俳優の橋本愛(27)が、アメコミの雄“DCコミック”原作のヒーロー映画『ザ・フラッシュ』(6月16日、世界同時公開)の日本版で“スーパーガール”に抜てきされ、実写吹き替えに初挑戦した。近年はモデル・俳優としての活動以外にも歌唱や作詞、書評などの執筆、昨年の東京国際映画祭ではフェスティバル・アンバサダーを務め、自分の言葉でメッセージを発信するなど、さまざまな分野にチャレンジし続けている。実は、10代でデビューしてから約10年、自分の芝居に対して暗中模索が続いたという。彼女を変えたターニングポイント、そして今目指すものとは。
『告白』(2010年)で鮮烈な印象を残し、NHK 連続テレビ小説『あまちゃん』(12年)への出演で大ブレイクを果たした橋本。多数のドラマや映画に出演して、独自の存在感で視聴者の注目を集めてきた。『劇場版BLOOD-C The Last Dark』(12年)で初めて声優に挑戦。昨年10 月に公開されたアニメーション映画『僕が愛したすべての君へ』では、宮沢氷魚演じる主人公と恋仲になるヒロイン・瀧川和音の声を担当した。
“目力”の印象が強い彼女が、近年、“声力”を磨く努力を続けてきたそうだ。きっかけは、映画『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』(21年)の成島出監督から、「本当に下手くそだね」とズバッと指摘されたことにある。
この時、橋本は「やっぱり、私、間違えていたんだ」と、長いこと自分の中で引っかかっていたことがスルッと抜けたように感じたという。「そこから演技を専門的に勉強するようになりました。自分のお芝居に対して、ずっと“何か違う”と思いながらも、それしかできないでいたのですが、“だからできなかったのか”という理由がわかって、“こうすればよかったんだ”と、目からうろこが落ちるようなことばかりだったんです」。
成島監督は「声」にもこだわりが強く、「昔の日本の女優さんみたいな声を出してほしいということだったのですが、全然できなくて。ボイストレーナーさんの指導のもとで、声の出る仕組みから学んで、トレーニングをはじめました。それからは役やせりふによって、声をコントロールするようになりました」
「声」は人の印象を大きく左右する要因の一つだ。生まれつきの特質もあるが、プロの声優のようにトレーニングによって変幻自在にコントールできるものでもある。
■ボイストレーニングの成果を実感
今回、初めて実写映画の吹き替えを務めた橋本。映画『ザ・フラッシュ』は、スピードを武器に“時間”も“世界”も超える地上最速のヒーロー、フラッシュ/バリー・アレン(演:エズラ・ミラー)が、幼い頃に亡くした母と無実の罪を着せられた父を救うべく、タイムループして過去を改編してしまう。その行動によって“現在”に歪みが生じ、世界は滅亡の危機に。しかも、フラッシュが過去を変えたことでスーパーマンもワンダーウーマンもアクアマンもいない世界に変わってしまっていた。そんな絶体絶命の危機に登場するのが、橋本が吹替を担当したスーパーマンと同じクリプトン星人のスーパーガール/カーラ(演:サッシャ・カジェ)。
「カーラはどんな人なのか、サッシャ・カジェさんが演じているとはいえ、自分の中にカーラとしての根幹は作っておかなければいけないと思い、役作りとしてはいつもと同じくらい準備に時間をかけて、収録に臨みました。彼女の魅力を一言で言うならば“強さ”。超能力を持っている強さもありますが、それよりも気持ちの強さだと思いました。今作でカーラの過去は詳細に描かれませんが、自分の中で膨らませて、故郷を失くし、家族や大切な人との別れを経験した彼女の大事な人を守りたいという思いの強さ、愛情深さ、やさしさなど、カーラの魂を自分の中に入れる作業をしました。
カーラが発する声も、存在感のある低い声と、繊細さを感じさせる声と、幅を持たせたいと思いました。今までは声帯のコントロールができず、声にさまざまな変化をつけることがうまくできなかったのですが、今回、今までやってきたトレーニングの成果を実感できました。サッシャ・カジェさんの表情や声色を聞いて、それらを乗せてアウトプットするということ、そして自分自身の目の前に相手がいるという仮想空間を作らなければいけないということがわかってきたら、アフレコがどんどん楽しく感じられました」
■子どもの頃の夢「壁を通り抜ける」を疑似体験
成島監督との出会いをきっかけに演技を学び直し、「自分が理想としている表現にたどり着くにはどうしたらいいかがわかってきて、やっと、自分に自信を持てるようになりました」と話す。それが、俳優以外にも活動の場を広げる余裕を生んだ。
