俳優の堤真一が主演を務める、TBS系日曜劇場『GIFT』(毎週日曜 後9:00)。いよいよ迎える最終話を前に、本作で企画・原案・演出を手がけた平野俊一監督にインタビュー。エース・宮下涼(山田裕貴)の死を乗り越え、日本選手権決勝という大一番で「シャークヘッド」(以下、シャーク)戦に挑むブルズ。そのシーンに込めた思いや、撮影現場でのキャストとのエピソード、本作のテーマなどについて、語ってもらった。
■イベントで受けた温かい声援――「伍鉄さんが変わった」と反響も
――視聴者からの反響で、特に印象に残っている声はありますか?
たくさんありますが、第6話が放送された後の「伍鉄さんが変わった」という声は特に印象的でした。車いすラグビーが舞台ではありますが、一方で“伍鉄の家族のドラマ”でもあるという、こちらが意図していることを視聴者の皆さんもしっかりとくみ取っていただいているなと感じました。
ドラマを見て「社会の見えていなかった新たな“軌道”を発見させてくれる」という声にも、とても感謝しています。車いすラグビーというパラスポーツが、「ともに手を携えて歩むための重要な役割を担っている」という声なども、印象に残っています。
――5月3日に開催された「2026ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」のスペシャルイベントに、選手役の方々とともにゲスト登壇されていましたが、会場の熱気などはいかがでしたか?
日本代表が優勝した決勝戦の直前に行われたイベントに出席させていただいたのですが、観客の皆さんが選手ではない僕たちにも握手を求めてくださったり、「頑張ってください!」といった温かい声援も多くいただきました。車いすラグビーへの熱意や愛情がとても伝わってきたので、僕たちも逆に襟を正して、より良い作品にできるよう頑張ろうと思いました。
■“ぶつかり合う”意義と問い続ける意思
――改めて、平野監督が本作で描きたかったことを教えてください。
特にコロナ禍を経て、“ぶつかり合っていく”ということが少なくなってきている印象があったんです。ぶつかり合うことを避けて“ていよく”接していくだけでは、実は得られるものは少ないのではないか、と。やはり芯から分かり合うためには、あくまでルールの範疇(はんちゅう)ではありますが、みんなでぶつかっていく必要があるのではないかと、しっかりと伝えたい思いはありました。
「答えを出す」「答えを見つけたい」とは言っても、そんなにすぐには見つからないですし、出ないことも多々ある。そんな中でも、問い続けることで何か思いがけないものを得られることもあります。登場人物一人一人の描写にも、そういった思いを込めて描いているので、ぜひくみ取っていただけたらうれしいです。
■「かっこいい画は絶対に撮らない」堤真一・伍鉄へのマイルール
――伍鉄の考え方や人との接し方も変化していく中で、堤真一さんとはどのようなお話をされたのでしょうか?
伍鉄の変化の“塩梅(あんばい)”については、堤さんといつも話し合っていました。それまでずっと自分の世界の中だけで生きてきた人に、どれだけ周りの熱が浸透していき、距離が縮んでいくのか。とはいえ、“いそうでいない、いなそうでいる”、少し変わった伍鉄の人物像は崩したくなかったので、その絶妙なバランスを探っていました。
後半は特に、年齢的にも「“枯れかけた”男性が世界を変える」という伍鉄の“裏テーマ”があることも堤さんにお伝えして。堤さんは「いやいや、僕より車いすラグビーでしょ」ともおっしゃっていましたが、僕はずっと、その裏テーマについても話していました。
――その“変化”について、演出面でこだわったことはありますか?
伍鉄の最初の居場所“ファーストポジション”については、すごく考えていました。第1話で選手たちの動きを見ていたスタンド席がそのファーストポジションに当たるのですが、そこから徐々にみんなの輪の中にいるようになっていくまでの、いわばスタート地点です。
この“距離感”がお芝居の起点にもなってくる、というポジションですよね。特に、物語の序盤は伍鉄と涼の二人の距離感が「軸」になることで、周りのキャラクターの動きも決まってくる。全体のキャラクターのポジションにも影響も出てしまうので、そこはブレないようにしました。
演じているのが堤さんなので、普通に撮ればかっこよく映ってしまうのですが、そこは“枯れかけた男”という設定なので、「かっこいい画は絶対に撮らない」というところにも、極力気をつけていましたね。撮影に入るまでは誰にも言っていなかったのですが、自分の中では最初からそれは決めていました(笑)。
■山田裕貴は“孤高のエース”、本田響矢は「一番変わった」
――山田さんとの撮影時のエピソードや、印象に残っていることを教えてください。
山田さんは相手のお芝居を見て、スッとアドリブを挟んだり、周囲を引っ張っていくエースのような存在でしたね。僕は逆に、そういった彼が放つ一つ一つの反射的な表現を、あえて引き算もさせてもらっていました。
涼は物語が進むにつれてかつての輝きを取り戻してはいくのですが、やはり当初あった“孤高のエース”という雰囲気も持っていてほしいな、と。山田さんにも「そういう存在でいてほしい」という話はよくしていました。
涼は第9話で亡くなりますが、『死』を描くことによって、『生きている』ことの有限さやありがたさ、尊さみたいなものを逆照射できたらと思っています。涼の死そのものよりも、伍鉄との出会いや仲間との再生、家族を慕っていた時間、彼がずっと問い続けた人生・・・。涼が生きた「今」を照らし、描いていけたら。
――これまでの撮影を通して、選手役のキャストの変化は感じていらっしゃいますか?
