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“指示書通り”を軽んずるなかれ…「徹底する」ことで絶大な価値を生む 下町の印刷会社が業界No.1を誇示し続けるワケ

 紙媒体の衰退は、印刷業者においても影響を及ぼしている。だが、日常において“印刷物”を目にしない日は無く、いまだ常に身の回りには多くの印刷物に囲まれている。さらに2000年代に入り「ネット印刷」が主流となったことで、印刷業界においても転換期を迎えることとなった。そんな変革の時代、同業界においてユーザー満足度No.1を誇るのが東京・足立区に居を構える東京カラー印刷株式会社だ。明治30年創業の老舗が、なぜ伝統の技術と新たな技を融合し、群雄割拠の印刷業会においてNo.1を獲得できたのか? 同社の印刷通販責任者/工場長の大澤典彰さんに話を聞いた。

東京カラー印刷株式会社の印刷通販責任者/工場長を務める大澤典彰さん (C)oricon ME inc.

東京カラー印刷株式会社の印刷通販責任者/工場長を務める大澤典彰さん (C)oricon ME inc.

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■都内にある自社工場のアドバンテージ…首都圏の印刷を下支えしてきた実績

 時代時代のトレンドに呼応するように、印刷業界もイノベーションを起こしてきたが、近年における最も大きな変革は「ネット印刷」の一般化だ。これまでは、個人が印刷を発注する際、デザインの外注など、仲介業者を介して印刷所に発注するという流れが続いていたが、ネットの普及により誰でも簡単にアプリでデザインが行えることで、仲介を通さず直接個人が印刷業に発注、納品までをネットで全て行う。
 この「ネット印刷」の分野において、2023年オリコン顧客満足度(R)調査の「ネット印刷通販」で総合ランキング1位となったが、明治30年に創業の東京カラー印刷株式会社だ。

――大澤さんは2006年に入社されたとのことですが、入社当時と今で最も大きな変化を遂げたのは、どの点にありますか?
【大澤工場長】そうですね。やはり一番は、より低価格帯で刷ることが可能になった点にあると思います。当時は2000枚〜3000枚のチラシを刷るのにも5万円くらいはしていたのが、今では同じ値段で数万枚を刷ることが可能になりました。ネット通販の一番大きな利点は、やはり価格帯にあります。この低価格をお客様に実感してもらうには、お客様の方で元データを作らなければいけなかったんです。一昔前まではそこが大きなハードルでした。

――一般の方では、どうしても作成に限界があるので、デザイン業者などへの外注費が基本予算として含まれてしまう。
【大澤工場長】ですが、今は無料のアプリケーションで簡単に元データの作成が可能になった。テクノロジーの進歩がネット通販の普及を飛躍的に伸ばしたことは間違いないです。

――10年ほど前と現在では、個人から御社に発注する件数も異なっていたのでは?
【大澤工場長】そうですね。以前までは、同業他社様からの発注が約8割を占めていて、個人のお客様からの発注は少なかったです。ですが、現在は
ネット印刷による個人のお客様やビジネスユーザーの法人のお客様からの注文が大幅に増えました。同業他社様からの注文も得ております。

――ここ10年における業界の地殻変動を物語っていますね。
【大澤工場長】うちは、明治30年創業で元々は東京近郊の病院や、医院様に医療機器及び医療用印刷物(薬袋・カルテなど)受注生産販売しておりました。そこで築いた信頼を元に、平成元年のアメリカでのMACによるDTPの印刷普及をいち早く察知し、日本でのDTPの印刷時代を予測「お客様作成のデータからの印刷&製本のできる通販印刷をテーマに」訪問営業員0名でweb通販と店舗販売方式に特化して今日に至りました。
当時は今日の通販印刷競合他社は一社もない状況でしたので、いわば弊社がこの分野では元祖と言えると思っております。

