• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • ウォーターサーバー事業は本当に頭打ちなの? 変遷とさらなる可能性について『クリクラ』代表「残り93%のパイを取りに行く」
ORICON NEWS

ウォーターサーバー事業は本当に頭打ちなの? 変遷とさらなる可能性について『クリクラ』代表「残り93%のパイを取りに行く」

 いまや会社内や複合施設などでお馴染みとなった感のあるウォーターサーバー。個人においても、特に乳幼児がいる家庭にとっては、無くてはならないツールとして重宝されている。一方、ここ10年で多様な競合が乱立し、個体差が生まれづらい状況に。さらに物価高騰に伴うボトル代金の値上がりにより解約するケースも。近年は、従来までの宅配水型から家庭の水道水を使用する浄水型への移行も顕著など、市場内でも変化が生じている。インフラ以外の水に“お金を払う”という文化が定着しつつある現状において、更なる成長線を描くには何が必要なのか? 同市場を牽引する株式会社ナック/クリクラビジネスカンパニーの代表・小磯雄一郎氏に、ウォーターサーバー事業における現状の課題、そして更なる可能性を聞いた。

株式会社ナック/クリクラビジネスカンパニー代表・小磯雄一郎氏 (C)oricon ME inc.

株式会社ナック/クリクラビジネスカンパニー代表・小磯雄一郎氏 (C)oricon ME inc.

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


■日本における『水』の価値とは?「海外生活したことで、初めて“日本の水”へのありがたみを実感」

 ここ数年で急速に伸長したウォーターサーバー事業。日本宅配水&サーバー協会の発表によると、2022年の顧客数は482万台となっており、コロナ禍を経て宅配型サービスの一般化、また災害に備えた食品ストックの認知増加も後押しとなり宅配水の需要も増加。サービス自体だけでなく、購買手段の変化により「置き配」という受取手段が広く浸透し、宅配商材の需要増加に結び付いた。

 多種多様の企業が参入するなか、最もそのブランド名を一般ユーザーに浸透させたのは紛れもなく『クリクラ』だ。その代表を務める小磯氏は約11年前に同社へ入社。前職は「日本マクドナルド株式会社」で、当時のナック社長より「我社はダスキンという事業を懸命にやってきたのでフランチャイジー(加盟店)の心はわかるが、フランチャイザー(加盟店本部)の心は未だ掴めていない。マクドナルドで学んだフランチャイザーの立場でいろいろ考えてみてくれないか」との任務を受けた。

 そこでまず、小磯氏が考えたのが「日本における『水』の価値とは何だろう?」という“原初”に立ち返ることだった。小磯氏は前職でアメリカコロラド州デンバーに約2年ほど在住していたが、そこはロッキー山脈からの雪解け水の恩恵で、アメリカでは珍しく水道水が飲めるエリアだった。だが、お米を何回炊いてもうまく炊けない。硬水だからダメなのではないか? そこで仕方なく軟水であるミネラルウォーターを購買したがそれでもダメだった。

 「実はその水の硬度が大体100前後。日本は国土の大半が50度未満ですので、2倍以上ですが、それでも十分に軟水なんです。そこで水のありがたみや食べ物と水の相性について 関心を持って帰国したという経緯があります」(小磯氏)

■“水は買うもの”という認識も浸透するなか、3.11契機に「“水も危ない”という意識変化が起こった」

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

写真ページを見る

 日本では80年代から浄水器というものが普及し、また90年代にはミネラルウォーターのペットボトルが販売。当時は「水にジュースと同じお金を払うのは馬鹿らしい」などの声もあったが、それは徐々に馴染んでいき、「水に対価を払う」行為も少しずつ周知されつつあった。

 そんななかクリクラビジネスカンパニーに入社した小磯氏は「ちょうど“水は買うもの”という認識が少しずつ定着した頃でした。そんな時に迎えたのが2011年3月11日。東日本大震災に伴う原発事故の影響で発生した水道水への放射性物質検出報道でした。皮肉なことですが、有事が起きることで“ライフラインとしての水”に一気に注目が集まります。セシウムが浄水所に入ったということで、当時の都知事・石原慎太郎氏が幼いお子さんがいらっしゃる家庭にはペットボトルを支給することを発表したのです。この件を契機に、“水も危ない”という意識変化が起こった瞬間でした」

 当時クリクラは、東北で被災したエリアの方々に何不自由ない水を供給しようと英断。「災害もそうですが、海外に進出する日本の方々が多くなったことで、“水”というものが貴重なものだというマインドが徐々に増加していきました」

 そもそも日本の水道水も決して「将来いつまでも100%安全」というわけではない。水道管は基本的に埋設されており、その水道管が古くなってしまったら当然、質も下がる。小磯氏はクリクラの本部がある本庄市で、水道事業が正しく機能しているかを精査する本庄市水道事業審議会委員でもあるが、「一般的に水は刻一刻と変化するものです。つまり不純物が混ざったり菌が増殖したりもする。埋設された水道管の劣化、予算の問題など、課題は先送りされたままなのです」と語る。

■震災時、現地にウォーターサーバーを大量設置 すぐにお湯が出ることで被災者から「やっと生き返った…」の声が

 そのような“水”事情のなか、ウォーターサーバーの重要性を再認識したのは、平成28年に起きた熊本地震だった。この時、飲料水企業各社がペットボトルの水を多く寄付。いわゆる“水あまり”の状態になっていたが、クリクラは供給できる限りのウォーターサーバーを現地に配置した。

「災害時は電気の復旧が一番早い。ガスはガスコンロやガスカセットなどが普及したりしていますのでいいのですが、水道の復旧が一番遅いんです。被災地では冷たい食べ物や冷たい飲み物しか口にできなかった。ですが弊社が名乗りを上げたことで、当初は“水はもう十分”という空気だったのが、電源は確保されていますからすぐにお湯が出るということで、カップのインスタント麺も食べられるし、熱いお茶も飲める、これは便利だ、という空気に変わりました。結果、避難所にいらっしゃる方から『やっと生き返った…』とおっしゃっていただけました」

 こうした経験により同社は、水道水だけでなく、ウォーターサーバーがライフラインの役割も持たなければならないという想いをより強くした。

■伸長しつつも普及率は7%… “卒業”してゆくユーザーをいかに永続させるのか?