一番変わったのは、本田響矢さんだと思います。最初に出会った時は、剣道をずっとやっていた好青年という印象だったので、「本当にこういうヤンチャな役ができるの?」と、ご本人ともよく話していました。
最初の頃に「とにかく感情を内にためないで、何でもいいから出てきた感情を全部、外に出すキャラクターに」という話をずっとしていて。そうすると徐々にお芝居も(車いすラグビーの)プレーも、見事に圭二郎に変わっていきました。結果、僕が予想していた以上に一番変わってくれたキャラクターは、圭二郎だったのかなと思っています。
■亡き涼の思いを胸に――クライマックス“シャーク戦”、いざ出陣
――最終話、シャーク戦に込めた思いやこだわりを教えてください。
涼が突然亡くなってしまった中で、それぞれが涼の思いを背負いながら、涼を心にとめて、涼とともに走りながら戦っていきます。車いすラグビーのプレーという一面だけではなく、選手それぞれの思いなど、いろいろな面での“戦い”が見られると思います。
それは選手たちの家族や、伍鉄や人香、そして国見明保(安田顕)など、両チームのコーチやスタッフ含めた、みんなの戦いです。
涼が最後に戦った準決勝「スイフトスネーク」戦とは、同じブルズの試合シーンといえども、戦う意味合いが変わってきます。涼がブルズに託す「シャークに勝って日本一」という答え、そしてそれとは別の思いも胸に秘め、伍鉄たちは戦っていきますから。これまでの試合シーンとは描写も違うと思います。
キャストも、僕をはじめとするスタッフも、いろいろな思いを込めた表現を入れていったので、しっかり見ていただけるとうれしいです。
(編集:岩本和樹)
【写真多数】堤真一、山田裕貴、有村架純ら…豪華キャストを一挙紹介!
■イベントで受けた温かい声援――「伍鉄さんが変わった」と反響も
――視聴者からの反響で、特に印象に残っている声はありますか?
たくさんありますが、第6話が放送された後の「伍鉄さんが変わった」という声は特に印象的でした。車いすラグビーが舞台ではありますが、一方で“伍鉄の家族のドラマ”でもあるという、こちらが意図していることを視聴者の皆さんもしっかりとくみ取っていただいているなと感じました。
――5月3日に開催された「2026ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」のスペシャルイベントに、選手役の方々とともにゲスト登壇されていましたが、会場の熱気などはいかがでしたか?
日本代表が優勝した決勝戦の直前に行われたイベントに出席させていただいたのですが、観客の皆さんが選手ではない僕たちにも握手を求めてくださったり、「頑張ってください!」といった温かい声援も多くいただきました。車いすラグビーへの熱意や愛情がとても伝わってきたので、僕たちも逆に襟を正して、より良い作品にできるよう頑張ろうと思いました。
■“ぶつかり合う”意義と問い続ける意思
――改めて、平野監督が本作で描きたかったことを教えてください。
特にコロナ禍を経て、“ぶつかり合っていく”ということが少なくなってきている印象があったんです。ぶつかり合うことを避けて“ていよく”接していくだけでは、実は得られるものは少ないのではないか、と。やはり芯から分かり合うためには、あくまでルールの範疇(はんちゅう)ではありますが、みんなでぶつかっていく必要があるのではないかと、しっかりと伝えたい思いはありました。
「答えを出す」「答えを見つけたい」とは言っても、そんなにすぐには見つからないですし、出ないことも多々ある。そんな中でも、問い続けることで何か思いがけないものを得られることもあります。登場人物一人一人の描写にも、そういった思いを込めて描いているので、ぜひくみ取っていただけたらうれしいです。
■「かっこいい画は絶対に撮らない」堤真一・伍鉄へのマイルール
――伍鉄の考え方や人との接し方も変化していく中で、堤真一さんとはどのようなお話をされたのでしょうか?
