『2023年サンリオキャラクター大賞』で、90ものエントリーのうち11位という好成績を残しながら、SNSなどで「誰?」と言われるキャラクターがいる。それが、こぎみゅんだ。「予算がないみゅん‥」と自ら「歌ってみた」動画などのデジタルプラットフォームに活路を見出し、今ではキャラクターながら“声”が注目される特徴的な存在。一般知名度は低くとも、ひそかに「10年に1人の逸材」とも言われるこぎみゅんの正体とは?
■11位なのに知名度低め…、地道な活動に熱い応援「売れないアイドルを推す心理」
総投票数4448万7850票と、過去最多を記録した『2023年サンリオキャラクター大賞』で、11位にランクインしたキャラクター・こぎみゅん。惜しくもTOP10入りは逃したものの、上位を占めるのはハローキティやマイメロディ、シナモロールといった誰もが知る人気者たち。2018年の初エントリーから28位→19位→13位→10位、そして昨年度は9位にまで上り詰めたこみぎゅんに対しては、「10年に1人の逸材」との呼び名も高い。
とはいえ、他のキャラクターに比べて一般知名度は低く、上位にランクインしながらもSNSでは「誰?」との声もチラホラ。あらためて、こぎみゅんとは何者なのか。
「こぎみゅんは小麦粉の妖精のおんなのこで、『〜みゅん』という語尾が特徴です。小麦粉だけにその存在はとても儚く、強風に吹かれたり動揺したりすると粉になって散ってしまいます。そんな“はかな可愛さ”がこぎみゅんのコンセプトです」(こぎみゅん担当デザイナー・川村雪菜さん)
Twitterで発信されるこぎみゅんの日常は、「トイレに入ったらペーパーがなかった」「イチゴを買いに行ったけどお金が足りなかった」など、うまくいかないことも多い(そのたびに粉になる)。キャラクター大賞の発表前には、不安で泣き出すこともあった。多くのキャラクターがポジティブでキラキラしていたり、あるいはマイペースでほのぼのしていたりするのに対して、どこか心配で目が離せなくなるのもこぎみゅんのキャラクター性と言えるだろう。
「とはいえ、こぎみゅんは決してネガティブなわけではないんです。初期には『予算がないみゅん‥』と落ち込みながらも、地道にコツコツ活動を重ねてきました。熱量の高いファンが多いのは、売れないけど頑張っているアイドルを推す心理にも近いのかもしれません」(こぎみゅんマーケティング担当・川崎真子さん)
デビューからしばらくグッズ展開がなかったこぎみゅんが活路を見出したのが、LINE LIVEやYouTubeチャンネルといったデジタルプラットフォームだった(LINE LIVEは2022年に終了)。
「こぎみゅんは儚いけれど、とても頑張り屋さん。デジタルへのチャレンジも自ら提案して実現したものでした。サンリオ本社で社員にプレゼンする様子を、Twitterでも明かしています。ちなみに、1回目に来社したときはアポ無しだったため、空振りに終わりました(笑)」(川村さん)
そうした社会の荒波に揉まれたこぎみゅんだが、デジタルでの活動は彼女の声の魅力を知らしめることにもなった。中でも「歌ってみた」動画では、「ロマンスの神様」(広瀬香美)を原曲より高いキーで歌い、「春泥棒」(ヨルシカ)では自らハモりも担当するなど、意外な歌唱力の高さでも注目されている。「粉雪」(レミオロメン)、「ラムのラブソング」など、カバーする楽曲もバラエティーに富んでいる。
「曲は、基本的にこぎみゅん自身が歌いたいものをチョイスしています。歌にはとてもこだわりがあるようで、私たちこぎみゅんチームが『可愛く録れてるよ』とOKを出しても、『もう一回歌わせてほしいみゅん‥!』と何度も録り直すこともありますね」(川崎さん)
難易度の高い曲も見事に歌いこなすだけでなく、間奏にセリフを入れてオリジナリティを出すなど、自己プロデュース力も発揮しているこぎみゅん。何よりその儚く消え入りそうな声と、「〜みゅん」という口調は癒しに溢れている。
「ファンのコア層は10〜20代の学生や会社員。『今日はつらいことがあったけど、こぎみゅんの動画で元気をもらった』というコメントはとても多く、現代社会でもがきながら頑張ってる方々が共感してくださっているようです。また先日はラジオのゲストにお呼ばれしたのですが、顔出しなしの声だけで認識していただける、ちょっと珍しいキャラクターに育ったのかなとも実感しています」(川崎さん)
デジタルプラットフォームを通じて視聴者と密にコミュニケーションを取ることで、ファンベースを拡大してきたこぎみゅん。ライバーやVtuberにも近いその存在性は、従来のキャラクターにはなかったものだ。