――そんな中、御社がネット印刷において、他社を差し置いてユーザー満足度No.1を実現に至った要因はどこにあるとお考えですか?
【大澤工場長】一番大きいのは、最新の両面8色印刷機で検討や色味を常に検査装置で測り、安定した印刷物とテクノロジーによる、損紙(無駄になる紙)の少ない生産体制確立している点にあるかと思います。またもう一点は、当社の売りである世界最速コースや、深夜特急便など、特急に関連する製品の質とお手頃価格を実現した事ではないかと思います。都内の自社工場から配送する事で、首都圏の印刷の下支えをしてきた実績も見て頂けているのではないかと思っています。

――都内に自社工場を持っているとうのは、印刷業界においては昔から強みだったのでしょうか? それとも、近年のネット印刷が主流になった時世に伴い、より強力なアドバンテージとなったのでしょうか?
【大澤工場長】近年、さらに強みを増した印象があります。やはり、紙の仕入れコストやガソリン代などのエネルギー費の高騰も、地方に拠点を置くよりも回避できる…近年特に、“工場の価値”そのものに劇的な変化が生じていると感じます。というのも物流・運送業界において働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる2024年問題があると思いますが、これにより具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されています。
地方の競合他社は輸送問題で不利になると思われます。
 国内の印刷物の70%位が関東圏で消費されると言われていることもあり、弊社では東京都内に工場を有する地の利を生かせる、この機を弊社のチャンスと捉えて印刷物の地産地消とコスパ最強を唱えて安く、早く配送出来る関東圏のお客さまの更なる獲得を目指しています。

東京カラー印刷株式会社の印刷通販責任者/工場長を務める大澤典彰さん (C)oricon ME inc.

東京カラー印刷株式会社の印刷通販責任者/工場長を務める大澤典彰さん (C)oricon ME inc.

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――各種ツールの進化と都内に工場を所有するアドバンテージで低価格帯を実現。お客様、印刷会社、互いがWIN WINのように見えますが、質を担保しながら速さと安さを追求するということは、ともすれば薄利にもつながり、大変な側面もあるのでははいでしょうか?
【大澤工場長】おっしゃる通りの部分はあります(笑)。ただやはり、弊社としては、お客様に喜んで頂くためにギリギリまで我慢をする。単価を上げることはできますが、果たしてそれでリピートに繋がるのか? 結果としてはギリギリまでコストを削り、お客様の負担も最小限に抑えることが収益にも繋がると考えています。また、うちはテレビCM等の派手な広告をしない事で、その分でのコストカットをお客様に還元しています。「至誠天通」がうちの会社のモットーですので、お客様に誠心誠意向き合っていきます。

――ユーザーに還元することで満足度が高まりリピートを生む。それが収益にも寄与する。
【大澤工場長】はい。印刷メーカーも数の限りはありますし、印刷機器の部分においてもそこまでの差は出ないくらいクオリティー担保をしているはず。であれば、同じクオリティーでどこまで安く出来るのか? やはりここが、ご利用いただいたお客様の満足度を高める最も重要なポイントだと思います。

――一度、ご利用いただいたお客様に如何に満足して頂けるか? 一番は値段ですが、それに伴うリピート率の高さが特筆すべき点です。費用対効果の高いサービスを常に提供している所以です。
【大澤工場長】先ほど、印刷消費の多くが首都圏に集中していると言いましたが、当然ながら弊社としては地方のお客様との繋がりも大切にしています。例えば、地方のミカン農家さんから弊社に、毎月必ず注文を頂いています。地方の事業者の方はメディア広告を打つにも予算的に厳しい状況がありますし、広告を打ったとしても費用対効果が薄いと感じる方も多い。逆に古くからの折り込みチラシの方が環境に応じて費用対効果が高く出ることもある。一方でホームページやSNSの活用も並行しつつとなりますので、個人事業者の方は今までよりも展開の幅が広がったと言えますね。

――幅広い広告展開という意味では、印刷費がここまで低価格になったことで、それは尚更ですね。
【大澤工場長】はい。ですから、地方の事業者の方もリピーターとして弊社のサービスを活用して頂いているんです。

――値段はもちろん大事だとは思うんですけど、それこそ“お値段以上”のサービスなのか否かがリピートにつながるんですね?
【大澤工場長】おっしゃる通りです。低価格を銘打ちますが、根幹としては、如何に品質を担保し続けるのかなんです。“安い”だけではお客様は直ぐに離れていってします。大事なことは、低価格、品質、スピード感の“三位一体”を実現出来るかなんです。

