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映画館離れに歯止め? “ながら映画”が進化

  • 育児しながら映画を観ることができる「ほっとママシネマ」の様子 写真は『ORIGINAL CONFIDENCE』13年6月17日号より掲載

    育児しながら映画を観ることができる「ほっとママシネマ」の様子 写真は『ORIGINAL CONFIDENCE』13年6月17日号より掲載

 福岡県のユナイテッド・シネマ・キャナルシティに、日本初の本格的な食事が楽しめるレストランスタイルの映画館「プレミアム・ダイニング・シネマ」が4月23日にオープンし、話題を呼んでいる。いわゆる「○○しながら映画を観る」という“ながら映画”のひとつだが、今やかつての定番、“ポップコーン食べながら映画を観る”スタイルだけではないようである。我々の映画を観るスタイルは、今後どのように進化していくのだろうか? さらには、客足が遠のいていると言われる映画館に人は戻ってくるのだろうか?

シネコンで来場者の減少食い止める 健闘続ける映画館

 このレストランスタイルの映画館は、アメリカを中心に海外ではすでに100カ所以上の映画館で導入されているという。座席でメニュー表を見ながら、ハンバーグやドリアなどのメインディッシュからサイドメニューまでオーダーすると、スタッフが座席まで届けてくれるわけだ。今回の「プレミアム・ダイニング・シネマ」の料金は、映画代金込みでカジュアルシートが2800円(1000円分の飲食券付き)、ラグジュアリーシートが3800円(1500円分の飲食券付き)。料金もリーズナブルであり、映画を観る新しいスタイルとして定着していくことが期待されている。

 「ただ、映画館来場者数は1958年の11.3億人をピークに、1970年代以降はほぼ横ばい、2013年には1億5588万人と、戦後の映画全盛期から比べると10分の1以下に落ち込んでるんです。もちろん、テレビやレンタルビデオの普及が大きい。でもここ20年ぐらいの“巨大商業施設+複数のスクリーンのある映画館”の広がり、いわゆる“シネコン”(複合映画館)の一般化もあって、2000年代には入場者数が若干伸びて、2010年にはピークを迎えるなど、テレビなど他のメディアに比べると大健闘しているとも言えます。全体の映画産業の傾向としては、“映画館の数は減っているがスクリーンの数はほぼ横ばい”“映画公開本数は増えたが、1作品ごとの入場者数はジワジワと減っている”といったところでしょうか」(エンタメ誌編集者)

ドライブインシアター復活や保育付き上映…映画+付加価値

 確かに最近でも、邦洋を問わず大作・話題作になれば必ずTVCMが流れ、各メディアでも宣伝される。作品の評価もいろいろな媒体で発信されるので、デートや行楽で“映画館に行く”という文化はまだまだ健在だとも言える。バブル期には、自宅でポテトチップスを食べながら、借りてきたレンタルビデオを寝転んで観るという“カウチポテト”などの言葉もあったが、今ではレンタル“ビデオ”から“DVD”に替わり、画質その他のスペックが格段に進歩した。さらには、ネットで映画1本をまるまるダウンロードするオンデマンドサービスまで普及しているが、“自宅で映画”か“大スクリーンで映画”かの棲み分けができ上がっているとも言えるかもしれない。

 “カウチポテト”の当時には、巨大な駐車場でクルマの中から映画を観るという“ドライブインシアター”なんて懐かしすぎるスポットもあったくらいだが…。
「ドライブインシアターは、一時期は全国で20カ所ほどあったんですが、2010年に完全に“絶滅”。ただここ最近は(2014年、2015年)、期間限定で復活したりもしています。このドライブインシアターこそ、いわゆる“ながら映画”、映画+付加価値の原点とも言えるでしょう。今では、星空の下で映画を観ることができる『森の映画館』や『星空の映画祭』、海の上で上映する『うみぞら映画祭』など、一風変わった環境で映画を楽しむことができるイベントもあります。また、育児・ママ会をしながら映画鑑賞ができる『ママズクラブシアター』や『ほっとママシネマ』、または保育つき上映を行なっている映画館など、“観る側”を気遣った企画が出てきました」(前出・編集者)

新規顧客開拓 “映画にとらわれない”改革に期待

 最近はこうした映画館側からのアプローチも多く、映画“以外”のコンテンツ、いわゆるODS(Other Digital Stuff=非映画デジタルコンテンツ)を取り入れる映画館が増加し、新たな顧客層の開拓を試みているようだ。たとえば上映時間の空き時間を有効活用するもので、人気アーティストのライブ映像や、大規模スポーツイベントの実況中継など、いわゆるパブリック・ビューイング企画も一般化している。

 今後もこのような“映画+付加価値”企画、“○○しながら”映画を観るというスタイルはますます多様化していくだろう。実際、海外では“寝転びながら”映画を観る、“風呂に入りながら”映画を観るなどの映画館もあるのだという。日本で言えば、“露天風呂で映画”なんていうのもアリかもしれない。いずれにしろ、これからの劇場映画鑑賞は単に映画を観るだけではなく、各個人が持つ趣味・ニーズをいかに取り入れ、マッチングさせるかがキーとなりそうであり、映画製作側、映画興行側の斬新なアイディアが待たれるところだ。
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