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小西真奈美『30代女性の美しさとは―鈍感にならない!仕事観と女性観を語る』
女性って年々強くなっていく気がしていて
小西ここ数年なんですけれど、30代になってからバレエを始めたんです。それで、30代になってからこんなに恥をかくことがあるんだとか、こんなにできないことがあるんだってことを思い知らされて、初心に戻ったんですよ。ゼンゼンできないことがある。それでも諦めずにがんばるぞ! ちょっとできて先生に褒められてすごくうれしいとか。そういう気持ちになれているんですよね。
あと、長期で海外にアパートを借りて住んでいたんですけれど、本当に困ることが多くて、そのたびに人に助けられました。そんな経験をして、あらためて人と一緒に作品を作って世に出すことを、すごく新鮮に感じています。年齢や経験を重ねていくと飽きてきたり、仕事をただこなすようになる人もいるって聞くんですけれど、それがまったくなくて。30代になってまるで新人かのように作品に取り組めている自分がいます。それこそ一緒に仕事をしてくださるスタッフさんにとても感謝するし、役と対峙するときもすごく新鮮に感じるんです。それがこうやって世に出ていく過程もすごく楽しくて。それって、たぶんバレエをしていることが相乗効果を生んでいるのかなって思います。
自分自身が人として困ったりしていると、改めてフレッシュな気持ちで役を見ることができるのかなと感じて、すごくいいタイミングでいい経験をしたと思っています。20代後半に一度、私はこのお仕事を始めたときと同じくらいの情熱を持って作品に臨めているのかな?って毎回自分に問いただしていた時期があったんです。今はそんなことがまったくなくて、すごく新鮮に取り組めている自分がいます。
――仕事を含めてすごく素敵な生き方をしていますね。では、女性として大切にしていることは?
小西勝手な私の想像ですけれど、女性って放っておいても年々強くなっていく気がしていて。若い頃は強くてカッコいい女性になりたいと思っていたんですけれど、最近は、恥じらい、かわいらしさとか、女性として生まれたからこそ持っているモノに対して鈍感にならずにいたいなって思いますね。
――そのために努力していることってあります?
小西かわいいモノに出会ったりしても、女性って年齢で括ろうとすることが多いじゃないですか。もう年だからとかいうけど、ミニスカートがかわいいと思ったら履けばいいし、ピンクのチークがかわいいと思ったらつければいい。そういう括りはなくてもいいんじゃないかなって自分のなかでは思っています。あとは季節の移り変わりを大事にしていると、女性は身綺麗でいられるって聞いたことがあるんです。夏だから部屋にヒマワリを飾ってみようとか、季節のお菓子を見つけたら誰かに差し入れしようとか。そういうモノを感じる心を大切にしたいですね。
不器用にしか生きられない女性が愛おしく思えた
小西まずオープニングの遺体安置所に流れる声は……? と思ったら八代亜紀さんで、そこで鷲掴みにされて、なんて素敵なオープニングなんだろうと思いました。そこからの滝(の風景)というのがすごく好きだったのと、随所に日本的な表現が散りばめられていたのがよかったです。
――小西さんが演じた桜子にはどんなイメージを持っていましたか?
小西もちろんフィクションなんですけど、桜子自身がスナックのママさんであったり、野菜を育てていたり、スパイみたいなことをやったりといろいろな顔があるのに、この人の一本筋が通った感じはいったい何なんだろうと思ったときに、あ、これは母性だなと。ただただ病気の息子を救いたいだけで、不器用な彼女が翻弄されていく。そのことがすごく新鮮に映ったんですよ。台本を読んで、これを映像にしたらどうなるんだろうというのが一番最初に感じたことです。
本当はもっと違うやり方もあるんだろうなと思いながらも、不器用にしか生きられない彼女がすごく愛おしく思えて、母は強しって本当なんだなぁって。子どものためなら何でもするってこういうことなんだって思いました。そう感じたのが決定の前段階の台本を読ませていただいた時点で、いろいろな顔の演じ分けをしないほうがいいと思ったんです。桜子が必死になってやっていることがすべてなんだって。監督を含めた脚本の方たちは男性なんですが、そういった自分の感想を話したとき、みなさんに「女性的な視点は新鮮です」と言っていただいて、いい話ができたなと思いました。
――衝撃のラストシーンには震えました。この作品で伝えたいことって……どう思いますか? 伝えたいことっていうのではないのかな?
小西(笑)私も観たあとに、それをすごく思ったんですよ。見どころはいっぱいあるんですけれど、どう感じてほしいとか、何か伝えるべきことって考えたときに、何だろう?って。ホラーでもなくサスペンスでもないし、でもこの感じは何だろう? あるとすれば、一種の教訓かな? 人間って愚かなところがあって、だけどそこが愛おしいという。
――私も似たようなことを感じました。執着心が狂気を呼ぶこともあるな……と。
小西そういう意味での教訓ってありますよね。強すぎる想いって何かを破壊してしまう力になりますし。どれだけ技術が発展しても、人には心があってそれに従って突き進むし、でもそれによって愚かなこともしてしまう。観たあとに一抹の切なさみたいなモノと、ちょっとした愛情を感じたんです。観る人によってまったく違うとは思うんですけれど、愛情だけでこれだけ愚かなことができるっていうのも人間にしかないと思うので。人間くさいというか、すごくアナログなモノを私は感じました。いろいろな人の意見を聞いてみたい作品です。
文:三沢千晶/撮り下ろし写真:片山よしお
スタイリスト:西 ゆり子/トップス(aimo・richly)スカート(EDWARD ACHOUR)
風邪(ふうじゃ)
関連リンク
・『風邪(ふうじゃ)』公式サイト