを持ってくるやり方とかすごいですよね。このクオリティを毎回やっているんだなって思うと勉強になります。みうらさんとは10歳くらい年が違うんですけど、自分の10年後はみうらさんみたいにいられるかな、いられたらいいなって思います。

――話のネタはどういうときに浮かぶんですか?
みうらじゅん俺は基本的に全部夏休みの話のつもりで書いているんですよ。学生時代の“夏休み話”感。冬休みの感じがしないように、いつでも浮かれてるように努めてます。
宮藤官九郎男の下ネタは自虐って書いていますけれど、なんでも基本は自虐的じゃないとおもしろくない。自分のことを笑ってもらえないとなかなか難しいですよね。
みうらじゅん笑かすと笑われるのあいだ、笑ってもらうというやつですね(笑)。それでも親が引くくらいの話は書けないんですよね。宮藤さんとはその感じも似ていますね。親を不幸にしてまで笑いを取りたくないってところ(笑)。

エロはギャグ、おもしろの宝庫。笑えないエロはキツイ(宮藤)

――『世界全体会議』では、おふたりで真剣にエロ?下ネタ?を語り合っていますが、エロがクリエイティブ活動のパワーになっているのでしょうか?
宮藤官九郎いや、僕は全然そうじゃない。エロはギャグですね。
みうらじゅんそう。ギャグですね。エロって世の中的にはいやらしいことだけじゃないですか。でもエロには、そのいやらしいなかに笑いがあるんですよ。
宮藤官九郎じゃなかったらやらないですよね。興味を引くという意味でいえば、パワーはあります。でも笑えないエロはキツイ(笑)。
みうらじゅんフィニッシュが射精っていうのはつまらないですからね。やったことを自慢しているようでは笑ってもらえませんから。
宮藤官九郎誰とやったあとでも虚しいですし、ひとりでも、奥さんとのあとも同じ。あの虚しさは、気持ちの持ち方の問題じゃないんだな。

――エロ=クリエイティブなのかと思っていました。
みうらじゅん実はそんないやらしくないですよ、ふたりとも(笑)。世の中には本当にいやらしい人っているじゃないですか。そういう人は、メディアであっけらかんとエロの話なんてしないですよ。俺らはエロにまつわる些末なことが気になっちゃうんです。
宮藤官九郎おもしろの宝庫ですからね(笑)。
みうらじゅんエロで食っているわけじゃないけれど(笑)。最初はみんな童貞だったのに、どうしてあの感覚を忘れちゃうんだろうね。今日だってここ来る前に神田までエロ本買いに行ったんですよ。また1万円くらい使った。働いてお金もらっているんだから、エロ本買ったって別にいいじゃんって思うんですけどね、まだなんか後ろめたいんですよね、後ろメタファーが(笑)。買ったらそそくさと帰る感じが自分でもおかしくって。
宮藤官九郎僕は映画の宣伝でバラエティに出過ぎたんで、今はダメですね。街を歩いていると、今まで気がついても知らないふりをしてくれてた人にも、そうじゃなくて知ってくれた人にも「あっ!」って声をかけられます。ほとぼりさめるまで、あと1ヶ月くらいはおとなしくしてます。
みうらじゅんゴールデンタイムのテレビに出るとまわりの目が変わるよね。『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)には何度出させてもらっても平気なのに(笑)。芸能人に入っちゃう自分がいやでしょ? 俺なんて向いてないんで、声かけられるとドキドキしますよ。
宮藤官九郎そういうエロ本話をこういう取材の場で話すことで後ろめたさを減らそうとしてますよね。わざとテンガの話をしたりとか。俺なんかどうせっていうか。
みうらじゅん どうせ仕方ないヤツなんだってね(笑)。