■作業効率化を常に上げないとコストカットにはならないし他社には勝てない

――その三位一体を実現するために、御社で最も大事にされていることは何でしょうか?
【大澤工場長】そうですね…最新の両面8色印刷機によるテクノロジーによる部分と、人が介在する部分のいかに正確な作業工程を踏むか? 一見、“基本事項”のように思うかもしれませんが、弊社で最も重要視していることなんです。つまり、機能を活かしきれなければ、なんの意味もない。

――なるほど。初志貫徹をいかに貫けるか? ということですね。
【大澤工場長】我々工場長、それに次ぐ責任者にて品質管理を徹底しています。各部門ごとの責任者がプライドを持って仕事をしており、「とにかく徹底して“手順書通り”にやる」ということを現場に落とし込んでいます。

――慣れが生じてくれば、どうしても手の抜きどころも覚えてしまう。そこで生じた作業効率の悪さをつい機械のせいにしてしまう。
【大澤工場長】その通りです。誰でも同じ手順、同じやり方で完璧に作業を行っていけば、時間軽減につながり、おのずと高効率化に繋がる。先ほどの申し上げた輸送費だけでなく、作業効率化を常に上げていかないとコストカットにはならないし他社には勝てない。このマインドを現場作業員に如何に浸透させられるのかが非常に重要なんです。

――機械は決してウソをつかない。社員一人ひとりがしっかり機械と向き合っているのか? という問いでもあるんですね。機械を扱っていながら、どこかアナログな温かみを感じます。
【大澤工場長】そうですね! うちの責任者いつも言っているのは「手順書を守ること、そして現場はいつも綺麗に」なんです。テクノロジーの進歩と歩調を合わせながらも、それをしっかりと駆使するためには“人”がちゃんとしていないと結局は宝の持ち腐れになる。

東京カラー印刷株式会社の印刷通販責任者/工場長を務める大澤典彰さん (C)oricon ME inc.

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――御社が培ってきた強みを聞いてきましたが、“これから”についてもお聞かせください。今後どのような勝ち筋を見据えているのでしょうか?
【大澤工場長】時代にマッチした新商品の投入はかなり意識しています。紙のみにこだわらないフルカラーシール印刷などはその最たる商品といえます。また、逆にSDG'sを意識して、これまではプラが一般的だったクリアファイルですが、紙のクリアファイルのリリースも行います。そして、印刷物1枚の価値をしっかりと見据えた展開、このことは時代が変わっても常に念頭に置くべき概念だと考えています。

――以前であれば、大量に刷って多くの方に届ける。これが基本的な宣伝訴求の仕方だったが、時代の変化とともに手法も変わるということですね。
【大澤工場長】例えば、ポスターを印刷業者に発注する際、通常ロット(最小発注数)はどれくらいからだと思いますか?

――うーん…少なくとも100枚単位、いや最低でも1000枚単位でしょうか?
【大澤工場長】弊社は1枚から発注出来るんです(笑)。

――たった1枚から! よく受注されますね(笑)。
【大澤工場長】商店街の店舗さんなどでは、数百枚でも多い場合もありますいし、1000枚単位なんて持て余してしまうと考える方もいらっしゃいます。逆に、ポスター1枚をそのお店の入口に張るだけでも、近隣には十分効果が出ると考える店舗さんもいる。外に訴求する場合は、ネット広告を活用するなど、上手く棲み分けをして展開する方が非常に多くなった。

――ポスター1枚でも用途によって価値が全く異なる訳ですね。
【大澤工場長】そうです。ですから弊社では、価値の高い1枚のポスターなのであれば喜んで受注させて頂きます。因みにチラシも10枚から受注を受けます。今は1枚の印刷物をいかに効果的に活用するかの時代です。1枚の印刷物にも真剣に向き合うことで、お客様との信頼関係が生まれる。それがリピートにも確実につながっていく…弊社が他社に勝っている点を挙げるとすれば、まさに1枚の印刷物にかけるプライドと姿勢なんだと思います。

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