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衰退する王道フォーマット“学園ドラマ”の行方 若手俳優のチャンスが激減?

前期の連続ドラマのなかで、若手キャストが集結する唯一の王道“学園ドラマ”だった『表参道高校合唱部!』(TBS系)。放送前は、主人公を演じた芳根京子ら高校生役のメインキャストをほぼオーディションで抜擢したことも話題だったが、フタを開けてみると「感動で涙ボロボロ」などネットでの評価は高かったものの、視聴率は1ケタ続きで5%も切るなど低迷した。かつてはこれからブレイクするだろう若手俳優の宝庫と言われ、その胸アツな青春ストーリーは現役中高生だけでなく、幅広い世代にある種のカタルシスを与えていた学園ドラマだが、近年めっきりヒット作が少なくなり、その数も減っている。そんな王道エンタメの復興はあるだろうか?

若手スター育成システムという側面を持つ学園ドラマ

 テレビ放送がモノクロの時代から、学園ドラマは一大ジャンルだった。日本テレビ系日曜20時枠の『青春とはなんだ』『これが青春だ』などが人気を呼び、ひとつのフォーマットを作ったと言われる。70年代には現千葉県知事の森田健作が『おれは男だ!』などで青春スターになり、『われら青春!』で初主演した中村雅俊らも続いた(すべて日本テレビ系)。

 1979年の『3年B組金八先生』(TBS系)は、圧倒的な人気の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)の裏番組ながら視聴率を伸ばし、以後32年にも渡りシリーズ化。同時に、第1シリーズの生徒役から、たのきんトリオ(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)や三原じゅん子(現・順子=参院議員)らが人気を呼んだのに始まり、若手スターの登龍門ともなった。このシステムは小栗旬、成宮寛貴、速水もこみち、小池徹平らが脚光を浴びた『ごくせん』シリーズ(日本テレビ系)などにも受け継がれている。

 学園ドラマが減ったのは視聴率が振るわなくなったからではあるが、根底にはメインターゲットである中高生世代のテレビ離れがある。『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)などが安定した高視聴率を記録するようになった頃から、ドラマが全体的に大人向けにシフトした。

 これは10代の若手俳優のチャンスが激減したことも意味する。学園ドラマでは通常、メインの生徒に男女5人ほどずつ配され、1話に1人スポットが当たるパターンが定番で、主役級の出番が順繰りに回る。オーディションでのキャスティングも多く、新人にもチャンスがある。前述のように、そこから人気者になることも少なくなかった。

才能ある若手はチャンスがあれば注目される

 大人向けドラマでは若手枠は限られていて、大きな役ほど新人は入りにくい。『表参道高校合唱部!』で主演の芳根京子は、同期に放送されていた『探偵の探偵』(フジテレビ系)にも主人公の殺された妹役で回想シーンに出ているが、逆に言えば『表参道』のようなオーディションがなければ、キャリア的にまだその程度の役に留まるところだった。

 しかし、才能ある若手はチャンスがあれば注目される。近年では2013年の『35歳の高校生』(日本テレビ系)に菅田将暉、野村周平、山崎賢人、新川優愛ら今をときめく面々が出演していた。今年1月クールの『学校の階段』(日本テレビ系)では、CMで顔を知られるようになっていた広瀬すずが初主演。女優として道を開いたのは記憶に新しい。芳根は10月公開の映画『先輩と彼女』でもヒロインを演じ、こちらの相手役の主人公も『表参道』で共演する志尊淳だ。

 フレッシュな俳優たちが競い合う学園ドラマは、本来は見どころが多いもの。『表参道高校合唱部!』で生徒たちが合唱を通じて心を通わせ合っていくのは、大人が観てもノスタルジーと相まって胸を熱くさせるものはある。新たなスターを輩出するという意味でも、エンタテイメントシーンにとっての意義があり、その役割は大きい。この先も残ってほしい、火を消してはいけないジャンルだ。

 ところで10月26日から、民放キー局5社が連携したテレビポータル『TVer』がスタートする。同サイトでは、放送済みの一部番組の無料動画配信を行う。前期のドラマでは、若者層がターゲットの月9ドラマ『恋仲』(フジテレビ系)は、局の見逃し配信での再生数が断トツで、10代の視聴割合が高い。そこでの視聴が同ドラマの視聴率が初回から大きく落ちず、10%前後で推移する下支えになった様子。学園ドラマも良質なものを作り続ければ、若者にネットやスマホ経由で見直されていく可能性があるのではないだろうか。
(文:斉藤貴志)
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