『果てしなきスカーレット』で描かれる“死後の世界”は、幻想的でありながら、どこか現実の延長のようにも感じられる。スカーレットと聖が歩く世界は、まさに“生と死の狭間”として存在し、劇中の重要な舞台となる。この独特の世界観はどのようにして生まれたのか――。そこには、監督自身が経験した生死の境、そして日本の山岳信仰や中東の宗教的風景まで、多くの要素が重ねられていた。
■生と死が交わる場所をどう描くか
――死後の世界の描写には、監督の死生観が反映されているのでしょうか。その世界はどのように作り上げたのでしょうか。
【細田】本作の舞台のひとつは《死者の国》から見果てぬ場所への旅路”で、生と死が交わる場所だと作中でも語られます。ここまで大きなテーマへ踏み込むことになるとは、企画を考え始めた初期には思っていませんでしたが、過去作でもどこかで生と死をめぐる問いは描いてきたのだと思います。それが本作では、より大きな形で姿を現したのだと思います。
きっかけになったひとつは、自分自身の体験です。コロナに感染して入院し、一週間後に悪化するか改善するかがわかる――そんな説明を受けた瞬間がありました。前作『竜とそばかすの姫』(2021年)が完成していない中で、まさに人生の岐路に立たされました。
幸いにも快復しましたが、病院で生と死の境目に立っているという感覚は、強烈に刻まれました。そして何より、看病をして頂いた看護師さんたちの優しさに救われました。防護服で顔も姿も分からないのに、誠実さや利他的な気持ちで看病にあたって下さるという、心が伝わってきました。彼らには“人を助けるという生まれながらの才能”があるのだと思いました。スカーレットと対をなす聖が看護師になったのも、こうした体験が影響しています。
スカーレットは復讐を胸に生きる“現実主義者”です。自分の身に起きた理不尽や奪われたものを、現実としてどう取り戻すか――そこに意識が向いている。一方の聖は、誰かを癒やし、救いたいという理想を持つ“理想主義者”。この二人が共に旅することで、物語に奥行きが生まれると考えました。現実と理想、その両方が世界には存在していて、どちらが正しいということではない。二人の対照性こそが、映画『果てしなきスカーレット』のテーマの核になっていると思います。
■“死後の世界”を描くために見つけたヒント
――地獄や死後の世界を、どのような観点からデザインしたのでしょうか。
【細田】日本美術の研究者の方と話していて、非常に印象に残った言葉があります。「中世の地獄絵図は、地獄を描いているように見えるけれど、実は“現世”を描いている」というのです。苦しみも恐怖も、すべて“今ここ”にある現実の比喩なのだ、と。この視点は衝撃でした。戦争や紛争を“地獄のような光景”と表現することがありますが、それはつまり、現世にこそ地獄が存在しているということなんです。だからこそ、死後の世界をあまりファンタジックに描くのではなく、どこか現実に足を置いた世界にしたいと思いました。
その考えもあって、ヨルダンやイスラエルへロケハンにも行きました。宗教的な原点がそこにあり、砂漠の荒野には“信仰が生まれた源”があると思いました。イスラエルを訪れた直後に紛争が起き、渡航禁止になってしまったので、本当にぎりぎりのタイミングでした。そこで見た風景、荒野、岩山、乾いた大地、それらは本作の死後の世界にも色濃く反映されています。《死者の国》を描くためにたどった旅が、結果的に現実と非現実の境界線を曖昧にし、作品世界を形づくったのだと思います。
――雲海や岩稜、剱岳を思わせる景色が見えました。細田監督の故郷・富山の風景は影響していますか?