「ファンとこぎみゅんの関係性はお互いがお互いを必要とし、支え合っているようなところがあるんです。うまくいかないことも多いけれど諦めないこぎみゅんの姿を見て、『私も一緒だけど頑張ろうという気持ちになった』という声はとても多く、一方通行に励ましたり、応援したりするだけではない絆を築けているように感じます」(川崎さん)
一方で、ファンの熱量は高いものの、一般知名度が伴わないという課題はライバーやVtuber界隈でもありがちなこと。こぎみゅんに関してはデジタルでの人気が先行した分、サンリオという強力なブランド色が“良くも悪くも”薄いという課題もあるようだ。
「動画で好きになり、あとからサンリオキャラクターだと知ったという方もいるようです。サイン会などでは『キャラクターグッズは好きじゃなかったけど、こぎみゅんと出会って初めて買った』と言われることも多いですね」(川村さん)
デビューからしばらくグッズ展開がなかったのも、サンリオカラーが薄かった原因の1つかもしれない。そのことについてはこぎみゅん自身も悩んでおり、自らグッズを“手作り”するといったメタ展開もあった。
「グッズを手作りする姿をTwitterで公開したところ、ファンの方々から『欲しい!』との声が集まり、ついに商品化に漕ぎ着けたこともありました。ただ手作りなだけに、仕上がりはガタガタ(笑)。それでもファンのみなさんは、『こぎみゅんが頑張って作ってくれた』ととても喜んでくださって。親御さんが子どもの工作を大切に取っておく感覚に近かったのかもしれません」(川村さん)
キャラクターグッズに取り組んできたサンリオが、いびつな商品を販売するのも異例なことだったはず。そうした「一生懸命な不完全さ」も含めて世界観となっているのが、こぎみゅんというキャラクターの特異性だ。
キャラクター大賞で上位入賞するようになった昨今はグッズ展開も増えており、今年10月にはサンリオの人気キャラクターの証である「当りくじ」を単独で務めることも決定した。
「ようやく、サンリオキャラクターとして認知していただけるスタートラインに立てたのかなと感じてます。ただ、やっぱりこぎみゅんはリアルな姿が共感されてきたキャラクター。今後はデジタルはもちろん、直接触れ合える機会もさらに増やして、サンリオキャラクターの一員として愛着を持っていただけるように成長していきたいです」(川村さん)
(文:児玉澄子)
(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
■11位なのに知名度低め…、地道な活動に熱い応援「売れないアイドルを推す心理」
総投票数4448万7850票と、過去最多を記録した『2023年サンリオキャラクター大賞』で、11位にランクインしたキャラクター・こぎみゅん。惜しくもTOP10入りは逃したものの、上位を占めるのはハローキティやマイメロディ、シナモロールといった誰もが知る人気者たち。2018年の初エントリーから28位→19位→13位→10位、そして昨年度は9位にまで上り詰めたこみぎゅんに対しては、「10年に1人の逸材」との呼び名も高い。
とはいえ、他のキャラクターに比べて一般知名度は低く、上位にランクインしながらもSNSでは「誰?」との声もチラホラ。あらためて、こぎみゅんとは何者なのか。
「こぎみゅんは小麦粉の妖精のおんなのこで、『〜みゅん』という語尾が特徴です。小麦粉だけにその存在はとても儚く、強風に吹かれたり動揺したりすると粉になって散ってしまいます。そんな“はかな可愛さ”がこぎみゅんのコンセプトです」(こぎみゅん担当デザイナー・川村雪菜さん)
Twitterで発信されるこぎみゅんの日常は、「トイレに入ったらペーパーがなかった」「イチゴを買いに行ったけどお金が足りなかった」など、うまくいかないことも多い(そのたびに粉になる)。キャラクター大賞の発表前には、不安で泣き出すこともあった。多くのキャラクターがポジティブでキラキラしていたり、あるいはマイペースでほのぼのしていたりするのに対して、どこか心配で目が離せなくなるのもこぎみゅんのキャラクター性と言えるだろう。
「とはいえ、こぎみゅんは決してネガティブなわけではないんです。初期には『予算がないみゅん‥』と落ち込みながらも、地道にコツコツ活動を重ねてきました。熱量の高いファンが多いのは、売れないけど頑張っているアイドルを推す心理にも近いのかもしれません」(こぎみゅんマーケティング担当・川崎真子さん)
