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岩井俊二監督インタビュー『自分の世界観が出ている 悪友少女ふたりの関係性』

新作は自由奔放にやらせてもらっている

――気になる新作は、大人の話なんですね?
岩井(女優の)黒木華が主演で、昨年の11月くらいから少しずつ撮っています。今回は撮影スケジュールが飛び飛びなので、撮りながらそれをベースに小説に起こし直したり、またそこで出たアイディアを、シナリオにして撮影現場に戻したり。撮り始めた頃とは、ちょっと話が変わっていたり、撮るものもどんどん膨らんだりしていて。わりとそういう発想を許してくれるチームなので、自由奔放にやらせてもらっています(笑)。

――時代の流れにあった制作環境ですね! 監督のなかでは、デビュー当時より、今の方が制作しやすくなっている実感はありますか?
岩井どうですかね。僕がデビューした頃は、日本映画はだいぶ低迷していて、若い女性が日本映画なんてダサいから観ないという、レッテルの貼られた時代でした。それに挑まなくてはいけないから、あのときは過酷でしたよね。欧米化が侵食していた時代で、日本古来のものはあまり評価されていなかった。僕が映画監督になって、取材を受け始めたときに「どんな作品が好きですか?」と聞かれて『犬神家の一族』(1976年/市川崑監督)と答えたら、周りのコアな映画ファンが「ああいう発言はしない方がいい、そういうときは(ジャン=リュック・)ゴダールとか溝口(健二)と言っておくんだよ」って。それもステレオタイプだなって思ってた(笑)。

 自分の場合、何に影響を受けたか? というのは、偏りだと思うんですよね。教本通りにメインストリームを踏襲すると、他の人と同じラインナップになってしまうから、作り手としては自分の個性になっていかない。だから観客として出合う作品は、作家で追いかけず、ただ出合いだけ、縁だけに絞って、ここまで来ました。それが自分の(観客としての)フィルモグラフィになっている。それはとてもユニークだと思うんですよ。さっき話した友人観とも近いのかも知れないですね。

意外に影響を受けやすくてすぐ好きになってしまう

――映画に関しては「習うのはつまらないから」と、人に習わず、全部独学でやると決めていたそうですね。教育というものを完全に拒否した独自のスタイルを貫くなかで『犬神家の一族』のほかに、どのような作品との出合いがありましたか?
岩井 『犬神家の一族』の次はドラマ『座頭市物語』(1974〜1975年)でした。テレビドラマシリーズを繰り返し観ては分析して、ものすごく勉強しました。『座頭市』はテレビシリーズだけで、映画の方は観ていないんです。体系化されていないっていう(笑)。そのあと宮崎駿さんの『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)とかを観て。意外と勝新太郎さんの監督作と宮崎駿さんの作品ってよく似てるんですよ。『紅の豚』(1992年)なんて『座頭市』にしか見えない(笑)。

 篠田正浩監督にも影響を受けているのですが、たまたま観た『はなれ瞽女おりん』(1977年)にものすごくハマって。あれだけたくさんの作品を作っているのに、篠田監督にお会いすると『おりん』の話しかしないイヤなファンっていう(笑)。観客として出合う作品って、半年くらい引きずってしまうので、要注意なんですよね。ふだんあまり観ていないから、ものすごく影響を受けてしまうんです。たまに映画祭で審査員とかやると、いい映画ばかり観ちゃって、1年くらい映画を観なくてもいいくらい、ずっと反芻してる。意外と免疫がなくて、観客としてはすぐ好きになってしまうんです(笑)。
(文:石村加奈)

花とアリス殺人事件

 石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生の“アリス”こと有栖川徹子(蒼井優)は、1年前に3年2組で起こった“ユダが、4人のユダに殺された”という噂を聞く。さらに、アリスの隣の家が“花屋敷”と呼ばれ、近隣で怖れられていることも。その花屋敷に住む同級生のハナなら“ユダ”について詳しいはずだと知ったアリスは、花屋敷に潜入する。そこで待ち構えていたのは、“ハナ”と呼ばれる引きこもりのクラスメイト、荒井花(鈴木杏)だった。2人の少女の“世界で一番小さい殺人事件”の謎を解く冒険が始まる……。

監督:岩井俊二
キャスト(声の出演):蒼井優 鈴木杏 勝地涼 黒木華 木村多江
【ブルーレイ&DVD情報】 【公式サイト】(外部サイト)
(C)花とアリス殺人事件製作委員会

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