【細田】ありますね。劇中にも火山のガスが噴き出す描写がありますが、立山の地獄谷は今も硫黄ガスが噴出していて立ち入り禁止の状況です。昔から山岳信仰の中で立山は“地獄の一丁目”のように描かれている。地獄絵図もたくさん残っています。“立山そのもの”とは言いませんし、稜線の形も微妙に違いますが、幼い頃から見てきた風景が自分の中に根付いているのは確かです。日本の山岳信仰そのものが、本作の世界観の一部になったと感じています。
■『果てしなきスカーレット』あらすじ
父の敵への復讐に失敗した王女・スカーレットは、《死者の国》で目を覚ます。ここは、人々が略奪と暴力に明け暮れ、力のない者や傷ついた者は〈虚無〉となり、その存在が消えてしまうという狂気の世界。敵である、父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスもまたこの世界にいることを知り、スカーレットは改めて復讐を強く胸に誓う。そんな中、彼女は現代の日本からやってきた看護師・聖と出会う。時を超えて出会った二人は、最初は衝突しながらも、《死者の国》を共に旅することになる。
【動画】芦田愛菜が歌うエンディングテーマ「果てしなき」特別PV
■生と死が交わる場所をどう描くか
――死後の世界の描写には、監督の死生観が反映されているのでしょうか。その世界はどのように作り上げたのでしょうか。
【細田】本作の舞台のひとつは《死者の国》から見果てぬ場所への旅路”で、生と死が交わる場所だと作中でも語られます。ここまで大きなテーマへ踏み込むことになるとは、企画を考え始めた初期には思っていませんでしたが、過去作でもどこかで生と死をめぐる問いは描いてきたのだと思います。それが本作では、より大きな形で姿を現したのだと思います。
きっかけになったひとつは、自分自身の体験です。コロナに感染して入院し、一週間後に悪化するか改善するかがわかる――そんな説明を受けた瞬間がありました。前作『竜とそばかすの姫』(2021年)が完成していない中で、まさに人生の岐路に立たされました。
幸いにも快復しましたが、病院で生と死の境目に立っているという感覚は、強烈に刻まれました。そして何より、看病をして頂いた看護師さんたちの優しさに救われました。防護服で顔も姿も分からないのに、誠実さや利他的な気持ちで看病にあたって下さるという、心が伝わってきました。彼らには“人を助けるという生まれながらの才能”があるのだと思いました。スカーレットと対をなす聖が看護師になったのも、こうした体験が影響しています。
スカーレットは復讐を胸に生きる“現実主義者”です。自分の身に起きた理不尽や奪われたものを、現実としてどう取り戻すか――そこに意識が向いている。一方の聖は、誰かを癒やし、救いたいという理想を持つ“理想主義者”。この二人が共に旅することで、物語に奥行きが生まれると考えました。現実と理想、その両方が世界には存在していて、どちらが正しいということではない。二人の対照性こそが、映画『果てしなきスカーレット』のテーマの核になっていると思います。
――地獄や死後の世界を、どのような観点からデザインしたのでしょうか。
【細田】日本美術の研究者の方と話していて、非常に印象に残った言葉があります。「中世の地獄絵図は、地獄を描いているように見えるけれど、実は“現世”を描いている」というのです。苦しみも恐怖も、すべて“今ここ”にある現実の比喩なのだ、と。この視点は衝撃でした。戦争や紛争を“地獄のような光景”と表現することがありますが、それはつまり、現世にこそ地獄が存在しているということなんです。だからこそ、死後の世界をあまりファンタジックに描くのではなく、どこか現実に足を置いた世界にしたいと思いました。
その考えもあって、ヨルダンやイスラエルへロケハンにも行きました。宗教的な原点がそこにあり、砂漠の荒野には“信仰が生まれた源”があると思いました。イスラエルを訪れた直後に紛争が起き、渡航禁止になってしまったので、本当にぎりぎりのタイミングでした。そこで見た風景、荒野、岩山、乾いた大地、それらは本作の死後の世界にも色濃く反映されています。《死者の国》を描くためにたどった旅が、結果的に現実と非現実の境界線を曖昧にし、作品世界を形づくったのだと思います。
――雲海や岩稜、剱岳を思わせる景色が見えました。細田監督の故郷・富山の風景は影響していますか?
【細田】ありますね。劇中にも火山のガスが噴き出す描写がありますが、立山の地獄谷は今も硫黄ガスが噴出していて立ち入り禁止の状況です。昔から山岳信仰の中で立山は“地獄の一丁目”のように描かれている。地獄絵図もたくさん残っています。“立山そのもの”とは言いませんし、稜線の形も微妙に違いますが、幼い頃から見てきた風景が自分の中に根付いているのは確かです。日本の山岳信仰そのものが、本作の世界観の一部になったと感じています。
■『果てしなきスカーレット』あらすじ
父の敵への復讐に失敗した王女・スカーレットは、《死者の国》で目を覚ます。ここは、人々が略奪と暴力に明け暮れ、力のない者や傷ついた者は〈虚無〉となり、その存在が消えてしまうという狂気の世界。敵である、父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスもまたこの世界にいることを知り、スカーレットは改めて復讐を強く胸に誓う。そんな中、彼女は現代の日本からやってきた看護師・聖と出会う。時を超えて出会った二人は、最初は衝突しながらも、《死者の国》を共に旅することになる。
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2025/11/27