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松岡茉優「女優になりたいと思った」故・樹木希林さんや安藤サクラとの共演で起きた“変革”

 俳優の松岡茉優と映画監督の是枝裕和が10月31日、都内で開催中の「第35回東京国際映画祭」公式プログラム『TIFFスペシャルトークセッション ケリング「ウーマン・イン・モーション」』に登壇。映画界が直面する課題について語り合った。

「第35回東京国際映画祭」公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」に登壇した是枝裕和監督、松岡茉優 (C)ORICON NewS inc.

「第35回東京国際映画祭」公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」に登壇した是枝裕和監督、松岡茉優 (C)ORICON NewS inc.

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 2018年開催の「第71回カンヌ国際映画祭」でパルム・ドールを受賞した映画『万引き家族』に続いて、来年(23年)1月12日配信予定のNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』でも一緒に仕事をした二人。出会いは、「ある作品のオーディション。その時は役に合っていないと思ったから選ばなかったんだけど、トーク力が群を抜いていた。そこから注目するようになった。落としたに(笑)」と是枝監督。『万引き家族』の時は「役に合っていないと思ったけど、呼んでおこうと思った」という。

 「松岡さんは、樹木希林さんや安藤サクラさんに連なる系譜だと思っているから、松岡さんが20代のうちに会わせたかった。たぶん、松岡さんにとって、樹木さん、サクラさんと共演することは財産になる。演じるということに対してきっと変革するだろうと思って、参加してもらった」と是枝監督。

 松岡は「そう言ってもらって、私はどれだけのことを受け止めることができたのだろうかと考えた時に、入ったものは時を超えて生かせるから、いまわかったことも大事だし、もっと大人になっていく過程で開いていくものもあるだろうから、もらったものを大事にしていきます」と話していた。

松岡茉優 (C)ORICON NewS inc.

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 また、松岡は『万引き家族』で実現した故・樹木希林さんや安藤との共演を通じて、「女優さんになりたい」と思ったという。「女優さんって清楚、清潔感がある、色っぽいといった憧れ的な言葉だと思っていた。でも私にはそういうイメージが当てはまらない。だから自分で名乗る時は、『俳優』と言ってきた。だけど、樹木希林さん、安藤サクラさんとお芝居をして、私、女優さんになりたいと思った。二人が女の人として生きてきた肉体がそこにあったから。私の中でずっとあった清楚でなければいけない、色っぽくなければいけない=女優さんというイメージがなくなった」と、まさに“自己変革”が起きていたことも明かしていた。

 「ウーマン・イン・モーション」は、2015年よりカンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーを務める、グローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」(傘下に、グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガなど)による、同映画祭の公式プログラムの一つ。映画業界や芸術全般における女性の貢献に光を当て、男女平等の実現に向けた取り組みを推進するための意見を交わす機会を提供している。これにならい、東京国際映画祭でも公式プログラムとして、19年以来、2回目のトークイベントの開催となった。

 パルム・ドールを受賞後、フランス、韓国と2作品連続で海外の制作現場を経験した是枝監督は、日本との大きな相違点として、「フランスは原則8時間労働、韓国は週52時間という条件が決まっており、2国とも働き方の環境が整えられていてそこが大きな違い」と挙げ、「自分の撮影現場の環境をどのように変えていくか、というのが課題になった一年だった」と、語った。

是枝裕和監督 (C)ORICON NewS inc.

是枝裕和監督 (C)ORICON NewS inc.

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 松岡が「日本では今までも2週間や10日ほどで映画を撮影することもあり、短期間で集中できる環境があることは必ずしも悪いことではないのでは?」と疑問を投げる場面も。

 これに是枝監督は「文化祭を成し遂げたときのような達成感や仕事以上のつながりが生まれることもある」と認めつつ、「その現場に入ることで、何かを犠牲にしていることもあり、そのことは既に看過できない状況。韓国では適度に休みながら撮影したが、それでも一体感は生まれた。次の世代が働く場所として『そんな大変な職場で働くなんて』と言われない環境を作る責任がある年齢になったと思う」と監督自身の経験をもとに意見を述べた。

 松岡もすかさず「年齢を問わず私にも責任を背負わせてください」とコメント。「若い世代がこのような発言をすると、生意気だとか硬いとか言われてしまう。私たちのような同世代の人が発言しても、びっくりされないような世の中になってほしい。まだ意見を言わないほうがベターだと思われる」と語った。

「第35回東京国際映画祭」公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」に登壇した松岡茉優 (C)ORICON NewS inc.

「第35回東京国際映画祭」公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」に登壇した松岡茉優 (C)ORICON NewS inc.

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 今の日本映画界におけるパワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどの問題に関して意見を求められると、是枝監督は「声をあげやすいようにする、声をあげた人が不利益を被らないようにするサポートがもっと必要」と主張し、「自分の現場でもリスペクトトレーニングを実施したり、(日本には二人しかいない)インティマシー・コーディネーターに入ってもらい、脚本のなかで感情に負荷のかかるシーンをチェックしてもらう作業からお願いした。どんな目が入ることで、どう現場に作用するか、良い現場になるように検証している」と語った。

 松岡も出演した『万引き家族』の脚本についても当時の撮影において何か改善点があったのかなど、インティマシー・コーディネーターに相談したと明かし、「話を聞くだけでも、女優さんが負荷を感じる点など自分では気づけないことを提案してもらえるので、相談がしやすい」とその役職の重要性に言及。加えて松岡は「心を使う仕事だから気持ちに浮き沈みがあるのは当たり前だと思っていたが、その当たり前も変わっていけるのならばとても喜ばしいこと」と俳優という立場からインティマシー・コーディネーターの今後の活躍に希望を示した。

(左から)立田敦子(映画評論家)、是枝裕和監督、松岡茉優

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 これからの日本映画界については、是枝監督は「働き方改革は進んでいくが、進んでいくが故に作られなくなる映画が出てくる」と危機感を述べ、「このままの状態では、日本映画界は10年続かないだろうと危機感を持った監督が集まり、『action4cinema』を立ち上げた。若手の人材を集めるためにどうするべきか、未来図、危機感を共有して、まずは意識を高めていくという活動をこれからも続けます」と今後の展望を語っていた。

 松岡は「特に男性が多い役職の女性スタッフは、子どもを持ちたい時など育休制度が備わっておらず、仕事か家庭のどちらかしか選べない人も多い。男女問わず休めて、子供を預けたり育てながらできる現場づくりをしたいと思います」と述べた。

 また、これからの映画界で女性がより活躍するためには「話し合いができる、お互いに耳を傾けられる映画界であってほしい」とコメント。未来を担う俳優として臆することなく自身の意見を主張した松岡に対し、是枝監督は「若い役者が自分の考えを違和感も含めて話せるようになってきたのは、とてもすばらしいこと。そのことを応援していただきたいし、そのためにはぜひ映画を観に来てほしい」と、呼びかけていた。
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