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

写真ページを見る

 こうして東日本大震災以後、同社を筆頭に急速に拡大していったウォーターサーバー市場。市場規模も2,115億円となり、普及率も7%と伸長している。だが、この“7%”という数値をいかように見ればいいのか? まだ93%の市場が残っていると見るべきか。それとも現状ではこれで限界なのか。

 というのも、乳幼児や未就学児童がいる家庭では、「安心安全の水」、「すぐに温かいお湯が出るからミルク作りに欠かせない」、「離乳食作りの手間も減る」といった口コミで、なくてはならないツールとなったが、ある程度の子育てを終えると“卒業”する家庭もまた多いからだ。さらには少子高齢化であることから、この辺りの需要は先細りの可能性もある。

 こうした利便性で考えれば、「ライフラインとしてのウォーターサーバー」の有用性がどうしても希薄になってしまうジレンマもある。さらに追い打ちをかけるようにして、昨今の物価高騰の影響で、支出を棚卸した際に解約に至るケースも増加。純然たる「ライフライン」として定義付け出来るならば議論は起きないだろうが、水は蛇口をひねれば、“一応は”飲める水がすぐに出る。どうしても欲しければペットボトルで買えばよい。どうしても「コストカット」の対象としてウォーターサーバーが切り捨てられてしまうのだ。これについて小磯氏はどう考えるのか。

 「普及率が7〜8%といわれていますが、実は機会があれば使ってみたいという方たちを載せると20%〜30%という統計データもあります。そもそも諸外国を見れば、水道水が飲めないエリアでは100%近くの需要は見込めるでしょうが、日本でも20〜30%は、ウォーターサーバーを使っている、または使ってみたいと考えている潜在層需要は十分にあると考えます。またウォーターサーバー業者が7%のパイを取り合っているとお考えになる方もいらっしゃるでしょうが、戦略的に“空中線”の様相を呈していて、それぞれの熱量が届いていないのが現状です」

 これにはワンウェイ方式が後発で参入したことに要因がある。宅急便指定で、外出中でもうまく対応してお届けするというシステムだ。だが、そういったシステムがあるなかで、「今までできなかったことが、弊社ならできます」という強いセールストークをすることが重要だと語る。

 「先ほどのウォーターサーバーを“卒業”といったニュアンスでも100万以上の方が解約されました。ワンウェイ方式も広がって見えますが、例えばコロナ禍では水を外で買うより持ってきてもらったほうが安全なわけで水に対する意識を変化させなきゃと思っている方は意外と多い。便利さを理解してもらい、その上で安全安心の定義を伝えること。これからの時代は食育ならぬ、より深く理解してもらうための“水育”も必要だと考えます」

■「水は刻一刻と変化する…」ライフラインだけでなく、“生活を豊かにする水”「feelfree」の勝ち筋は?

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

写真ページを見る

 “水育”とは何か? 例えば、ミネラルウォーターには人間にとって必要なマグネシウムが含まれており、さらにこのマグネシウムを体内に取り込むには1:2でカルシウムがあるといいといわれている。

 さらには先述もした「水は刻一刻と変化する」だ。水道管の劣化、浄水場のレベル向上など、生活用水では問題はないが、こと“飲む”、さらに細かくいえば乳幼児などに“与える”場合にはやはり、安心安全な水を届けなければならない。昨今は水道水を給水するだけで利用できる浄水型サーバーの需要も増加傾向にあり、特に「クリクラ」がサービス提供を行っている新商品「feelfree」は顧客満足度も高い。

 昨今、栄養学などの分野でQOL(クオリティ・オブ・ライフ)という言葉が盛んに聞かれるが、“水育”への一環として、同社は構想5年、開発に3年かけて、冷水、熱湯のほか「炭酸水」も1台のウォーターサーバーで提供する。ライフラインはもちろん、ウォーターサーバーによる「生活を豊かにする“水”」を拡大し、新たな顧客の開拓を試みる。

 「先ほどお米の話を出しましたが、料理と水も美味しさに密接にかかわっている。また炭酸水の設置によって若年層の強炭酸ブームにも応えたいし、晩酌などでも低価格で安全便利な炭酸水をお届けしたい。そのための菌対策もふくめた機械内のメンテナンスにも最新の注意を払っています。ライフライン、QOL、その2軸で我々は残り93%という広大な未開拓のパイを取りに行く航海へ出たい」

 たかが水、されど水。安心安全と利便性はもちろん、更なる豊かさをも提供し、新規層を獲得しうる満足度を提供出来るのか? “水育”は道半ばだ。だが、“水脈”は確実に存在する。

(取材・文/衣輪晋一)

関連写真

  • 株式会社ナック/クリクラビジネスカンパニー代表・小磯雄一郎氏 (C)oricon ME inc.
  • ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表
  • ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表
  • ウォーターサーバー事業の現在地と更なる可能性を語る小磯代表

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

>

 を検索