「今まで目的としていたことが、手段になってきました。自分のことで精いっぱいでしたが、このまま俳優の仕事を続けていく自信がついてきたら、次はお芝居を通して何がしたいのか、何ができるのかを考えられるようになったんです。
私の個人的な夢は、“あぁ、面白かった”と言ってあの世に旅立つことなんですけど(笑)、そのためには、自分がやりたいと思ったこと、興味が湧いたことは臆せず、なんでもチャレンジしたいと思うようになりました。お芝居も10年くらいやってきてようやくわかりはじめた。ほかのこともできるところから一つずつ越えていけばいいんだ、と思えるようになったんです」
■究極の目標は「世界平和」
橋本の意外な夢はそれだけではなかった。「もう一つ夢があって、それは世界平和なんです」と、思いがけない言葉が飛び出した。ここまで一つひとつの質問に対して真摯(しんし)に返答してきた橋本から伝わってきたのは、「世界平和」がヒーロー映画のインタビューへのリップサービスではない、ということ。
「結局、何がしたいんだろう、と思ったら、世界平和しかないな、と思ったんです。大げさに聞こえるかもしれないですけど、作品を通して何かを伝えることも、日常の小さな気遣いも、平和を守ることにつながるかもしれない、そう思うことが自分の原動力にもなっています。自分自身にしか注目できなかった時期がすごく長かったので、外に目を向けていくことが今、楽しいんです」
娯楽超大作である『ザ・フラッシュ』にも、世界平和につながるメッセージとやりがいを見出していた。
「母親の命を守りたいと願うフラッシュは、やさしくて、かっこいい。でも、それによって、世界は破滅の危機に陥ってしまう…。ある観点からはすごく情け深いことに見えても、ある観点から見たらすごく残酷な一面もあるということが、この映画を見て思い知らされたところです」。
実は、橋本は子どもの頃、「壁を通り抜けられる」と信じていた時期があったそう。どこかで、“トンネル効果”の話を聞いたのかもしれない。
「小学生の時ですが、壁に手を当てて念じたことがありました。本当にできる気がしていたんです。もちろんできなかったんですけど(笑)。でも、映画の中でフラッシュが壁を通り抜けるシーンがあって、壁の中ってこんな感じなんだ、と疑似体験させてもらいました。小学生の頃の夢が叶ってしまった気分です」。
橋本愛には、スーパー・ヒーローになれる素質を感じるばかりだ。
『告白』(2010年)で鮮烈な印象を残し、NHK 連続テレビ小説『あまちゃん』(12年)への出演で大ブレイクを果たした橋本。多数のドラマや映画に出演して、独自の存在感で視聴者の注目を集めてきた。『劇場版BLOOD-C The Last Dark』(12年)で初めて声優に挑戦。昨年10 月に公開されたアニメーション映画『僕が愛したすべての君へ』では、宮沢氷魚演じる主人公と恋仲になるヒロイン・瀧川和音の声を担当した。
“目力”の印象が強い彼女が、近年、“声力”を磨く努力を続けてきたそうだ。きっかけは、映画『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』(21年)の成島出監督から、「本当に下手くそだね」とズバッと指摘されたことにある。
この時、橋本は「やっぱり、私、間違えていたんだ」と、長いこと自分の中で引っかかっていたことがスルッと抜けたように感じたという。「そこから演技を専門的に勉強するようになりました。自分のお芝居に対して、ずっと“何か違う”と思いながらも、それしかできないでいたのですが、“だからできなかったのか”という理由がわかって、“こうすればよかったんだ”と、目からうろこが落ちるようなことばかりだったんです」。
成島監督は「声」にもこだわりが強く、「昔の日本の女優さんみたいな声を出してほしいということだったのですが、全然できなくて。ボイストレーナーさんの指導のもとで、声の出る仕組みから学んで、トレーニングをはじめました。それからは役やせりふによって、声をコントロールするようになりました」
「声」は人の印象を大きく左右する要因の一つだ。生まれつきの特質もあるが、プロの声優のようにトレーニングによって変幻自在にコントールできるものでもある。
■ボイストレーニングの成果を実感