――『世界全体会議』で一番盛り上がった話題は?
宮藤官九郎盛り上がったかは置いておいて、何回か話し合ったのはクンニが必要かどうか。前にも話していたんですけど、答えが出ていなかったので。
みうらじゅん年をとるとクンニの重要性がわかってくるんです。「死ぬまでセックス!」って、それは無理だから。若いころは思わなかったけど、クンニってこれから絶対、流行りますから(笑)。
宮藤官九郎この話が出るのはだいたい丑三つ時ですよね。

俺はロンリープレイ専門なんで(みうら)

――みうらさんは宮藤さんのどういうところを評価していますか?
みうらじゅんセンスが似ていて全然ちがうことをする人っていますよね。宮藤さんの演劇も見せてもらいました。俺、演劇って昔からすごく苦手で。でも、思ってた演劇と宮藤さんのは違ってた。宮藤さんの頭のなかをのぞかせてもらった感じでとてもおもしろかったです。

――宮藤さんはみうらさんにこれからやってほしいことはありますか?
みうらじゅんそんなものないでしょ(笑)。
宮藤官九郎今のままでいてもらえたらなって。あと、みうらさん原作の映画化作品がたくさんあって、田口トモロヲさん、安齋肇さんが監督をしてきたから、今度はご自分が監督で撮ってほしいですね。
みうらじゅんえっ、宮藤さんが撮ってくれるんじゃなくて(笑)。昔、『お笑い虎の穴』(1995年)っていう映画の原作・監督をやったことがあるんですよ。でも、ズボラ屋が出てきて、時間ばかりかかってなかなか完成しなくて……。安齋さんが助監督で、絶えず「みうらくんこれでいいいの?」って聞いてくるんだけど「おっけー!」って。適当になっちゃうんですよね。ふつう撮影現場ってじっくりやるじゃないですか。俺は何事も早く終わればいいなって思っているから、向いてないです(笑)。
宮藤官九郎安齋さんもそういうタイプじゃなかったでしたっけ。
みうらじゅんいや、実はゆっくりタイプですよ。それに、映画は監督ひとりで作るものじゃないから。俺はロンリープレイ専門なんで。
宮藤官九郎僕はみうらさんの監督作って興味ありますけどね。トモロヲさんが撮った作品とか限りなく近いんでしょうけれど、“完全みうらさん作品”が観てみたいんですよね。

――と言われていますが。
みうらじゅん宮藤さんの名前をまだ知らないころに、トモロヲさんから「宮藤くんっていうすごい脚本家がいるから」って言われて。俺の漫画原作を映画『アイデン&ティティ』(2003年)で宮藤さんが脚本を書いてくれたと聞いて、本編を観させてもらったんだけど、当然ですけど自分の原作にない台詞がたくさんあって、それがすっごいおもしろくて。そのとき思ったことは、映画を観てから漫画描けばよかったなと(笑)。映画ってすげえってそのとき実感したんです。こんなに変わって広がるんだって。それまで俺は映画のおもしろさが脚本にあるなんて思ってもいなかったから、それに気づかせてくれた人なんですよ、宮藤さんは。

――宮藤さんも脚本を書かれたときのことを覚えていますか?
宮藤官九郎僕も原作ものの仕事のなかでは一番好きな作品ですね。映画をやる前から原作の漫画も読んでいましたし。
みうらじゅんトモロヲさんは「原作を変えちゃっているところあるけどいい? でも、すごいからまかせておいてよ」って言ってたの。俺は、他人の力を借りることがそれまで一度もなかったから感動しました。宮藤さんは新しい映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』でも監督と脚本やってるでしょ。いやぁ、そりゃおもしろいに決まってますよ。
(写真:RYUGO SAITO)

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

 男と女に友情は成立するのか、お化けはいるのかいないのか、なぜ男はハゲを恐れるのか……。「男と女について」「日本人について」「人生について」ふたりが人類を代表して語り合う対談本。約30ものテーマを収録している。

著者:みうらじゅん 宮藤官九郎
四六判256ページ 発売中(1200円+税)
集英社
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