「こぎみゅんは儚いけれど、とても頑張り屋さん。デジタルへのチャレンジも自ら提案して実現したものでした。サンリオ本社で社員にプレゼンする様子を、Twitterでも明かしています。ちなみに、1回目に来社したときはアポ無しだったため、空振りに終わりました(笑)」(川村さん)
そうした社会の荒波に揉まれたこぎみゅんだが、デジタルでの活動は彼女の声の魅力を知らしめることにもなった。中でも「歌ってみた」動画では、「ロマンスの神様」(広瀬香美)を原曲より高いキーで歌い、「春泥棒」(ヨルシカ)では自らハモりも担当するなど、意外な歌唱力の高さでも注目されている。「粉雪」(レミオロメン)、「ラムのラブソング」など、カバーする楽曲もバラエティーに富んでいる。
「曲は、基本的にこぎみゅん自身が歌いたいものをチョイスしています。歌にはとてもこだわりがあるようで、私たちこぎみゅんチームが『可愛く録れてるよ』とOKを出しても、『もう一回歌わせてほしいみゅん‥!』と何度も録り直すこともありますね」(川崎さん)
難易度の高い曲も見事に歌いこなすだけでなく、間奏にセリフを入れてオリジナリティを出すなど、自己プロデュース力も発揮しているこぎみゅん。何よりその儚く消え入りそうな声と、「〜みゅん」という口調は癒しに溢れている。
「ファンのコア層は10〜20代の学生や会社員。『今日はつらいことがあったけど、こぎみゅんの動画で元気をもらった』というコメントはとても多く、現代社会でもがきながら頑張ってる方々が共感してくださっているようです。また先日はラジオのゲストにお呼ばれしたのですが、顔出しなしの声だけで認識していただける、ちょっと珍しいキャラクターに育ったのかなとも実感しています」(川崎さん)
デジタルプラットフォームを通じて視聴者と密にコミュニケーションを取ることで、ファンベースを拡大してきたこぎみゅん。ライバーやVtuberにも近いその存在性は、従来のキャラクターにはなかったものだ。
「ファンとこぎみゅんの関係性はお互いがお互いを必要とし、支え合っているようなところがあるんです。うまくいかないことも多いけれど諦めないこぎみゅんの姿を見て、『私も一緒だけど頑張ろうという気持ちになった』という声はとても多く、一方通行に励ましたり、応援したりするだけではない絆を築けているように感じます」(川崎さん)
一方で、ファンの熱量は高いものの、一般知名度が伴わないという課題はライバーやVtuber界隈でもありがちなこと。こぎみゅんに関してはデジタルでの人気が先行した分、サンリオという強力なブランド色が“良くも悪くも”薄いという課題もあるようだ。
「動画で好きになり、あとからサンリオキャラクターだと知ったという方もいるようです。サイン会などでは『キャラクターグッズは好きじゃなかったけど、こぎみゅんと出会って初めて買った』と言われることも多いですね」(川村さん)
デビューからしばらくグッズ展開がなかったのも、サンリオカラーが薄かった原因の1つかもしれない。そのことについてはこぎみゅん自身も悩んでおり、自らグッズを“手作り”するといったメタ展開もあった。
「グッズを手作りする姿をTwitterで公開したところ、ファンの方々から『欲しい!』との声が集まり、ついに商品化に漕ぎ着けたこともありました。ただ手作りなだけに、仕上がりはガタガタ(笑)。それでもファンのみなさんは、『こぎみゅんが頑張って作ってくれた』ととても喜んでくださって。親御さんが子どもの工作を大切に取っておく感覚に近かったのかもしれません」(川村さん)
キャラクターグッズに取り組んできたサンリオが、いびつな商品を販売するのも異例なことだったはず。そうした「一生懸命な不完全さ」も含めて世界観となっているのが、こぎみゅんというキャラクターの特異性だ。
キャラクター大賞で上位入賞するようになった昨今はグッズ展開も増えており、今年10月にはサンリオの人気キャラクターの証である「当りくじ」を単独で務めることも決定した。
「ようやく、サンリオキャラクターとして認知していただけるスタートラインに立てたのかなと感じてます。ただ、やっぱりこぎみゅんはリアルな姿が共感されてきたキャラクター。今後はデジタルはもちろん、直接触れ合える機会もさらに増やして、サンリオキャラクターの一員として愛着を持っていただけるように成長していきたいです」(川村さん)
(文:児玉澄子)
(C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
2023/07/13