ヘンリー・セリック監督がプロモーションのため2月来日。イラストレーターの上杉忠弘さんと久しぶりの再会を楽しんだ
“怖いもの見たさ”で女性客の心をつかむ『コララインとボタンの魔女3D』
公開中の映画『コララインとボタンの魔女3D』が“怖いもの見たさ”の本質を突いて、女性客の心をつかんでいる。公開1週目の週末興行(2月19日〜21日の3日間)で4万5643人を動員。東京・TOHOシネマズ六本木をはじめ、全国の上映劇場によると、客層は圧倒的に女性客が多く、年代にかかわらず2人以上のグループの来場が目立つという。
同作は米国の小説家、ニール・ゲイマンが2002年に出版した児童文学を、ストップモーションの名手『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)のヘンリー・セリック監督が映画化。かわいいだけでない不気味な場面や、大人もはっとするようなダークな感情の機微を描くことに定評のあるセリック監督が、その才能を遺憾なく発揮している。
少女コララインは、引っ越した先の新居で見つけた秘密のドアの向こうに、理想の愉快なパラレルワールドが広がっているのを発見する。そこの住人たちはなぜか、みんな目が洋服のボタン…。願い事を何でも叶えてくれるパパとママがいて、コララインはその世界の虜となる。しかし、それがワナだと気づいた時、現実の世界の両親が消えてしまっていたという、ちょっと怖い話だ。
日本での公開に合わせて来日したセリック監督に、映画化で何を目指したのか聞いた。
◆ボタンの目は、あなたは私の人形になりなさいというメタファー
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【セリック監督】 原作者のゲイマンが、本を出版する前に原稿を送ってくれた。半分も読まないうちに、ストップモーションで映画化するビジョンが浮かんだ。そういうことは滅多にないので、すぐに映画化を申し込み、脚本の執筆に取りかかったんです。それからが長い道のりでした。映画会社がなかなか決まらなくて…。ハリウッドのメジャースタジオからは、子供向けのアニメーション企画としては怖すぎると敬遠されたみたいです。
――ちょっと怖い話が好きなんですか?
【セリック監督】そうですね。でも、アニメーション作品が全て明るい色調で、明るい物語で、明快でなければならないなんて、そんなこともないはず。初期のディズニーの短編映画にだって、悪魔や魔術師が出てくる作品があって、私は大好きなんですが、誰でも怖いものに惹かれませんか?
――邦題では、“ボタン”と“魔女”が怖いもの見たさを誘うキーワードになっています。
【セリック監督】人形やぬいぐるみの目に、ボタンが使われることって多いですよね。でも、もし、人間の目がボタンになったら…と思うと、急に怖くなる、何か戦慄を覚えませんか? 魔女は別の世界を作ってコララインの気を引き、ずっとここにいたいなら、コララインも目をボタンにしなさいと迫ります。すべてを与え、望みを叶えてあげる代わりに、視力を諦めなさいと言う。つまり、ボタンの目は、あなたは私の人形になりなさいというメタファー(隠喩)。人形として生きることになったら、きっと楽しくないよね、という想いが入っています。
――ストップモーションの魅力は?
【セリック監督】CGもセル画も好きですが、ストップモーションはパペットやセットが実在しているところが好きです。アニメーターたちがパペットを通して演技をしているんです。それを観るのが好きだし、パペットたちの世界に身を置くことが好きなんです。
◆日本人初の快挙! アニー賞受賞の上杉忠弘さん
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同作のコンセプトアートを担当したイラストレーター、上杉忠弘さんは2月6日、国際アニメーション協会(ASIFA)より発表された『第37回アニー賞』で日本人初の最優秀美術賞を受賞した。
上杉さんは1966年生まれ。日本在住のイラストレーターだが、「1950〜60年代のアメリカのイラストレーションや、UPA(米アニメーション制作会社、1964年にアニメーション部門を閉鎖)のアニメーションのスタイルに影響を受けた」という。今回、アニー賞で最優秀美術賞を受賞し「アメリカで名誉ある賞を受けて、認められたのは嬉しい。まがい品じゃないことを証明できた」とホッとしたように話す。
きっかけは2004年、上杉さんのイラストがアメリカのネット掲示板で話題になったことがあった。それを読んだピクサーの絵コンテアーティスト、エンリコ・カサロサが、いきなり上杉さんを訪ねてきたことがあったそうだ。そこから人づてに上杉さんの評判がハリウッドに伝わり、セリック監督から依頼が届く。
「最初、キャラクターのたたき台になるような作品を3週間で描いてくれといわれました。キャラクターだけではイメージが伝えられなかったので、背景も描きました。原作を読んで僕が一番描きたいと思った、世界が消えていくシーンのイラスト見た監督が、『これだ!』と思ってくれたようで、そのまま映画に反映されていたのは嬉しかったですね」。
セリック監督とのやりとりはすべてメール。毎週のように「次はこのシーンにかかわるものを何でもいいから描いてください」というお題が届いた。上杉さんは「好きに描いていいと言われるとかえって難しいのですが、セリック監督とは過去のアニメーションの趣味が合った。お互い言葉が通じないというのも、かえって役立ったと思えるほどでした」と、お互い旧知の友のように仕事ができたという。
同作のダークな一面を背負うボタンの魔女については、「キャラクターにとって目はとても重要なパーツで、目で感情表現に変化をつける。それをパラレル・ワールドでボタンにしてしまうのが面白いと思いました。何を考えているのかわからない不気味さが増しますよね。でも、ミッキーマウスも初期の頃は黒いボタンのような目をしていましたし、ボタンみたいな目をしたキャラクターは結構いて、意外と感情移入できるんですよね。それもまた不思議だなって、昔から思っていました」。
ちなみに同作は、来月7日(現地時間)に行われる『第82回アカデミー賞』の長編アニメーション部門にノミネートされている。
| 『コララインとボタンの魔女 3D』 築150年のピンクパレス・アパートへ引っ越したコララインは不機嫌だった。引っ越したばかりの新しい町には友達もいないし、忙しい両親は仕事に明け暮れて全然構ってくれない。仕方なくひとりで新しい家を探検していたコララインは、不思議なものを見つける。それは、壁に封印された、コララインの背丈よりも小さなドア。その封印されたドアを開けた、コラライン。そこでは、ボタンの目のママが、願いを何でもかなえてくれる。しかし、現実の世界へ戻ると、本当の両親が消えていた──。 原題:Coraline 監督・脚本:ヘンリー・セリック 原作:ニール・ゲイマン著『コララインとボタンの魔女』(角川書店) 日本語吹替えキャスト:榮倉奈々、劇団ひとり、戸田恵子 配給:ギャガ powered by ヒューマックスシネマ 2010年2月19日(金)より全国ロードショー (C) Focus features and other respective production studios and distributors. 公式サイト|予告編 |
2010/02/26