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“昭和的な女性”を自然に演じる若手女優・黒木華
◆また新しい顔を見せてくれそうな2015年
ベルリンの興奮が冷めやらぬ、昨年4月からスタートしたNHK連続テレビ小説『花子とアン』では、ヒロイン・花子の2歳年下の妹・安東かよを無敵の和服姿で好演。花子に憧れつつも、職業婦人として姉とは違う道を歩いていく、けなげな姿が印象的だった。24歳とは思えぬ包容力と色香で、かっぽう着を着こなす黒木だが、2015年はまた新しい顔を見せてくれそうだ。
かっぽう着を脱ぎ、純白のウェディングドレス姿を初披露した、映画『繕い裁つ人』(公開中)。中谷美紀扮するヒロイン・市江のかたくなな心に兄の藤井(三浦貴大)とともに変化をもたらす、キーパーソンの葉子を演じている。ラストでは、市江が手がける“一輪の花”をイメージしたウェディングドレスをまとう、幸福な花嫁姿で作品に花を添える。ドレスに風船をあしらった、幻想的な結婚式のシーンで、幸せのあまり、頬を薔薇色に染めた黒木の息を呑む美しさには、父親じゃなくても感涙必至。
続く2月28日には、ももいろクローバーZが主演を務める、青春映画『幕が上がる』が公開される。黒木は、主人公の、悩める弱小演劇部員たちの前に降臨する、かつて東京で“学生演劇の女王”と呼ばれた新任の美術教師・吉岡美佐子を熱演。一見クール、しかし演劇のことになればとたんに熱血漢になるという、ミステリアスな魅力を持つ大人の女性だ。低い声音、束ねていた髪をばっさりとほどく、白衣を翻すなどのキリリとした立ち居振る舞いで、学校の日常をたちまちステージに変えてしまう神秘的な役どころで、ももクロメンバー扮する女子高生のハートに火をつける。
◆純日本的な独特の存在感で築き上げた立ち位置
今年3月7日に前編、4月11日に後編が公開される、宮部みゆきの傑作ミステリーを映画化した大作『ソロモンの偽証』では、主人公の中学生たちを取り巻く、ダメな大人のひとり、非力な担任教師・森内恵美子を巧みに演じている。担任する男子生徒の転落死事件にまつわる告発状を、独断で破棄した疑いをかけられ、学校を追われてしまう新米教師の心の弱さを、目線や立ち姿、歩き方など、所作の一つひとつで表現する。同じ教師役でも、『幕が上がる』とは対照的な役どころを見事に演じわける、その柔軟な演技力に驚かされるばかりだ。
モデル出身の人気若手女優らが華やかに活躍するエンターテインメントシーンのなかでも、黒木はそんな多くの女優たちとはイメージが異なる、独特の立ち位置をしっかりと築いている。それは純日本的であり、昭和の女性を思わせる顔立ちと醸し出す雰囲気によるところもあるだろう。それに加えて、文学的とも言われる知性と深みのある、黒木が身につけてきた人間性が、演じる役柄にもにじみでて唯一無二の存在感を放っている。
ここ数年の黒木の出演作が人並み外れて多いことも、さまざまな作品のなかで必要な要素として重宝されていることを証明している。そんななかでも、最近の役柄に共通しているのは、大人の落ち着いた女性、年輪を重ねた大人の色気を醸し出す女性を、24歳という若さで自然に演じていること。もちろん『リーガルハイ』や『まほろ駅前番外地』(テレビ東京系)などのはじけたキャラクターも違和感なく体現してきているのだが、ほかのだれでもなく黒木が演じる“大人の女性”が今注目を集めている。
山田洋次監督最新作『母と暮せば』(12月12日公開予定)では、吉永小百合との共演を果たす黒木。山田映画の新たなマドンナとしても、世界の映画ファンから注目を集める。この先の黒木の活躍からますます目が離せない。