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ウィリアム・フリードキン監督を追悼、『恐怖の報酬』オリジナル完全版再上映

 今月7日、『フレンチ・コネクション』(1971年)でアカデミー5部門受賞、『エクソシスト』(73年)で全世界にオカルト・ブームを巻き起こした巨匠ウィリアム・フリードキン監督が亡くなった。87歳。今月30日にイタリアで開幕するベネチア国際映画祭に新作の出品も決まっており、精力的な動きを見せていたフリードキン監督の突然の訃報だった。これを受け、9月15日〜20日の日程で、東京・シネマート新宿にてフリードキン監督のサスペンス超大作『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』(1977年)の再上映が決定した。

追悼ウィリアム・フリードキン監督『恐怖の報酬【オリジナル完全版】』シネマート新宿にて9月15日〜9月20日再上映 (C)MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.

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 『恐怖の報酬』は、仏映画の名作、H=G・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』(53年)のリメイクにユニバーサルとパラマウントの2大メジャー・スタジオが破格の2000万ドル(現在の100億円相当)の巨費を共同出資、ロケは3大陸5ヶ国に及び、2年を超える製作期間を費やした、人生の底から這い上がるために300キロにわたる一触即発のニトログリセリン運搬に命を賭けた男たちの運命を冷酷非情なリアリズムで描き切った超大作。

 映画作家としての狂気と執念を刻んだこん身の一作は、1コマも修正したいと思う箇所がないと監督自ら発言していたほど。しかし、不遇を極めた作品でもあった。

 1977年6月に全米初公開となるも、空前の『スター・ウォーズ』ブームの直撃を受け興行惨敗。しかも、日本をはじめ北米以外に配給されたフィルムは、フリードキン監督に無断で約30分もカットされた92分の【短縮版】だった(その【短縮版】を作った配給担当者はその事実発覚とほかの悪事もあり、その後投獄されたという)。

 さらには2大メジャー共同出資が原因で権利者不明状態に陥り(互いに興
行的失敗の責任を回避し、作品の権利を積極的に主張しなかった)、以後長きにわたって全世界的に上映できない状況が続くことになった。

 日本では、オリジナルとは別物の『恐怖の報酬』が78年に初公開。熱狂的なファンから再公開やDVD化のリクエストの声が上がったが実現せず、オリジナル版を見ることは半ば絶望視されていた。

 しかし、そんな状況に業を煮やしたフリードキン監督は2011年、自らスタジオ2社を提訴して権利問題を解きほぐし、13年に121分オリジナル版の5.1ch、4Kデジタル・リマスター化に着手。ベネチア映画祭でプレミア上映後、14年LA、15年パリ、16年カンヌ映画祭、17年ロンドンで上映、欧米各地で再評価の嵐を巻き起こした。

 日本では初公開から約40年経った18年に初めて【オリジナル完全版】の再公開が実現。「単なる小規模なリバイバル上映であれば再公開を望まない」「再公開するならば<とてつもなく意義深いもの>でなければ興味はない」と語っていたフリードキン監督は自ら複雑な権利処理の陣頭指揮を執り、ポスターや予告編、パンフレットも自ら監修するなど、日本での再公開に尽力してくれた。結果、旧作リバイバルとして異例の観客動員を記録。メイン館のシネマート新宿では9週間という大ロングラン興行となった。

 今回の再上映では、18年の公開時には同劇場に存在しなかった、強力な重低音出力と高解像度の音響を実現するブーストサウンドシステムを用いての上映となる。これは21年に行われた電力増強工事により得られた強力エレクトリック・パワー、新たな4台のサブウーハー【JBL-ASB6118】の設置、そして新導入のシネマプロセッサー「ドルビー社製CP950」の高性能イコライザーによって大迫力かつ高解像度の音響を実現したもの。映画史上屈指の緊張をもたらす『恐怖の報酬』の吊り橋のシーンは想像を絶するものになるにちがいない。

(C)MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.

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