伍鉄の変化の“塩梅(あんばい)”については、堤さんといつも話し合っていました。それまでずっと自分の世界の中だけで生きてきた人に、どれだけ周りの熱が浸透していき、距離が縮んでいくのか。とはいえ、“いそうでいない、いなそうでいる”、少し変わった伍鉄の人物像は崩したくなかったので、その絶妙なバランスを探っていました。
後半は特に、年齢的にも「“枯れかけた”男性が世界を変える」という伍鉄の“裏テーマ”があることも堤さんにお伝えして。堤さんは「いやいや、僕より車いすラグビーでしょ」ともおっしゃっていましたが、僕はずっと、その裏テーマについても話していました。
――その“変化”について、演出面でこだわったことはありますか?
伍鉄の最初の居場所“ファーストポジション”については、すごく考えていました。第1話で選手たちの動きを見ていたスタンド席がそのファーストポジションに当たるのですが、そこから徐々にみんなの輪の中にいるようになっていくまでの、いわばスタート地点です。
この“距離感”がお芝居の起点にもなってくる、というポジションですよね。特に、物語の序盤は伍鉄と涼の二人の距離感が「軸」になることで、周りのキャラクターの動きも決まってくる。全体のキャラクターのポジションにも影響も出てしまうので、そこはブレないようにしました。
演じているのが堤さんなので、普通に撮ればかっこよく映ってしまうのですが、そこは“枯れかけた男”という設定なので、「かっこいい画は絶対に撮らない」というところにも、極力気をつけていましたね。撮影に入るまでは誰にも言っていなかったのですが、自分の中では最初からそれは決めていました(笑)。
■山田裕貴は“孤高のエース”、本田響矢は「一番変わった」
――山田さんとの撮影時のエピソードや、印象に残っていることを教えてください。
山田さんは相手のお芝居を見て、スッとアドリブを挟んだり、周囲を引っ張っていくエースのような存在でしたね。僕は逆に、そういった彼が放つ一つ一つの反射的な表現を、あえて引き算もさせてもらっていました。
涼は物語が進むにつれてかつての輝きを取り戻してはいくのですが、やはり当初あった“孤高のエース”という雰囲気も持っていてほしいな、と。山田さんにも「そういう存在でいてほしい」という話はよくしていました。
涼は第9話で亡くなりますが、『死』を描くことによって、『生きている』ことの有限さやありがたさ、尊さみたいなものを逆照射できたらと思っています。涼の死そのものよりも、伍鉄との出会いや仲間との再生、家族を慕っていた時間、彼がずっと問い続けた人生・・・。涼が生きた「今」を照らし、描いていけたら。
――これまでの撮影を通して、選手役のキャストの変化は感じていらっしゃいますか?
一番変わったのは、本田響矢さんだと思います。最初に出会った時は、剣道をずっとやっていた好青年という印象だったので、「本当にこういうヤンチャな役ができるの?」と、ご本人ともよく話していました。
最初の頃に「とにかく感情を内にためないで、何でもいいから出てきた感情を全部、外に出すキャラクターに」という話をずっとしていて。そうすると徐々にお芝居も(車いすラグビーの)プレーも、見事に圭二郎に変わっていきました。結果、僕が予想していた以上に一番変わってくれたキャラクターは、圭二郎だったのかなと思っています。
■亡き涼の思いを胸に――クライマックス“シャーク戦”、いざ出陣
――最終話、シャーク戦に込めた思いやこだわりを教えてください。
涼が突然亡くなってしまった中で、それぞれが涼の思いを背負いながら、涼を心にとめて、涼とともに走りながら戦っていきます。車いすラグビーのプレーという一面だけではなく、選手それぞれの思いなど、いろいろな面での“戦い”が見られると思います。
それは選手たちの家族や、伍鉄や人香、そして国見明保(安田顕)など、両チームのコーチやスタッフ含めた、みんなの戦いです。
涼が最後に戦った準決勝「スイフトスネーク」戦とは、同じブルズの試合シーンといえども、戦う意味合いが変わってきます。涼がブルズに託す「シャークに勝って日本一」という答え、そしてそれとは別の思いも胸に秘め、伍鉄たちは戦っていきますから。これまでの試合シーンとは描写も違うと思います。
キャストも、僕をはじめとするスタッフも、いろいろな思いを込めた表現を入れていったので、しっかり見ていただけるとうれしいです。
(編集:岩本和樹)
2026/06/11