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【カンヌ映画祭】河瀬直美監督、コンペ部門出品作『朱花の月』に込めた“いのち”への思い

 5月11日〜22日に南仏の高級リゾート地で開催される『第64回カンヌ国際映画祭』で、最高賞「パルムドール」などを競うコンペティション部門に、最新作『朱花(はねづ)の月』を出品する河瀬直美監督。同作で河瀬監督は、古代の記憶が残る『万葉集』の地・飛鳥地方を舞台に、現代の男女を通して人が「生き」、「待つ」ことの意味を描き出そうとした。

最新作『朱花(はねづ)の月』を『第64回カンヌ国際映画祭』に出品する河瀬直美監督 

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 タイトルの「朱花」とは、『万葉集』に出てくる言葉で「赤」を意味するもの。赤は、人間が最初に認識した色とも言われ、その意味は「血、太陽、炎」を連想するところからきている。河瀬監督は「その三つの要素は“いのち”の象徴のようでもある。その一方にある、褪せやすい色の「赤」に見る儚さ――その二面性をタイトルに託した」という。

 古代より神が宿るとされた畝傍山、耳成山、香具山の“大和三山”は、時は過ぎて現代も変わらぬ姿でいる。この地で祖父母の時代に果たせなかった想いを受け継ぐように今を生きている拓未(こみずとうた)と加夜子(大島葉子)。主人公の2人を通して、目には見えない遠い過去と未来を、映像で目に見せつけていく。

 河瀬監督は作品について「古代人のように生きること。それは届かないことが前提の、それでもかまわないという潔い想いなのかもしれない。そうして、伝わることのないままに、逝ってしまった命は無数だ。いつの時代もメディアや情報は、特異なもの目新しいものをピックアップし、そうして歴史に残っていくものは、ほんの一部だが、今回わたしは、そういったものからは抜け落ちてしまったけれど、その時代を懸命に生きた人の物語を紡いだ」。

 「命は、力強くもはかないもの。ならば、こうしている今、今日に感謝して生きる、ということ。わたしたちは生かされたいのちを、精一杯生き抜くということを通して、百年千年万年続く人類の継承の一部として、非常に重要な役割を担っているのだろうという確信とともにこの映画を世に出します」と語っている。

 河瀬監督は同映画祭で、1997年『萌の朱雀』でカメラドール(新人監督賞)、2007年『殯(もがり)の森』でグランプリ(審査員特別大賞)、2009年は同映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」を、女性、アジア人として初めて受賞している。そして今回、『朱花の月』が同映画祭で世界初上映されることになった。日本で起こった大震災及び原発事故のニュースが世界中を駆け巡っている中、日本に古くからある風景や人々の営みを映し出した同作をカンヌの映画人たちがどのように受け止めるか、注目される。

 『朱花の月』は9月より東京・渋谷ユーロスペース、奈良・TOHOシネマズ橿原ほかにて全国順次公開される。

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  • 最新作『朱花(はねづ)の月』を『第64回カンヌ国際映画祭』に出品する河瀬直美監督 
  • 映画『朱花の月』 9月より渋谷ユーロスペース、TOHOシネマズ橿原ほか、全国順次公開 
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