今回、初めて実写映画の吹き替えを務めた橋本。映画『ザ・フラッシュ』は、スピードを武器に“時間”も“世界”も超える地上最速のヒーロー、フラッシュ/バリー・アレン(演:エズラ・ミラー)が、幼い頃に亡くした母と無実の罪を着せられた父を救うべく、タイムループして過去を改編してしまう。その行動によって“現在”に歪みが生じ、世界は滅亡の危機に。しかも、フラッシュが過去を変えたことでスーパーマンもワンダーウーマンもアクアマンもいない世界に変わってしまっていた。そんな絶体絶命の危機に登場するのが、橋本が吹替を担当したスーパーマンと同じクリプトン星人のスーパーガール/カーラ(演:サッシャ・カジェ)。
「カーラはどんな人なのか、サッシャ・カジェさんが演じているとはいえ、自分の中にカーラとしての根幹は作っておかなければいけないと思い、役作りとしてはいつもと同じくらい準備に時間をかけて、収録に臨みました。彼女の魅力を一言で言うならば“強さ”。超能力を持っている強さもありますが、それよりも気持ちの強さだと思いました。今作でカーラの過去は詳細に描かれませんが、自分の中で膨らませて、故郷を失くし、家族や大切な人との別れを経験した彼女の大事な人を守りたいという思いの強さ、愛情深さ、やさしさなど、カーラの魂を自分の中に入れる作業をしました。
カーラが発する声も、存在感のある低い声と、繊細さを感じさせる声と、幅を持たせたいと思いました。今までは声帯のコントロールができず、声にさまざまな変化をつけることがうまくできなかったのですが、今回、今までやってきたトレーニングの成果を実感できました。サッシャ・カジェさんの表情や声色を聞いて、それらを乗せてアウトプットするということ、そして自分自身の目の前に相手がいるという仮想空間を作らなければいけないということがわかってきたら、アフレコがどんどん楽しく感じられました」
■子どもの頃の夢「壁を通り抜ける」を疑似体験
成島監督との出会いをきっかけに演技を学び直し、「自分が理想としている表現にたどり着くにはどうしたらいいかがわかってきて、やっと、自分に自信を持てるようになりました」と話す。それが、俳優以外にも活動の場を広げる余裕を生んだ。
「今まで目的としていたことが、手段になってきました。自分のことで精いっぱいでしたが、このまま俳優の仕事を続けていく自信がついてきたら、次はお芝居を通して何がしたいのか、何ができるのかを考えられるようになったんです。
私の個人的な夢は、“あぁ、面白かった”と言ってあの世に旅立つことなんですけど(笑)、そのためには、自分がやりたいと思ったこと、興味が湧いたことは臆せず、なんでもチャレンジしたいと思うようになりました。お芝居も10年くらいやってきてようやくわかりはじめた。ほかのこともできるところから一つずつ越えていけばいいんだ、と思えるようになったんです」
■究極の目標は「世界平和」
橋本の意外な夢はそれだけではなかった。「もう一つ夢があって、それは世界平和なんです」と、思いがけない言葉が飛び出した。ここまで一つひとつの質問に対して真摯(しんし)に返答してきた橋本から伝わってきたのは、「世界平和」がヒーロー映画のインタビューへのリップサービスではない、ということ。
「結局、何がしたいんだろう、と思ったら、世界平和しかないな、と思ったんです。大げさに聞こえるかもしれないですけど、作品を通して何かを伝えることも、日常の小さな気遣いも、平和を守ることにつながるかもしれない、そう思うことが自分の原動力にもなっています。自分自身にしか注目できなかった時期がすごく長かったので、外に目を向けていくことが今、楽しいんです」
娯楽超大作である『ザ・フラッシュ』にも、世界平和につながるメッセージとやりがいを見出していた。
「母親の命を守りたいと願うフラッシュは、やさしくて、かっこいい。でも、それによって、世界は破滅の危機に陥ってしまう…。ある観点からはすごく情け深いことに見えても、ある観点から見たらすごく残酷な一面もあるということが、この映画を見て思い知らされたところです」。
実は、橋本は子どもの頃、「壁を通り抜けられる」と信じていた時期があったそう。どこかで、“トンネル効果”の話を聞いたのかもしれない。
「小学生の時ですが、壁に手を当てて念じたことがありました。本当にできる気がしていたんです。もちろんできなかったんですけど(笑)。でも、映画の中でフラッシュが壁を通り抜けるシーンがあって、壁の中ってこんな感じなんだ、と疑似体験させてもらいました。小学生の頃の夢が叶ってしまった気分です」。
橋本愛には、スーパー・ヒーローになれる素質を感じるばかりだ。
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2023/06/23