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(更新: ORICON NEWS

AKB主演も“ハードコア”過ぎる『マジすか学園5』は意欲作か? 暴挙か?

 現在放送中のAKB48グループ総出演のドラマ『マジすか学園5』が物議を醸している。全12話のうち最初の2話のみ地上波(日本テレビ系)で放送し、残りは“過激なシーンが多いため”、動画配信サービスのHulu限定で配信。これまでの『マジすか学園』シリーズもヤンキー女子高生同士が“テッペン”を争うというストーリーから、それなりにバイオレンスなシーンもあったが、想像以上にハードコアな内容に、「三池崇史監督作品?」「超豪華なVシネマ?」などの声も上がるほど。アイドル主演ドラマに、なぜここまで過激な描写を盛り込んでいるのだろうか?

地上波よりも規制が緩い動画配信だからこそ、過激な内容も可能

  • 『マジすか学園5』で連ドラ初主演 のHKT48の宮脇咲良(撮影:鈴木かずなり)

    『マジすか学園5』で連ドラ初主演 のHKT48の宮脇咲良(撮影:鈴木かずなり)

 『マジすか学園』のシリーズ1作目(2010年1月〜3月)は、前田敦子が主演し、AKB48だけでなく姉妹グループのSKE48やSDN48のメンバーも多く出演。現在放送中のシリーズ第5弾では、女子高の抗争を超えて暴力団やマフィアなどの裏社会まで絡む過激さだ。敵対する竜頭組の若頭には、『闇金ウシジマくん』『クローズZERO』などに出演し、アンダーグラウンドな役なら今や日本屈指の俳優・やべきょうすけ。その組に癒着する刑事に岡田義徳。そして竜頭組のフロント企業の会長に、映画『凶悪』で不動産ブローカー役の演技で、異常なまでの狂気を感じさせたリリー・フランキーと脇を固める俳優も“本気度”を感じる。

 ドラマの動画配信サービス限定という放送形態自体はそれほど特別でもなく、現在では当たり前になってきている。昨年、西島秀俊主演でヒットした『MOZU』も、TBSと有料衛星放送局のWOWWOWとの共同制作。両局交互に放送されるという形態が注目されたが、“視聴料”を取って制作できるというメリットは大きいだろう。これまでのCM収入だけではなく、それなりの製作資金があるので豪華なキャスティングも可能だ。実際、WOWWOWの『連続ドラマW』シリーズでは、織田裕二や堺雅人といった人気俳優が主演しており、内容も大人向けの重厚な物語で、一部ではかなりの評判になっている。

 なぜ民放ではなく、Huluでの動画配信なのか? 理由は、これまでの『マジすか』を超える“過激な内容”だからとも言える。今作は、シリーズの見せ場である殺陣シーンにガンアクションが追加され、暴力シーンもエスカレートしているので、とても地上波では流せない。ストーリー的にも、チャイニーズマフィアが経営する“風俗店”で働かされている“女子高生”を助けにいくなど、Vシネマ風の“アダルト色”も強くなっている。第7話にいたっては、横山由依の“透け乳首”疑惑がネットを席巻するほどだ。視聴者からの問い合わせ、クレームなども含め、放送倫理(BPO)的なことを鑑みれば、地上波よりも規制が緩い動画配信サービスを選択するのもうなずけるし、結果として、制作側も遠慮なく本気で取り組むことができるので、ドラマの内容も本格度を増し、質も高まっているのだ。

アイドル×不良は、親和性が高く定番

 『マジすか学園』に限れば、超人気アイドルグループ・AKB48のメンバーがたくさん出演していること、そして本業では見られないメンバーたちの“不良”な姿が見られることが、最大の“ウリ”だ。ただ、演技力はまだまだという部分もあって、制作側もそれをテロップなどでネタにしたりもしていた。

 実はこの「アイドル×不良(もしくは暴力団系)」という意外性・ギャップをウリにする手法は、長年定番になっているのも事実。代表作が角川映画『セーラー服と機関銃』であり、1作目が薬師丸ひろ子(1981年)、ドラマ版の原田知世(1982年)、長澤まさみ(2006年)、そして2016年公開予定の映画『セーラー服と機関銃−卒業−』は“千年に一人の逸材”とされるアイドル・橋本環奈主演と、4度もリバイバルされるキラーコンテンツとなっている。その他、1980年代の大映テレビ制作のドラマ『不良少女と呼ばれて』(いとうまい子主演、TBS系)を始め、斉藤由貴・南野陽子・浅香唯主演の一連の『スケバン刑事』シリーズ(1985〜1987年)は一世を風靡し、中森明菜にしても当初は不良っぽさをウリにしていた。こうして見ると、「アイドル×不良+(軽めの?)暴力」というのは親和性が高く、普遍的に“食べ合わせ”がいいとも言える。

 今や、自他ともに認める日本のトップアイドル集団となったAKB48。そしてその彼女らが出演する『マジすか学園5』。しかも同作は、上記のアイドルと不良性に関する方程式に則り、これまでのシリーズを超えて“過激さ”をエスカレートさせてるようだ。彼女らのファン層を考えれば、若年層を幅広く取り込むためにも本来は地上波が効果的だ。しかし現在はBPO上、ドラマにかかる規制は昔に比べるとはるかに厳しい。となれば、内容をシリアスで本格的なものにしようとすればするほど、地上波を離れるしかなく、しかも規制が緩いぶん内容の過激さもエスカレートするといった傾向を持たざるを得ない。そうした意味では、『マジすか5』の過激さはある種必然だったのかもしれない。

 あと数話で終了する『マジすか学園5』だが、ドラマの内容のみならず、視聴者のネット上の反応も回を追うごとに過激さを増しているようだ。もはや『マジすか』は、アイドルを起用した過激なドラマという以上に、番組の自主規制や地上波と有料放送・動画配信等々、テレビ業界における様々なテーマを浮き彫りにさせる“起爆剤”ともなりそうな勢いである。

(文:五目舎)

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