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高良健吾インタビュー『自分がどういう人間なのかわからない』

「ずっとこの役のために準備をしてきたのだと思った」。昨年末に行われた映画『悼む人』完成報告会見での主演俳優・高良健吾の言葉の重みが、観賞後に胸に迫る。一つひとつの作品に真摯に役に取り組んできた俳優が、デビュー10年目に出会った本作への思いを聞いた。

表に出すだけが主張だとは思わない

――本作で演じられた主人公の坂築静人は、他者の死と向き合うことで自分の生きる道を模索する、非常に難しい役どころでしたね。
高良 誰もが共感できるキャラクターではないと思っています。静人の行為が批判の対象になったり、この人の姿がおこがましく映ることもあると思う。だけど僕は、坂築静人の人生を否定されることは絶対に嫌だった。否定されないために、映画のなかでどう居るか、それだけを考えていました。「静人は、あなたにどう映りましたか?」というお母さんの台詞がありますが、それがよりどころになりました。静人の行為が誰に対して響いたか? とか、誰かを変えたい、自分のことをわかってほしいとか、意識が外側へ向かい過ぎるといやらしくなる。静人だって、誰かに赦してほしいわけじゃない。客観的に考え過ぎてブレないように、僕の感じたまま、とにかく主観を信じて演じました。

――静人は、見知らぬ人の死を悼むために全国を放浪します。撮影中、実際に歩きながら、どんなことを考えていましたか?
高良 もしかしたら自分の行為は、誰かを傷つけているのかもしれない。自分が誰かを救っているなんて気持ちはなくて、まだ答えが見つからなくて、迷っている。そういう気持ちでとにかく歩いて……。無心のときもありましたけどね。朝日がだんだん上がってきたり、だんだん(太陽が)沈んでいったり。小さい頃に田舎で見ていた景色でした。そういうのは、僕にとっては特別(な風景)でしたね。でも、ただ歩くとか、難しかったです。(設定上)前に歩いたことのある道は一応頭に入っているから“ここ、昨年も来た道だなあ”というのは、歩いていてわかるんです。そういう積み重ねが、役の説得力になる気がして。見えないけれど、伝わるものって絶対にあると思う。そのシーンで表現しなくてはならないことを、表に出すだけが主張だと僕は思わない。恐らく、見えない表現というものにチャレンジしていたんだと思います。ただ静人という人間が在る。その難しいところはできたんじゃないかなあ、とは思ってるんですけどね。自信とかじゃなく(苦笑)。

――なぜ静人は悼むのか?……説明もないまま、一途に歩き、悼むその姿を見つめていると、静人という人の存在を受け入れたいという心持ちになっていました。まるで映画の登場人物たちが、彼と出会うことで、図らずも大きな影響を受けたように。
高良 案外自分のことって、自分以外の人が浮き彫りにしてくれるものなのかもと思います。僕は自分がどういう人間なのか、わからないんです。この仕事をするようになって、自分が“NO!”と思っていたことを肯定しなきゃいけない役が多かったからかも知れません。例えば『罪と罰 A Falsified Romance』(2012年/WOWOW)をやったときとかはしんどくて。なぜ人は人を殺しちゃいけないのか? って、普段なら全く考える必要のないことを、毎日真剣に悩んでいました。役のせいで、考えなくていいことをたくさん考えて、自分と向き合う時間が多くなると、自分の嫌な部分もたくさん見えてくる。だから正直、自分自身についてはもう本当に興味がないというか。寂しいことだけど(苦笑)。でも役に完璧になり切れるとも思わないし、自分の体を通るからには、自分自身も役に表れていると思う。役の感情が自分の人格に影響しているとも思います。そういう意味では、自己紹介って自分の作品を観てもらうことだったりもすると思う。

試してきたことが形になりはじめている

――自分自身も、人生も、未来も、本来わかるはずのないものだからこそ、答えの見つからない旅を続ける静人の姿に、それぞれの人生を重ねてしまうのかも知れませんね。静人は旅への意欲を失いかけたとき、母親の言葉に励まされますが、俳優として新たな旅に出るための心構えのようなものはありますか?
高良 新しい自分を見つけようと思いますし、自分から出会いにいかなきゃいけないんだと思う。だから、いつでも行ける準備はしています。だけど、普段こそ、こう(前のめりに)なり過ぎちゃダメっていうか。こうなるのは仕事の現場だけでいいなって。それは意識しています。きれいごとって言われたらそれで終わっちゃうんですけど、偏見なく、ちゃんと心で感じられたら、ストレスってないですから。いろいろ目だけで見ていると、考え過ぎて疲れますし。普段はなるべく、ふわっと全体が見えるような状態が、いちばん落ち着くなあって。

――「ずっとこの役のために準備をしてきたのだと思った」という会見での言葉が、印象的でした。俳優という果てしない旅の途中で、本作との出会いをどう捉えていますか?
高良 これまでの10年の道のりが導いてくれた作品だと思いますし、またここから11年、12年目へと続いていくと思っています。役のせいで、とばっかり考えていた時期もあったけれど、逆に役のおかげでということもたくさんある。死に近い役が続いて、ずっと死について考えていた頃は苦しかったけれど、ちゃんと向き合ったと思うし、役に学ばせてもらって、評価されたこともあったと思う。あの時間があったからこそ、今がある。だから自分と向き合うことは苦しい作業だけれど、自他がなくなるギリギリまで知っていかないと、と思います。昔は、知らないことが武器だと思っていたけれど、それは違う。ずっと知らないままだと、衰えていく。今は、いろんなことに気づいていきたいって思っています。自分で選んだこのやり方で、ブレずにやり続けていければ、大丈夫だと思う(笑)。

――現在放送中のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』で、高良さんの演じる新しい高杉晋作像も楽しみです。
高良 がんばっています(笑)。これから10話以降、事件が起きて、もっと楽しくなっていきますよ! 『悼む人』もそうですが、昨年出会った作品は『きみはいい子』(呉美保監督/初夏公開予定)も『花燃ゆ』も、ずっと試してきたことが何らかの形になりはじめているのか、今までにない感触がありました。これまでとは違う僕を観ていただけるんじゃないかなと、自分では思っているんですけどね(照笑)。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

悼む人

 死者を“悼む”ために全国を旅している坂築静人(高良健吾)に出会ったゴシップ記事を書き続ける週刊誌記者・蒔野抗太郎(椎名桔平)は、静人に目をつけ取材をはじめる。その頃、自らの手で夫・甲水朔也(井浦新)を殺した過去がある奈義倖世(石田ゆり子)と出会う。夫の亡霊に苦しむ倖世は、救いを求めて静人の旅に同行するが……。

監督:堤幸彦
出演:高良健吾 石田ゆり子 井浦新 貫地谷しほり 山本裕典
2015年2月14日全国公開
(C)2015「悼む人」製作委員会/天童荒太
【公式サイト】(外部サイト)【予告編】(外部サイト)

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