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『沈黙の艦隊』原作者・かわぐちかいじ氏インタビュー 大沢たかおの「本気」に心動かされた

 核をめぐる国際秩序を題材にしたストーリーが各方面で論争を呼び、社会現象となった漫画『沈黙の艦隊』が約30年の時を経て初めて実写映画化される。週刊漫画雑誌「モーニング」(講談社)で1988年から96年までの長期にわたって物語をつむいだ原作者のかわぐちかいじ氏に実写化への思いを聞いた。

映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.

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――『沈黙の艦隊』連載から約30年の時を経て、実写映画化のオファーが来た時、正直どんな気持ちでしたか?

【かわぐち】連載していた当時から映画化したい、実写化したい、という話は何度もありました。皆さんから熱意はすごく感じられたのですが、どれも具体性に乏しく、実現しませんでした。今回、企画プレゼンの場に大沢たかおさんもいらして、主人公の海江田を演じるだけでなく、プロデューサーとして自分にできることは何でもするとおっしゃった。本気でやる気なんだというのが伝わってきました。さらに、製作をAmazonスタジオが手がけるということでしたので、実現性があると思い、お任せすることにしました。

――原作者として映画の内容には関与されたのですか?

【かわぐち】関与というほどのことはなくて、脚本を作る前に、原作漫画は30年以上も前のものなので、せっかくいま実写化するなら、時代設定も含めて、現代に即した形にアップデートしてほしいとリクエストしました。

海江田四郎(大沢たかお)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

海江田四郎(大沢たかお)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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――アップデートというと、原作では男性のキャラクターのところを、映画では一部女性に変更されていますね。潜水艦「たつなみ」の副長・速水が映画では水川あさみさん、防衛大臣(原作時は防衛庁長官)の曽根崎を夏川結衣さんが演じています。

【かわぐち】連載当時、自衛隊といえば「男の職場」というイメージでしたが、今は女性自衛官もたくさん活躍されていますし、女性の潜水艦乗組員もいますからね。閣僚にも女性が登用されています。出来上がった映画を観て、女性キャラクターに代わっていても、それがリアルだし、全然気にならなかったです。

速水貴子(水川あさみ)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

速水貴子(水川あさみ)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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――結果、映画の感想はいかがでしたか?

【かわぐち】大沢さんの海江田艦長が素晴らしかったです。大沢さんが圧倒的な力で物語をどんどん引っ張っていくから、玉木宏さんも深町なのではと思えてきたし、ほかの役者さんたちもみんな役にはまっているように見えました。

 今回、防衛省・海上自衛隊の協力を得て、実物の潜水艦を使用して撮影しているところがあって、やっぱり本物って違うんだな、というところにも圧倒されました。それに加えて、光の届かない海の中を潜航している潜水艦の姿を実際には誰も見たことがなく、私も想像で描いていたのですが、きっとこうなんだろうなと思わせるリアリティーがあって、潜水艦をうまく表現しているな、と思いました。

 海江田の<シーバット>と深町の<たつなみ>、それぞれのソナーマンも本物っぽかったんですよね(※)。実際のソナーマンはどうなのかわかりませんが、この人たちだったらちゃんと音を聞き分けそうだな、という説得力がありました。海の中を潜航する潜水艦にとって、周囲の状況把握の頼りになるのはソナーマンの耳だけです。その緊迫感がものすごく伝わってきました。

深町洋(玉木宏)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

深町洋(玉木宏)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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 あと、主人公の海江田と、反乱逃亡した海江田を追いかける深町の関係性。原作では、性格的には正反対だけど、どちらも有能でカリスマ性がある良きライバルとして、対峙させてきたのですが、映画では原作にはないふたりの過去エピソードを創作して、深町が海江田に並々ならぬ感情を抱いている理由がわかりやすく説明されていました。反乱逃亡した海江田を、深町が追っていく、ふたりの対決という幹がしっかりしていたので、物語にスッと入ることができましたし、改めて、原作の面白さを再確認させてもらいました(笑)。

※シーバットのソナーマンは前原滉、たつなみはユースケ・サンタマリアが演じている。

■未来を示せる人物を描けてよかった

映画『沈黙の艦隊』(公開中)メイキング映像。撮影現場で大沢たかおと談笑するかわぐちかいじ氏(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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――原作の面白さを再確認できたとは?

【かわぐち】そうですね。海江田の魅力ですよね。『沈黙の艦隊』は彼の行動によって巻き込まれて行く人たちがそれぞれ最善を考えて、知恵を絞って、未来について考えていくところがドラマチックなんです。海江田にはモデルにした人がいなかったのですが、大沢さんを観て“海江田がいた”と思いましたし、海江田のように未来を示せる人物を描けてよかったな、と思いました。

――そもそも『沈黙の艦隊』を描こうと思ったきっかけは何だったのですか?

【かわぐち】子どもの頃から、海でおもちゃの潜水艦を潜らせて遊んだり、潜水艦が登場する小説や漫画を読んだりしていたというのもありますけど、映画かなぁ。『眼下の敵』(1957年)や『Uボート』(1981年)といった潜水艦映画は、第二次世界大戦を舞台にしていたので、最新鋭の潜水艦はどうなっているんだろう?と興味が湧いて、現代劇で、できれば近未来を舞台に潜水艦ものが描けたらいいな、と思ったのが最初かな?

――『沈黙の艦隊』は潜水艦バトルに、核戦争や国際政治等の問題提起を絡ませ、まるで30年後の今の国際情勢を予測していたかのようです。

【かわぐち】あんまり本人は意識していないんですけどね。その時、一番興味があることを突き詰めて描いていったら、自然とそうなっていた、としか言いようがない。私が興味をひかれるのは、どう解決したらいいのかわからない、簡単に解決方法が見つからない問題なんです。いろいろ想像できるし、そこにドラマを見いだしたら、描くしかない。後になって、漫画と同じようなことが起きて、予見していたように見えるかもしれないけれど、本質的なところでは過去の繰り返しだったり、人間がすることってあんまり変わらないのかもしれない。

映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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――『沈黙の艦隊』の執筆に影響を与えたと思われることはありますか?

【かわぐち】船の実感ですかね。父親が船乗りで、子どもの頃から一緒に船に乗せられました。10トン未満の小さな給油船でしたが、瀬戸内海をあちこち航行し、巨大タンカー貨物船、海上保安庁の巡視船など、いろんな船を洋上で間近に見ることができ、自然に船への興味と愛着が育っていったと思います。

――映画化をきっかけに『沈黙の艦隊』に新たに出会う人、かつて原作漫画を読んでいて再発見する人、いろいろいると思いますが、原作者として期待していることはありますか?

【かわぐち】もしハリウッドが潜水艦に核ミサイルを積んで反乱逃亡する映画を作ったらどうなるか、想像してみたんです。きっと、逃亡した核テロリストを追いかけて、追い詰めて、バトルして、核テロリストを倒して終わる、それだけの物語になりそうだなって。

 『沈黙の艦隊』は違います。劇中には海江田を「核テロリスト」として駆逐しようとするアメリカも出てきますが、それだけじゃない。「海江田は一体、何を考えてるのか?」「何をしようとしているのか?」というサスペンスで、観客をグイグイ引き込んでいく。それがほかにはない『沈黙の艦隊』の面白さだと思います。海江田の未来を構築する力を、若い世代の人にも知ってもらえるとうれしいです。観ていただければ、きっと感じるものがあると思います。

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  • 映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
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  • 映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
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  • 映画『沈黙の艦隊』(公開中)メイキング映像。撮影現場で大沢たかおと談笑するかわぐちかいじ氏(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 映画『沈黙の艦隊』(公開中)原作者のかわぐちかいじ氏(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 海江田四郎(大沢たかお)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 深町洋(玉木宏)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 速水貴子(水川あさみ)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 曽根崎仁美(夏川結衣)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 南波栄一(ユースケ・サンタマリア)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 海原渉(江口洋介)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 山中栄治(中村蒼)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.
  • 入江蒼士(中村倫也)=映画『沈黙の艦隊』(公開中)(C)かわぐちかいじ/講談社(C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

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